逆転の落とし穴――「ストライクウィッチーズ ROAD to BERLIN」10話レビュー&感想

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©2020 島田フミカネKADOKAWA/第501統合戦闘航空団
いくつもの苦難を越えベルリンへ手を伸ばす「ストライクウィッチーズ ROAD to BERLIN」。10話ではとうとうオペレーション・サウスウインドが開始され、501はB-17に搭乗し空からベルリンへ赴く。爆撃機からの出撃は普段と逆に降下する形になるが、つまり今回の話は「逆転」を鍵として読み解くことができる。
 
 

ストライクウィッチーズ ROAD to BERLIN 第10話「静夏応答せよ」

 
 
遂に「ベルリン奪還作戦」が開始され、B17爆撃部隊と共に直接《ウォルフ》に攻め込んでいく第501部隊!B17爆撃機から投下された対ネウロイ気化爆弾が《ウォルフ》の雲を散らしていき、遂にその本体が現れる。
「501部隊降下用意!」
B17爆撃機から出撃した宮藤たちは全員で《ウォルフ》の本体に迫っていくが、その時、新たなネウロイが次々と出現して……!

 (公式サイトあらすじより)

 
 
 

1.守るために守られる、逆転の矛盾

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©2020 島田フミカネKADOKAWA/第501統合戦闘航空団
10話で顕著なのは、芳佳が501内に留まらぬ特別な存在として扱われていることだろう。作戦は彼女の強力なシールドを前提に作戦が立案され、501は芳佳を先頭にネウロイの巣のコアへ接近する。「守りたい」思いの強い彼女にとっては願ったり叶ったりの晴れ舞台であり、緊張よりやる気が勝るのも当然と言える。
 
しかしその扱いは誇らしい一方で、芳佳に不自由ももたらす。大きなもの(戦局)を守ることを期待されるようになった彼女はもはや、小さな個々の命を守る危険を冒すことを許されない。仲間達が殿を務める中で帰投を命じられることは、「守るために守られよ」と逆転することは矛盾を孕んでいる。それがけしてウィッチのような特異な存在に限らないのは、作戦継続のため失敗を成功などと言い換える(逆転させる)情報統制からも明らかだ。
これまで描かれた逆転劇のように、楽勝と思えた今回の状況が罠だったように。飛躍と陥穽は容易く裏返り、好機と危機は呆気なくひっくり返る。そして今回その中心となったのは、501の新たなメンバーとして成長目覚ましい服部静夏であった。
 
 

2.破壊されたのは501と静夏の"コア"

坂本から推薦され501に加わった静夏は、それに恥じない優秀なウィッチだ。規律を重視し職務に忠実で、自分の不足を補わんと努力を怠らない。特に大きいのは後者の気質で、それはいつしか芳佳のお株を奪うような――逆転するようなものになっていた。
魔法力温存のため帰投を命じられるもネウロイを放っておけない芳佳を、静夏はきっぱり制止する。
 

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©2020 島田フミカネKADOKAWA/第501統合戦闘航空団
静夏「宮藤さんの力を温存させることが私が受けた命令です!」
芳佳「ほっとくって言うの!? そんなのできるわけない!」
静夏「分かってます!だからここは私に任せて先に進んでください」

 

 
単に命令を押し付けるのではなく、守られることを信頼に置き換えて静夏は芳佳を説得した。彼女は言っているのだ、「未熟だけど懸命な新人のポジションは、もうあなたのものではないでしょう」と。揺らいだ先輩を歴戦の勇士に押し戻し逆転させるのはもう、芳佳ではなく静夏の役割なのだ。
 
静夏は1人で大型のネウロイを撃破する戦果を挙げ、見事芳佳をまっすぐ帰投させた。失敗を成功と言い換える情報統制で彼女の活躍が前面に出されたのは、彼女がこの戦いでもっとも「逆転」を体現していたからこそだろう。
 
 

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©2020 島田フミカネKADOKAWA/第501統合戦闘航空団

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©2020 島田フミカネKADOKAWA/第501統合戦闘航空団


しかし、ならば撤退戦の英雄を作戦遂行の障害へと逆転させれば事態も全てが逆転する。前回と異なるネウロイのコアの位置に騙された静夏は虜となって迎撃が遅れたし、通信妨害は芳佳の信頼をその分だけ強い不安に変えた。情報を操るのは、けして人間だけではない。
 
大型ネウロイによる特攻爆撃は芳佳の巨大なシールドによって阻まれ、撤退戦のような損害は無かった。しかしその代償として、温存させるはずの芳佳の魔法力は枯渇してしまう。501は、ベルリンへの道のコアたる芳佳の魔法力を破壊されてしまった。
ネウロイの巣・ウォルフのコア破壊を目的とした10話の戦いはしかし、全く逆転した結果に終わったのだ。
 
 

感想

というわけでストパン3期RtBの10話レビューでした。1話完結だった話が大ピンチで次回に続くと、物語もいよいよ大詰めなのが感じられますね。芳佳がもうできなくなってしまった役割を静夏が担うの、3話で2人が言っていたように「半人前でも二人合わせれば一人前」だなあ。
あと、意識を失った芳佳の代わりに落下して砕け、雨にまで打たれるストライカーユニットがとても痛々しかったです。主の代わりに最後まで頑張ってくれてた。
残り2話を控え、静夏の果たす役割にぐっと注目の集まる10話でした。