孤独から救い合う物語――「ゴッド・オブ・ハイスクール」13話レビュー&感想

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©2020 Crunchy Onigiri, LLC

最後の戦い、そして続く未来が描かれる「ゴッド・オブ・ハイスクール」13話。鍵を吸収したジェガルは神か天使と見紛う姿と圧倒的な強さを誇る。それは彼が特別な存在となった証だが――特別とは、見ようによっては孤独なものでもある。

 

 

ゴッド・オブ・ハイスクール 13話(最終回)「GOD/GOD」 

 

ジン・モリの戦いの本質

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思い返せばジン・モリの戦いは、誰かを孤独にしないものだった。暴行に屈しないコ・カンドの孤軍奮闘を救い、親友のため友を捨てたデイを救い、鍵の力に目覚めたイルピョを破って比肩し……強い奴と戦って勝って友達になるとは、その相手を特別な存在にせず孤独から救うものだった。
だからこの世でたった1人の存在になったかのようなジェガル・テクが相手でも、モリは臆せず特別扱いせずシンプルな怒りで戦う。その究極が斉天大聖としての目覚めであり、借力ではなく神そのものの力はジェガルすら圧倒する。圧倒されるならジェガルは既に特別では――孤独ではない。
 
 

ジン・モリ自身をも救う「強さ」

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しかし誰かを敗北させることで孤独から救うなら、逆に言えば誰かに勝利する度モリ自身は孤独の危機に瀕しているとも言える。それはモリがテジンの行方の心配を自分からは言い出せなかったことからも明らかだし、全国大会でのデイの行動はもっぱらモリを孤独にしないことに注力されていた。
だからこの最後の戦いも、1人モリだけが相手を打ち破ることでは終わらない。デイもミラもイルピョも、単純な強さではもはやモリには敵わないけれど――モリに「負けない」くらい「バカ」になることはできる。そしてそのバカさとはモリが好きな強さ、腕っぷしではない心の強さに他ならない。そういう形でなら、彼らはモリを強さの特別さ孤独さから解放できる。
 

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「行こうぜ、バカども」と肩を組んで4人で歩く姿はまさしく、彼らが互いに互いを孤独から救った象徴なのだ。
 
神を殺す力も、これからも続く戦いでも、本作の戦いは登場する者達を孤独にしない物語として続いていくだろう。そしてどれだけ多くの孤独と特別を救っても、これからはモリもまた孤独になることはない。"心強い"友がいる限りきっと、彼はどこまでも強くなっていけるはずだ。
 
 

感想

というわけでGOHの最終13話レビューでした。やー、素晴らしかった。
 

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「良かった! スンア、ほんとに良かった……!」
「……うん」
 
うっかりしていると聞き逃すほど小さな、消え入りそうな「……うん」に悶絶。スンアの恋する乙女ぶりは他を寄せ付けぬGOH優勝級のかわいさでした。あやねる好きにこの一言のために視聴を勧めたいレベル。
 
それはそれとして。戦いは1クールとは思えぬほどスケールアップしていきながらも、友情そして孤独からの救済の物語であることが一貫していて気持ちよく見ることができました。特に、デイやミラをはじめ皆を救ってきたモリ自身も救われる対象なのが本当に爽やかで。僕の好きな"少年漫画"が確かにここにあった。
面白かったです。スタッフの皆様、快作をありがとうございました。原作も追いかけていきますよー。