それぞれの特命事項――「機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)」6話レビュー&感想

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「機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)」。第6話ではエグザべに特命が申し渡される。だが、特命事項を抱えるのは彼だけではない。

 

 

「機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス) 第6話「キシリア暗殺計画」

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1.理不尽で暴力的な「特命」

自分に代わりジークアクスに乗って敵を倒したニャアンに怒鳴り散らしてしまうマチュ。一方、アンキーはシャリア・ブルの接触を受け……

 

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錯綜の「機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)」。第6話はいくつもの陣営、幾人もの人々の思惑が入り乱れる回だ。今回は複雑な人間模様をエグザべが受ける「特命」を手がかりに読んでみたいと思う。

 

特命。読んで字のごとく、特別な命令は通常の命令に優先するものだ。衝突すれば後者は退けられ、時に違反することさえ容認される。ジオンのエグザべ少尉はシャリア・ブル監視の特命を受けていたが、上司にあたる人間の監視など通常ならありえない。暴力的な優先権にこそ特命の正体がある、と言ってもいいだろう。

 

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人は望むもの全てを手に入れられないから優先順位をつけるが、特命はそこに割り込み余のものの切り捨てすら正当化する。ジオンや人体実験に手を染めた連邦のような軍事組織に限らず、それは酷薄なものだ。例えばカネバン有限公司のアンキーは部下に赤いガンダムの密告を指示するが、部下(ナブ)にしてみれば仲間を売るなど「特命」以外の何物でもあるまい。理不尽だから特命なのだ。そして、人はそんな特命に反発せずにおられない。

 

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マチュは塾をサボり進路希望のアンケートに回答せず、やりたいことを聞かれても「地球の海で泳ぎたい」と答えとも言えない答えしか返さなかった。勉強が大事、進路を考えなければならないのは当たり前だが、彼女はそこに押し付けがましさもまた感じている。マチュにとって「特命」のようなもので、だから反発せずにいられないのだろう。だが、それでも「特命」はいつも彼女の敵とは限らない。

 

2.それぞれの特命事項

理不尽で暴力的な「特命」。しかしそれはマチュを救いもする。いや、前進させるといったほうが正しいかもしれない。

 

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今回のマチュには大きな悩みがあった。心惹かれるようになった赤いガンダムパイロット・シュウジや彼との「キラキラ」を奪われてしまう嫉妬から、友人であるニャアンに当たり散らすような真似をしてしまったことだ。酷いことをしてしまったのは自分でも分かっているが、どう接したらいいのかマチュは心の整理がつかない。「優先順位」が決められないのである。だが、もう1つの問題が浮上したことが彼女を変えた。そう、アンキーの裏切りだ。

 

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シュウジを逃がすだけなら事情を話せばいい。だが、そんなことをすれば二度と彼に会えなくなってしまう。おまけに彼は赤いガンダムに執着しているから隠れ家も簡単には見つけられない。八方塞がりに思える状況で何かを決心したマチュが声をかけたのはニャアンだった。必死なのだからなんでもするだろうが、見方を変えるならこれは気まずくなっていた友人に声をかける機会でもあったのだ。

 

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赤いガンダムを手放さずシュウジが逃げられるようにし、なおかつそれを永遠の別れにしない……これはマチュにとって「特命」である。そのためならニャアンにどう接すればいいか分からないなどと泣き言は言っていられないし、おそらく彼女はこれまでにない危険な橋を渡るつもりでいるのだろう。「たった一つの願い以外は何もいらない」という4話シュウジの言葉は今はマチュと共にあり、すなわちこの時「特命」は自分が自分に下す究極の望みへと変化している。それはおそらく、殺害すら視野に入れた特命を受けながらエグザベがシャリア・ブルに抱いてしまう迷いと根を同じくするものだ。強いられない「特命」は何よりも自分自身の内にある。

 

特命は理不尽で暴力的だが、だからこそ人を救う時がある。それぞれの特命事項を自ら見つけた時、人はほんの少しだけ自由になれるのだ。

 

感想

以上、ジークアクスの6話レビューでした。特命を鍵に書けそうというのはすんなり浮かんだのですが、4話を踏まえて考えられるのは書いている途中で気が付きました。こんなことになってなかったら、マチュたち3人の関係はそのまま終わってしまっていたのかもしれませんね。進んでも地獄という感もありますが。

 

シムス大尉やバスク・オム、ゲーツ・キャパにムラサメ研など今回も新たに往年のファンへのサービスが満載。サイコガンダムはこれ商品化されるんでしょうかね。さてさて次回は。

 

 

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