乱理もまた理――「ゴッド・オブ・ハイスクール」12話レビュー&感想

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©2020 Crunchy Onigiri, LLC
大会の終了が告げられ、試合の枠を超えた戦いが繰り広げられる「ゴッド・オブ・ハイスクール」12話。孫を殺されたジョン・ジェサンはその無念を生命に代えても晴らすと誓う。父祖の無念を子孫が晴らすのとは逆であるように、ノックスの首魁サン・マンダクの言葉の中で過去と現在と未来そして終わりと始まりが並列になるように、この12話ではそうした順序の理は乱されていて――しかしそこにもまた、乱した者なりの理がある。
 
 

ゴッド・オブ・ハイスクール 12話「FOX/GOD」 

 

無法者の道理

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本編で最初に理を壊されるのは、壊されていたのは意外にも、他者の理を破壊する乱暴の限りを尽くすジェガル・テクだ。愛を受けるべき保護者から売り飛ばされ、代わりに教えられたのは勝者と敗者に人を二分する理だった。しかもその理すら彼の中では乱れており、勝者は手段を選ばないという理屈はむしろ自身を敗者としないための道具と化している。
 
しかし重要なのは、そうした乱れた理も彼の中では通すべきまっすぐな筋として成立していることだろう。そもそも得意な能力が存在する作品はその時点で物理法則の理を乱している一方、作品の中ではそれが異常とならないよう独自の理を持ち合わせているもの。乱れた理もまた理であるのは変わりなく、そこにはやはり「すべきこと」「してはならないこと」が存在しているのだ。
(逆に見れば、ジェガル・テクがイルピョも結局「獣」だと言うのは、自分と違って純真に見えるお前もまた理を乱す外道じゃないかという昏い喜びなのだろう)
 
 

どんなに自分と違うように見えても

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パク・ムジンとの盟約を破棄して核ミサイルを撃つ米国大統領も、自分の中にあった鍵をモリに託してでもジェガル・テクに渡すまいとするイルピョも、世界の危機が借金返済のチャンスでしかない審判員Qも、ソウル中の人間を転移させ核ミサイルを鉄槌に変える文字通りの"魔法"を使うジョン・ジェサンも、誰もが理を乱しながらも己の理を通すために戦っている。
 
誰もが理を越えているようでいて、実際は誰も理の域を出ていない。だから、神を超えると息巻き鍵を手にしたジェガル・テクの新たな姿もむしろ神や天使の俗な描き方を逸脱することがない。ならばきっと、それもまた手の届かぬ相手ではないだろう。相手が何者だろうが戦いがどんな形であろうが、モリは今まで通り「好きにやればいい」のだ。
 
 

感想

というわけでGOHの12話レビューでした。1テーマに集約するとしたらこんな感じかしらん。前回の「聖域」消滅に伴い爽やかさも消滅の危機を迎えており、なかなかしんどい。デイの借力が治癒の力を込めた水――生死の理を乱すものであり、そこにスンテを救えなかった過去が影響しているであろうことなんかは泣けるけども。
 

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そのあたりで言うと今週もスンアのかわいさが素晴らしくてですね。片足失ってるからその心配するのが普通なのに、口を開けばイルピョの心配ばかりしてるわけですよ。自分の心配をすべきという理を乱して、気絶する直前ですらイルピョへの思いという理を通してるわけですよ。どんだけイルピョが好きなのかこの娘は。
 
さて、アクションというジャンルで好き放題なくらいに暴れてきた本作も次でいよいよ最終回。笑顔で見終えられることを期待して一週間待ちます。