残像と幽霊――「mono」5話レビュー&感想

©あfろ芳文社アニプレックス・ソワネ

忘れがたき「mono」。第5話はちょっとファンタジックなお話だ。幽霊とは一種の残像である。

 

 

mono 第5話「~生ハム山梨物語~/心霊スポット憑依事件」

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1.前回までの残像

前回買った甲州ワインに合う生ハムを求める春乃に連れられ、八ヶ岳へ足を伸ばすさつきたち。避暑地として有名な八ヶ岳には他にも見どころいっぱいで……

 

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つまみつままれ「mono」。第5話は前回を強く想起させる回だ。さつきたち5人が山梨の名所へ行く展開が酷似しているし、発端も前回のワインに合う生ハムを探すためと来ている。とはいえ、これをワンパターンとするのは早計だろう。今回は過去の想起に、「残像」に趣向を凝らした回なのだ。

 

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この第5話では清里駅周辺にも寄り道しているが、そこで登場するのはなんと廃墟である。バブル崩壊の影響で閉鎖した建物が数多く残されており、個性的な建物やモニュメントなどは在りし日を想起させずにいられない――つまり「残像」だ。

 

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フィクションでは擬似的な分身のイメージも強いが、残像は私たちの周囲にあふれている。さつきたちは秋山家の飼い猫・たいしょうと清里でも遭遇するし、前回の大食いの影響があるから美味しそうなカレーがあっても食欲を抑えないわけにはいかない。挙げ句、ハムをたくさん買い込む春乃への冗談半分の「秋山ハム乃」呼ばわりは繰り返されてEDクレジットにまで残っている有り様……網膜の中で結ばれるだけが残像ではないのだ。

 

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人間の記憶はいい加減だからすぐに忘却されるし、そもそも場所や時間が違えば過去に何が起きたか認識するのも難しい。けれどそれでも、廃墟やレシートの山といった「残像」を見れば過去を知ったり立ち返ることはできる。過去と私たちを繋ぐものはこれ全て「残像」だと言えるだろう。

 

2.残像と幽霊

残像は私たちと過去を繋ぐ。後半、この事実はカメラと密接に結びついて提示される。いわゆる心霊写真……そう、幽霊だ。

 

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心霊写真が怖い理由の一つには、過去が書き換えられる恐怖がある。春乃は元同級生の華子の頼みで自室に設置していたアクションカムでぐうたらした生活を見られて焦るが、当然ながら映っているのを忘れていなければ醜態はさらさなかったはずだ。「カメラに映らない生活」をしていた春乃の過去を書き換えてしまうアクションカムの映像は、それ自体が一種の心霊写真のようなものだ。

 

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また、今回の話ではメッセージアプリによるやりとりがあるが、この種のアプリを使う時私たちは直接には相手と話していない。相手の送ってきた文字列を、「残像」を見ているだけなのだが、それでも私たちはこのやりとりに通話にも似た感覚を覚えている。してみるなら、メッセージアプリに浮かぶ文字列とは相手の幽霊のようなものなのかもしれない。

 

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幽霊、という存在への恐怖は私たちの中から急速に薄れている。精度が上がった写真に誤認の余地は少ないし、今回登場した幽霊も人に大きなたたりをもたらすような凶悪なものではない。けれど、そんな現代でもやはり幽霊は存在する。新たに発明されるデバイスも過去と無縁ではないし、そうでなくとも私たちの周囲にはありとあらゆる形で残像があふれているのだから。

 

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幽霊とは一種の残像である。そして、残像は時間を超越するものなのだ。

 

感想

以上、monoのアニメ5話レビューでした。前回もやったような話だなー、と思っていたら後半が思わぬ展開でびっくり。残像が鍵であることは迷わずレビューを書けました。ハムで2万5千円て食べきるのも大変では……メッセージアプリでの画面が随分ストレートだなと思ったのですが、理屈づけが見つかったのも面白かったです。

 

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今回は華子のセリフが良い意味でわざとらしいイントネーションで面白かったです。「じゃん」じゃなくて「ぢゃん」て音にするならこんな感じなんですかね。

 

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