もてなしの魔法の原動力――「魔女の旅々」5話レビュー&感想

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© 白石定規・SBクリエイティブ/魔女の旅々製作委員会
旅の途中、本屋で見つけた本から半年ほど前のことを思い出すイレイナ。その時訪れたのは魔法使いが大道芸や新聞配達などをする国セレステリア。そしてその国の王立魔法学校の先生は……
 
「魔女の旅々」5話は街中で売られる本を見たイレイナがかつて訪れた国を回想するところから始まるが、後になって分かるようにその本、「フランの冒険譚」の売られている国はほとんどフラン一色に染まっている。フランが何かしたわけではないのに、彼女の魔法にでもかかったよう。これまでの話でも描かれてきたように、魔法は魔力によって行使されるとは限らない。
 
 

 魔女の旅々 第5話「王立セレステリア」

 
 

1.フランの「魔力なき魔法」のすごさ

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© 白石定規・SBクリエイティブ/魔女の旅々製作委員会
優秀な魔女イレイナの師匠であるフランだが、前回のミラロゼと打って変わって彼女が強力な魔法を使ってみせるといった場面はほとんど見られない。ホウキで飛ぶのは生徒達同様だし、生徒への指導すらイレイナを特別講師にして要所を任せるほど。しかしイレイナが彼女の部屋を訪れれば調度品がいくつも宙に浮いており、そこではごく自然に魔法が行使されている。見方を変えるなら、イレイナは魔法を使っていると認識させずに魔法を使えるほどの達人である、とも言える。
そして、その考えと魔力を使わぬ魔法が鍵となってきた本作の物語性を重ね合わせたなら、フランの使う魔法は部屋の中の浮遊する調度品のようにさりげなくしかし大きな物となって浮き上がってくる。イレイナ探しを多数の生徒にさせるのは自分が直接魔法を使うよりずっと効果的だし、その追いかけっこがなければ生徒は年若いイレイナを特別講師などとは認めなかったかもしれない。
1話でフランは世知のズルさも持ちその重要性をイレイナに説いたが、そんな彼女は人使いの面においても魔法を使うかのような手腕の持ち主なのだ。
 
 

2.フランがイレイナに魔法を披露する理由

フランは人使いにおいても魔法(的なもの)を使うけれど、しかしそれはけして自分だけを利するためのものではない。セレステリアは魔法が人々を喜ばせるために使う国なのだから、教師たるフランがそこから外れる道理はない。実際、彼女の使った魔法はイレイナを喜ばせる結果を伴うものばかりだ。最初こそ戸惑ったものの生徒との追いかけっこをイレイナは最終的には楽しんでいたし、特別講師=関係者になったためにイレイナは王立魔法学校の敷地に入ることもできた。特別講師の時間にしてもけして迷惑ではなく、普段していない人に教える経験がイレイナには楽しくてたまらなかった。
 
この国では魔法は人を喜ばせるために使われる。ならばフランが使った人使いの魔法はすなわち、大道芸人が魔法で観客を喜ばせるのと全く同じようにイレイナを喜ばせるために使われている。この国での出来事は、全てがフランが用意したイレイナへのもてなしなのだ。
そしてそこまでする理由を、フランはこの国の人やイレイナの思いに仮託して語っている。
 

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© 白石定規・SBクリエイティブ/魔女の旅々製作委員会

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© 白石定規・SBクリエイティブ/魔女の旅々製作委員会


フラン「彼らはお金が欲しくて魔法を披露しているのではないのですよ」
イレイナ「なんのためです?」
フラン「好きだからですよ」
イレイナ「……!」
フラン「イレイナだって、好きだから旅をしているのでしょう? それと同じですよ。みんな人に喜んでもらうのが好きだからやっているのです」

 

 
生徒を動員して手の込んだ花道まで用意するのは、そんなにも人使いの魔法を使うのは、フランがイレイナに喜んでもらうのが好きだから。彼女のことが大好きだから。
その思いを背に受けて、イレイナはまた新たな場所へと旅立つのだ。
 
 

感想

というわけで魔女の旅々の5話レビューでした。なかなかとっかかりが見えず、フランが人使いの魔法を使っているのが分かっても終わりが今ひとつスッキリしなかったのですが、彼女がそうする理由が見えてようやく書き上げることができました。弟子のこと大好き過ぎだな先生! 思い至った瞬間僕の方が床をのたうち回りそうになったぞ!
3,4話の暗い内容から仕切り直した感じですが、さてさて次回イレイナが訪れる国は。
 

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© 白石定規・SBクリエイティブ/魔女の旅々製作委員会
イケメにオドコにチャラにユウトとゲストキャラのゲーミングが実にストレートですが、フラン先生が出てきたらユウトがネクタイを直しているのが地味に細かくて好きなポイント。