遡れど覆らず――「魔女の旅々」11話レビュー&感想

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© 白石定規・SBクリエイティブ/魔女の旅々製作委員会
見知らぬものと己の因果の元をたどる「魔女の旅々」。11話冒頭、自由の町クノーツで再び魔法使いが狙われているとイレイナは知る。面倒を避けるため彼女は魔女であることを隠そうとするが、もちろんそれは魔法が使えなくなるわけではない。正体を隠すことは擬似的に時を遡って覆すようなものだが、本当に過去が覆るわけではない。
前回は旅とは時を遡るものと定義づけた話だったが、今回は遡ることと覆すことを区別するお話だ。
 

魔女の旅々 第11話「二人の弟子」

 
 
クノーツの街を訪れたイレイナは、
魔法使いを嫌悪する強盗集団「骨董堂」復活の報を耳にして正体を隠す。
いっぽうサヤは謎の小箱を届ける仕事の途中で妹に再会する。
そんなときイレイナとサヤの体に異変が……?

 

公式サイトあらすじより)
 
 
 

1.覆せないものがある

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© 白石定規・SBクリエイティブ/魔女の旅々製作委員会
10話のサプライズとして挙げられるのは、サヤの妹・ミナの登場とその性格だ。姉よりも先に魔女見習いになった才女で、長い髪と真面目な口ぶりはサヤと大きく違う……ように見えてそうではない。呪いの箱から出た好意を増進させる煙があらわにしたのは、大好きな女性(姉)に性的に迫る姉そっくりの妹であった。普段は冷たくあしらってみても結局、姉妹でよく似た本性は覆せも隠せもしなかったのである。
 
人は生きていく中で様々なものを覆したり隠そうとするが、しばしばそれは徒労に終わる。骨董堂のお頭はかつての失敗を取り戻そうと(覆そうと)するが今回も失敗したし、トレードマークの八重歯を失ったその姿は老いを隠せない。不思議な道具で霊の入れ替わったイレイナとサヤは外見は互いに相手そのものだけど、口を開けば中身が入れ替わっていることを隠しようもない。ならば、イレイナの旅がニケの正体を隠し切れないのもまた必然だったのだろう。
 
 

2.そして、だから自由でいられる

自分が旅に憧れた理由である、冒険譚を著した魔女ニケの正体。イレイナはそれが誰か気付きながら知らぬふりをする――隠そうとする。しかし先に述べたように、そういったものを隠し切れもせず、誤魔化し(覆し)切れないのが世の道理だ。フランは、そんな彼女に優しく助言する。
 

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© 白石定規・SBクリエイティブ/魔女の旅々製作委員会
フラン「あなたに影響を与えた人間が誰であろうと、それに気付いたとしても、なんら変わりはしないと思いますけどね」
イレイナ「そうでしょうか」
フラン「そうですよ、知ってます? わたくしの師匠、計算づくで行動しているように見えてかなり大雑把な性格だったんですよ」
イレイナ「マジですか!?」
フラン「そしてあなたもかなり大雑把です」
イレイナ「マジですか!」
フラン「だから別に、そんな小さいことを気にする必要はないと思いますよ」

 

 
イレイナの性格は既に定まったもので、それは理由を知れば覆されたりするわけではない。
時の流れの中で同じようなことは繰り返されるけれど、それはけして本当に時が遡ったりするわけではない。それは今回の骨董堂に限った話ではなく、9話のエステルの時間遡行が歴史改変ではなかったこと、また彼女が記憶を抹消してもイレイナが同じような心の傷を負ったことからも言える。であればニケの正体が誰なのか気付いたとしても、イレイナが幼き日にその冒険譚に胸を躍らせた過去まで否定されるわけではない。
 
時は遡るようで遡らず、ただ繰り返される。しかしそこにあるものは全てが同じではない。
 
イレイナとサヤは互いの師匠がかつて骨董堂を退治したことを知らなかったが、2人が果たした役割は概ね師のそれに沿っていた。
クノーツの町でフランとシーラは素直になったが、イレイナもまたここでフランや皆への好意を素直に口にした。
 
過去を知らなければ自由というわけではないし、過去を知ったから未来が不自由になるわけではない。今回の出来事を通してイレイナはそれを知った。自由の町クノーツでの経験はイレイナに、時を遡っても覆らない自由を与えたのだ。
 
 

感想

というわけで魔女の旅々の11話レビューでした。9話が前々回だったことに納得できる内容でした。
それと本作を見る上で大きいと思うのが、イレイナが元八重歯に「間抜けそう」と言われしかもまんまとひっかかったこと。自己認識と現実の差異は美貌に限ったものではないと劇中で認識されているのは、彼女という人物をどう捉えるかに結構な影響があるように思います。
 
 

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フラン「忘れないでね。いつだって、わたくし達があなたを想っていることを。愛して止まないことを」
 
 まーたこの人は聞いている方が赤面するようなことを言う。