兎は黒豹をホウキに空を飛ぶ――「ストライクウィッチーズ ROAD to BERLIN」4話レビュー&感想

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©2020 島田フミカネKADOKAWA/第501統合戦闘航空団
ストライクウィッチーズ ROAD to BERLIN」4話はバイクのスピード記録更新に挑むシャーリーとルッキーニが中心の話だが、途中には芳佳の飛行再挑戦の様子も挿まれる。主人公だからオマケの出番……のようだが本当にそうだろうか。飛べていないのは、芳佳だけだろうか?
 
 

 ストライクウィッチーズ ROAD to BERLIN 第4話「200マイルの向こう」

 
 

1.飛べないのは3人

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©2020 島田フミカネKADOKAWA/第501統合戦闘航空団

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©2020 島田フミカネKADOKAWA/第501統合戦闘航空団
魔法圧の低下した芳佳は飛行の基礎たるホウキに乗っても上手く飛べないほどに低調だが、「上手く飛べない」場面は今回もう1つ出てくる。スピード記録更新のチャンスを守るために出撃したルッキーニもまた、シャーリーの新型ユニットを使用したためにフラフラして上手く飛ぶことができていない。精神的な面で考えても、早くまた飛べるようにならねばと焦る芳佳とシャーリーを守りたいと気ばかり急いているルッキーニはよく似ている。2人はどちらも、気持ちばかりが空回りして上手く飛べないのだ。
 
シャーリーにしてもユニットを履くのはラスト直前で、それまで彼女はかつての相棒・ラピッド号というホウキ・・・にまたがり続けている。彼女はバイク最速の称号を抱えてウィッチになったのであり、それを破られたままでは再び空を思うさま飛ぶことはできない。身体的に魔法圧が低下しているのは芳佳だけだが、ホウキに乗って飛べないのは実はシャーリーもルッキーニも同じなのである。
 
 

2.魔法も気持ちも強いだけでは

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©2020 島田フミカネKADOKAWA/第501統合戦闘航空団
シャーリーとルッキーニが芳佳同様に飛べなくなっているなら、それは芳佳同様に「調整力」が低下している証に他ならない。実際、ルッキーニはシャーリーが好きな気持が強過ぎるからこそ彼女の望まぬ改造をラピッド号に施してしまったし、シャーリーもバイクを愛しているからこそ怒鳴ってしまった。それはどちらも、自分の好きを調整できなかった結果だ。
魔法力が強いだけでは芳佳が飛べないように、好きな気持ちも強いだけでは上手く伝わらない。調整できなければ伝わらない。だからシャーリーとルッキーニの喧嘩は互いが互いに謝罪の気持ちを持つことで解決する。自分の気持と相手の気持ちを調整して、それで2人は仲良しに戻れる。
そしてルッキーニは知るのだ。ラピッド号はシャーリーを何もない田舎から連れ出してくれた「魔法のホウキ」なのだと。これがあったから自分はシャーリーに会えたのだと。時速200マイルを目指すことは言葉通り単なる記録ではなく、再びシャーリーが飛ぶために必要なことなのだと。だからホウキを守ろうとシャーリーの最新式ユニットを履いてルッキーニは飛ぶわけだが、その飛行はふらついてしまって守るどころか自分が命の危機を迎えてしまう。それはシャーリーもルッキーニも、まだ自分のホウキを把握しきっていない証拠だ。
 
 

3.私のホウキは

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©2020 島田フミカネKADOKAWA/第501統合戦闘航空団
シャーリーが自分の大好きなバイクに無残な改造をされても許せるのはなぜだろう? ルッキーニがそんな滅茶苦茶をしてしまったのはなぜだろう? 2人が自分の限界を超えるようなことをしたのは、2人が互いを大好きだからだ。気持ちを調整する必要があるほど、互いへの思いが強いからだ。
確かにシャーリーはラピッド号をホウキにウィッチの世界へやってきたし、バイクを愛する気持ちは変わらない。けれど今の彼女にはもっと大切なものがある。その大切なもののためなら、バイクだって200マイルだってなげうって悔いはないくらい、シャーリーはルッキーニを愛しているのだ。そのためなら、彼女はラピッド号には不可能なはずの200マイルにだって到達できる。バイクでだって飛ぶこともできる。不可能を可能に変えてしまうシャーリーの魔法の源は、ルッキーニにこそある。
そして本来なら問題児のはずのルッキーニもまた、シャーリーにはとても素直になれる。彼女がいればこそ、ルッキーニはウィッチとしてやっていける。
 

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©2020 島田フミカネKADOKAWA/第501統合戦闘航空団
だから戦いが終わった後、ルッキーニはシャーリーが降下しきる前に彼女に抱きつく。飛べなかった2人が飛んだまま、物語は終わりを迎える。2人にとっては互いこそが最良のホウキパートナーであることはきっと、これからも変わらないのだ。
 
こうして、シャーリーとルッキーニが再び飛ぶ物語は幕を閉じる。時速200マイルが記録に残らないように、今回の話はメイン・ストーリーにそれほど大きな影響は与えないだろう。けれどきっと、この物語は芳佳が再び飛ぶためのテーマ的なヒントになる。繰り広げられていく物語1つ1つが、芳佳が再び飛ぶための道筋を作って――調整して、くれることだろう。
 
 

感想

というわけでストパン3期RtBの4話レビューでした。またしても遅延、スミマセン。やっぱり睡眠不足と運動不足はレビューの敵ですね。木曜の晩に視聴してシャーリーとルッキーニの関係だけで書こうとしたのですが詰まってしまい、ここ最近よりは多めに寝てジョギングに行ったところで芳佳の描写の意味が自分の中で繋がり全体の道筋が見つかりました。ああ、シャーリーとルッキーニはずっと一緒にいてくれ……
 

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©2020 島田フミカネKADOKAWA/第501統合戦闘航空団
そしてバルクホルンお姉ちゃんがお姉ちゃんで素晴らしい。戦闘隊長になって調整力が増してきた……?