無とは広がりなり――「ラブライブ!サンシャイン!!」2期2話レビュー&感想

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©2017 プロジェクトラブライブ!サンシャイン!!
統廃合の決定を覆したい千歌達に、入学希望者100人のハードルが課せられる「ラブライブ!サンシャイン!!」2期2話。数字が立ちふさがるのは1期同様だが、0からの脱出と100への到達はもちろん別物。この2話で描かれるのは、その新たな目的地へ向かうための試みだ。
 
 

ラブライブ!サンシャイン!! 2期 02話「雨の音」 

 

0から1のその先へ

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©2017 プロジェクトラブライブ!サンシャイン!!
これまで作詞は千歌、作曲は梨子、服飾は曜の体制でやってきたAqoursだが、説明会とラブライブ予選の2つまでは手が回らない。学校存続とラブライブがそれぞれ"1"たる意味を持つからこそ、千歌達も1期でたどり着いた"皆で1"のままでは対応できないのだ。彼女達が増やさなければならないのは、入学希望者だけではない。そのために他の6人も作詞作曲服飾をする――1から増やそうとするのは、理に適った対応だろう。
 
 

1になったから生まれる隙間

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©2017 プロジェクトラブライブ!サンシャイン!!
しかしそれは1期のような、1人1人の0.1を合わせて1を目指す方法では成立しない。1期の最後で"10"に至ったAqoursは実際のところ、既に各々が"1"の力を持っている。
例えるなら1期はパズルのピースだった彼女達はいまや、1人1人が欠けることなき円い(まるい)コインになっているのだ。パズルのピースは組み合わせれば隙間なくハマるが、コインは敷き詰めても必ず隙間が生まれてしまう。1年生と3年生が方向性を巡って対立するのも、相手と自分を確かな"1"と認識・主張したからこそ生まれた隙間なのだと言える。
 
 

1をただ積み重ねても1

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©2017 プロジェクトラブライブ!サンシャイン!!
隙間の解決策で最初に浮かぶのは、コインを縦に積み重ねる方法だろう。同じ形を重ねるだけなら隙間は生まれず、いさかいも生まれない。
ただし重ねたコインは真上から見た時、何枚だろうが1枚だ。せっかく6人いても"1"だ。それは1つのことだけに集中して周りが見えなくなるのと同じで、強いが脆い。鞠莉の家の菓子だけに夢中で曲作りを忘れていた時の6人は、まさしく重ねたコインの罠に落ちてしまっていたのである。
 
 

隙間から広がりへ、そして広げた1と1の間に収まるもの

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重ねれば危うく、敷き詰めれば隙間が生まれる。どうすれば1以上に増やせるか6人は悩んでしまうわけだが――そもそも、隙間があってはいけないのだろうか? 人はどれほど努力しても他者そのものにはなれず、他者との間には必ず隙間がある。しかし逆に言えば、隙間あればこそ私には手の届かぬ場所へ他者は手を伸ばせ、他者の手の届かぬ場所へ私は手を伸ばせる。
「隙間」というのは見方を変えれば「広がり」であり、違いをはっきりさせればさせるほど広がりは大きくなっていく。ならば違いは大きい方が、広がっている方が手は遠くまで伸ばせるようになる。
 

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©2017 プロジェクトラブライブ!サンシャイン!!
象徴的なのは、雨宿りで訪れた寺で6枚のコインたる彼女達が自分達を器の雨音のように認識する場面だろう。雨漏りを受け止める器は、積み重ねたままではけして全ての雨粒を、"Aqours"を受け止められない。大きな器も1つで全てを受け止めるのは難しい。けれど小さな器だって、必要な場所へ広げて置かれればたくさんの雨粒を受け止められる。そしてその時、器と器の間には何もないのではなく「無」がある。そう、「無」の中には、器の枚数よりずっと大きな数を収納できる空間が――つまり「広がり」が存在している。
 
こうしてAqoursの曲作りの幅は"1"から大きく広がり始めた。そして、その広がりの中には何十枚もの自分と異なる器(=1)を敷き詰められる可能性、つまり"100"にたどりつける可能性が秘められているのだ。
 
 

感想

というわけでサンシャイン2期2話のレビューでした。今回はものすごくざっくり言えば「人と分かり合えなくて悲しくなるかも知れないけど、それは喜ばしいことでもあって違いの中にこそ意味はあるんだよ」なわけですが、それを端的にも噛み締められるようにも作ってある。なんだこの脚本、もはや平伏するしか……
 

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真上から見ると云々書きましたが、その「見る角度が重要」という意味ではこのお風呂シーンは示唆的。
 
キャラクター個々で言えば、1期で物足りなかった元々の繋がり以上の関係性に踏み出す一歩が描かれた回でもありました。特に果南と鞠莉はお互いが大好き過ぎてそれを片付けないとほぼ外部に向かえず、かつその解決までに1期がほとんど終わってたしなあ……
 
またラストでは6人の曲作りの問題の解決が終わったのと連動するように、千歌も言いたいことや自分に問いかけていることが見えたと語りますが、この2期のテーマも少し見えてきたように感じました。1期では隙間を「繋いで」いた"Aqours"が、今度は皆を「広げる」ために降るこの図式、とても好き(最初の雨漏りは、背中をくっつけたダイヤとルビィの間に落ちる!)。
2期だから描ける、千歌達が見せてくれる光景が楽しみです。