引き換えの納得――「機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)」4話レビュー&感想

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無常なる「機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)」。第4話では魔女との戦争が繰り広げられる。納得には代償がいる。

 

 

機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス) 第4話「魔女の戦争」

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1.シイコとシュウジ

クラバで勝ちを重ねるマチュたちポメラニアンズだが、赤いガンダムパイロットであるシュウジが何者なのか謎は深まるばかり。そんな折、カネバン有限公司を1人の女性が訪ねてくる。彼女の名はシイコ・スガイ。先の戦争で100機以上を撃墜したユニカム(エースパイロット)だった彼女の目的とは……?

 

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彼岸の「機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)」。第4話は主人公のマチュよりも相棒であるシュウジに焦点を当てた回だ。極限の勝負から見えてくるのは、この謎の少年の特異性である。

 

今回はシイコ・スガイという女性がシュウジたちと戦うが、2人は当初から対照的だ。元ユニカム(エースパイロット)のシイコは今は母親として社会に溶け込んでいる一方、シュウジは常に空腹でマチュたち以外の人間と繋がりがあるのかも怪しい。社会性の有無がこれほど分かれている取り合わせもそうはあるまい。しかし、更に対照的なのは2人の心のありようだ。

 

シイコは社会的には十分満たされているが、内心には戦争で最初のMAVを奪った赤いガンダムへの執着が染み付いていた。わざわざ違法なクラバにまで出向く彼女の心は、渇いている。

一方のシュウジはと言えば、何を考えているのかサッパリ分からないが基本的に穏やかで、内心は海を泳ぐ魚のように自由だ。どちらが幸せそうかと聞かれれば、おそらく多くの人はシュウジの方を指すだろう。

 

所属クランも経歴も明らかなシイコと、弱小クランで仲間にすら顔を知られていないシュウジ。2人は立場から性格に至るまで対照的で、そのギャップがシュウジの特異性を際立てている。だが、本当に2人はただ正反対なのだろうか?

 

 

2.引き換えの納得

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多くの要素が対照的な2人はクラバで激突し、熾烈な戦いを繰り広げる。しかし、その中で明らかになってくるのはむしろシイコの特異性だ。

 

シイコが赤いガンダムと戦う理由は当初は敵討ちかと思われていたが、実際の理由はもう少し複雑だった。彼女にとって赤いガンダムとは「ニュータイプ」=望んだもの全てを手にする選ばれた人間の証であり、MAVの喪失をはじめとした理不尽な人生を受け入れるためにはあってはならない存在だったのだ。マチュに動機を問われた際にシイコは「何かを手に入れるために何かを諦めなければならないのは理不尽」と答えていたが、それはどん欲さではなく世の無常さを自分に言い聞かせるためだったのだろう。

 

シイコはあらゆる形で「ガンダム=ニュータイプ」の特異性を否定しようとする。乗機はガンダムのマスプロモデルであるゲルググ(!)、スティグマ攻撃なる超人的機動はフックを利用したもの……しかし反応速度に追随するためのマグネット・コーティングが正史ではガンダムに施された技術であったように、彼女にはどうしても「ニュータイプ」の影がつきまとう。望んだもの全てを得られない理不尽を受け入れようとしたにも関わらず、なぜ?

 

否定しながらもどうしようもなく「ニュータイプ」。シイコの矛盾をもっとも的確に表しているのは、その一心不乱な戦いぶりだろう。

彼女はガンダムを倒すためにクラバに参加したが、その戦い方は独断を通り越して身勝手ですらあった。定石の索敵は無視、マチュを落とそうと思えばいつでもできるのに放置し、MAVからの制止にも応じない……シイコは他の全てを顧みていないだけで、「何かを手に入れるために何かを諦め」などしていない。つまり「ニュータイプ」を否定できてなどいない。そんな彼女のあり方は、末期に見た「キラキラ」の中で強く肯定されることとなる。

 

裏をかいた赤いガンダムビームサーベルで蒸発させられる刹那、シイコが見た「キラキラ」。その中でシュウジは、彼女の憤りへの一つの答えを口にする。

 

シュウジ「僕の願いは1つだけ。それ以外は何もいらないんだ」

 

ニュータイプ」なら望んだ全てを手に入れられるのか? シュウジはこの疑問に真っ向から歯向かう形で答えている。望んだ全てを手にするのではなく、他の全てを顧みないただ一つの望みを見つけられるのが「ニュータイプ」だというのだ。なら、シイコは確かに「ニュータイプ」だろう。彼女がたった一つの答えにたどり着くには、他の全てを顧みてはいけなかったからだ。

人並みの幸せや正気――そして命までも失ったその時、シイコは自分が「ニュータイプ」だとようやく受け入れることができた。死と引き換えに納得を、望んだ全てを手に入れたのだ。最後の最後に子供の顔を思い浮かべたのは、自分への納得が愛情への納得に変わった瞬間だったのだろうか。

 

シュウジという少年は奇妙である。彼はたった一つの願いのためなら全てを顧みない。己の人間性も、相手の命も、おそらく自分の命もシュウジにとっては「それ以外」だ。マチュはこの第4話、そんな彼にとうてい追いつけない自分を痛感した。

 

納得には代償がいる。けれど、突き進む人間はそれを代償だとすら思わないのだ。

 

 

感想

以上、ジークアクスの4話レビューでした。またなんとも難しい内容で、シイコの戦い方がガンダムを否定しているその先をどう捉えるべきか悩みました。

次回はニャアンにスポットが当たるようですが、彼女にはどんな役割があるんでしょうね。

 

 

 

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