輝きは空箱の底に――「ラブライブ!サンシャイン!!」2期13話レビュー&感想

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©2017 プロジェクトラブライブ!サンシャイン!!
ラブライブ決勝も終わり、遂にフィナーレを迎える「ラブライブ!サンシャイン!!」2期。最終回13話の半分は卒業式兼閉校式が占め、そこでは空っぽになった場所がいくつも描かれる。理事長室、図書室、部室……浦の星女学院の閉校をはっきり感じさせるが、それはけして寂しさだけを生んでいるわけではない。この最終回にはそれら「空っぽの箱」が絶対に必要だったのだ。
 
 

ラブライブ!サンシャイン!! 2期 第13話(最終回)「私たちの輝き」

 
 
ラブライブ!本大会で悲願の優勝を果たしたAqours
そして、浦の星女学院で過ごす最後の日がやってきた。
学校で過ごしたたくさんの思い出を胸に、大好きな校舎に寄せ書きをする生徒たち。
最後は泣かずに、笑顔で迎えようと約束するAqoursの9人。
卒業式では、理事長の鞠莉から卒業証書が授与される。
そして生徒会長であるダイヤの閉校の宣言で、浦の星女学院の歴史に幕が下ろされるのだった。
──それぞれが浦の星女学院の生徒であったことを誇りに思い、巣立ちの時を迎える。

 (公式サイトあらすじより)

 
 
 

1.空っぽの部屋が示すもの

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©2017 プロジェクトラブライブ!サンシャイン!!
ラブライブ!サンシャイン!!」 2期後半の流れはゆっくりとしたものだった。地区予選突破と統廃合決定が決まったのが7話だから、そこから決勝までで実に5話が費やされている。Saint Snowとの合同ライブや迫る別れ、それらを丹念に描いた物語は自然とラブライブ決勝に対する「できることは全部やる」スタンスと重なり、Aqoursの優勝をごく自然なものに変える力を持っていた。
 
しかし「全部やることがラブライブ優勝に繋がる」のと「ラブライブ優勝のために全部やる」ことは違う。千歌達はもちろん、ラブライブ優勝のためにSaint Snowと歌ったりしたわけではない。だから「全部やる」ことはラブライブ優勝で終わったりはせず、この卒業式兼閉校式でも繰り返される。中庭に寄せ書きして、教室にも音楽室にも、そして部室にも別れを告げていく。まるで「やり残したことは無いよね?」と確かめるように。
 

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©2017 プロジェクトラブライブ!サンシャイン!!
「できることは全部やる」というと、私達は実際にやったこと、積み上げ増やしたことばかりに目が行きがちだ。しかしできること全部をやることはやり残しを減らす・・・ことでもある。できることをやる度、やり残しの箱は空っぽに近づいていく。ならばこれまで入念にやり残しをなくしてきた千歌達の箱の中身は、もはや無に等しい。空っぽの部屋の数々は千歌達ができることを全部やった証明であり、もはや無しか残っていないことの象徴なのである。
 
 

2.0から1の果てにあったもの

ラブライブで優勝した。浦の星の思い出を笑顔にするべく、涙を必死にこらえた。自分はできることを全部やった、やり残したことは無い。そう自分に言い聞かせながらも千歌の表情は晴れない。何故なら、やり残したことが無いとは『0(ゼロ)』だからだ。0を1にしてその先に進んだはずなのに、たどり着いたのが0。それで晴れやかな気持ちになどなれるわけがない。だが空っぽの箱には、無の箱には本当に何も無いのだろうか?否。2期2話の花丸の言葉を思い出してみよう。
 
花丸「すなわち『無』というのは全てが無いのではなく、無という状態があるということずら。それこそ正に『無』。」
 
潜り込んだ校舎のどこを見ても、千歌はかつてを思い出す。その耳には皆の声が蘇り、その目には涙があふれる。もはや寄せ書きすら消えた空っぽの校舎の中にしかし、千歌の感情を無限・・に喚起するものがある。そこにあったのは『無』であって、『0(ゼロ)』ではなかった。
 

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©2017 プロジェクトラブライブ!サンシャイン!!
千歌「分かった、私が探していた輝き、私たちの輝き。あがいてあがいてあがきまくって、やっと分かった!」
千歌「最初からあったんだ。初めて見たあの時から、何もかも、一歩一歩。私たちが過ごした時間の全てが、それが輝きだったんだ。探していた私たちの、輝きだったんだ!」
 
統廃合を阻止できなかったから0なのでも、ラブライブで優勝できたから無なのでもない。それらを含め、千歌達がせいいっぱい過ごした時間の全てが0を1に変え、その先の『無』を見つけ出す道のりだった。諦めることなく、箱が空っぽになるまで続けたからこそ見つけることができた。その道のり自体にこそ、いかな結果にも揺るがぬ価値があった。
 

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©2017 プロジェクトラブライブ!サンシャイン!!
空っぽのゼロに悩んだ少女が、自分の中に『無』を発見する物語。ラブライブ!サンシャイン!!」とはきっと、そういうお話だったのだ。
 
 

感想

というわけでサンシャイン2期最終回のレビューでした。ここ数話は数日書きあぐねることが珍しくなく、まず見とこうくらいのつもりで視聴したのですがぐわーっと思考が湧いてきて一気に書くことができました。自分なりにこれまで見てきた2クールを駆使して読み解いたつもりです。
 
以前にも書いた気がしますが、肌に合うという意味で本作は無印以上に好みの作風でした。無印はケーキの甘さ、本作はみかんの甘さというか。初期はμ’s以上にアクが強そうと思っていたのに、気がつけば彼女達には魅力以上に親しみを強く感じるようになっていました。
 

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©2017 プロジェクトラブライブ!サンシャイン!!
そしてその上で魅力にやられてしまったのがダイヤさん。1期2話時点では「ブッブッブーですわ!」とかなかなかキツイなと感じてたのが気付けば毎度彼女のかわいさ美しさに溜息をつくように。最初に想像したよりずっと表情も内面も豊かで、素敵な娘でした。
 
さて、サンシャインも残すは劇場版のみ。寂しいですがやっぱり見ずにはいられない。こちらは年内にレビューを書きたいと思います。