花を咲かせる力とは――「ストライクウィッチーズ ROAD to BERLIN」5話レビュー&感想

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©2020 島田フミカネKADOKAWA/第501統合戦闘航空団
前回、前々回と基地での日々を描いてきた「ストライクウィッチーズ ROAD to BERLIN」だが、5話はネーデルラントへと舞台を移して――「変えて」描かれる。本作では「変わる」「変わらない」のせめぎあいが重要な要素となっているが、今回はそこに少し方向性を加えた「変える」のお話だ。
 
 

 ストライクウィッチーズ ROAD to BERLIN 第5話「クィーン・オブ・ネーデルラント

 
 

1.変わるでも変わらないのでもなく「変える」

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©2020 島田フミカネKADOKAWA/第501統合戦闘航空団
魔法圧の低下を克服すべく芳佳は日々訓練に励んでいるが、ややもするとその方向性は体力トレーニングに偏りがちで、魔法圧の回復どころか自分の体を壊しかねなくなっている。もはや「変われなく」なっているのが芳佳だから、方向性の修正はむしろ他者が「変える」方がずっと有効で、だからペリーヌがシャワーの温度を「変え」れば頭も冷えるし、場所をネーデルラントに「変え」ればその思考も訓練一辺倒ではなくなってくる。
また、ネーデルラントの女王もウィッチの役割を「変える」ことで願いを叶えようとしていた。今回ペリーヌが呼ばれたのは戦いのためではなく、国の宝である青いチューリップ「クィーン・オブ・ネーデルラント」の開花に協力してもらうため。現代のウィッチの役割はネウロイとの戦いだがそれはそもそも人々の笑顔や暮らしを守るためであり、であれば国の象徴でる花を咲かせることも広い意味では目的に通じるものになる。本質はそのままでも役割を「変える」ことはできるのだ。
 
 

2.取り戻され始めた芳佳の"魔法"

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©2020 島田フミカネKADOKAWA/第501統合戦闘航空団
変化と不変よりも能動的な「変える」が求められる場で、芳佳は積極的にそれをもたらしていく。開花の手伝いが任務だったのが畑仕事も対象に変え、戦えない自分をだからこそ開花の手伝いにしたいと変え、頑なだった老人の1人の態度も変え……戦場では今は戦力外とは思えぬ活躍ぶりだが、それはけして芳佳が変わったわけではない。これまでだって彼女は、その未熟さや一途さを快く思わない人の態度を「変えて」きた。歴戦の勇士になろうが魔法圧が低下しようが、そんな風に周囲の人を「変える」ことこそ芳佳の本質ではなかったか。
 
だから芳佳はその本質を取り戻すとともに、更に周囲を変えていく。温室の室温調整を魔法圧の調整訓練の機会に変え、鍬を武器に更には避雷針に変え、その戦いは雷撃の魔法を「クィーン・オブ・ネーデルラント」の開花の刺激に変えた。そしてそういう力は芳佳だけでなく、ただの人間にもペリーヌにも備わっている。戦車を農地を耕す重機に変えたように。女王からの感謝の言葉を老人たちも含めた皆への称賛に変えたように。
 

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©2020 島田フミカネKADOKAWA/第501統合戦闘航空団
咲かない青い蕾を美しい花へと「変えた」ペリーヌが、かつて最初にそれをしたのが自分の祖母であったと知ったように、受け継ぐべきは変化や不変そのもの以上に「変える」力そのものにこそある。それは人の心に花を咲かせる力でもあり、またそれこそは魔法と呼ぶにふさわしいもの。ウィッチ達はこれからも、その魔法をこそ振るっていくことだろう。
 
 

感想

というわけでストパン3期RtB5話のレビューでした。「調整」「変化」「不変」とこれまでの4話のキーワードは劇中に見えるもののテーマとしてまとめられずほとほと困り果てていたのですが、視点を「変えて」みたら思いの外あっさりとまとまりました。そうか、芳佳はこういう娘だった……ペリーヌもすっかりしっかり者で。
さて、次回はお姉ちゃん回なのかそうなのか。