全ての集うベルリンへ歩み続けた「ストライクウィッチーズ ROAD to BERLIN」。今回の副題は「それでも私は守りたい」……芳佳はしばしばこの「守りたい」という言葉を口にする。しかし考えてみればこれは曖昧な表現だ。「何から」「何を」守りたいのかに触れていない。もちろん具体的にと問えば「ネウロイから皆を」となるだろうが、芳佳が守っているのはそれだけだろうか。最終回となる12話は、芳佳のこの言葉の秘密に迫るお話だ。
ストライクウィッチーズ ROAD to BERLIN 第12話(最終回)「それでも私は守りたい」
ネウロイ軍団との大混戦の中、第501部隊から切り離されて孤立してしまった宮藤とパットンたち。ネウロイの猛攻を前に、絶望的な状況に陥る宮藤たちだが、彼女は決してあきらめようとしなかった。「ここを守るために戦います!」「たった一人でか? 死ぬぞ」「それでも…それでも私は守りたいんです!」激しい最終決戦の中、宮藤たちの運命、そして第501部隊とネウロイとの戦いの行方は果たして…!
(公式サイトあらすじより)
1.芳佳が守るものの広さ
前回フラッグタワーに逃げ込んだパットン将軍と戦車部隊だが、ネウロイの猛攻は続いており負傷者は増えるばかり。しかし芳佳が治療するのはけして、ビームや破片で負った傷ばかりではない。兵士の1人はネウロイを道連れにすべく1人屋上で攻撃を仕掛けていたが、平静な状態ならもちろんそんなことはしなかったろう。自暴自棄とは心が傷ついたからこそ起きる行動であり、ならば彼を立ち直らせた芳佳はその心をも治療した――「守った」と言える。芳佳の「守る」は、単に敵の攻撃を防ぐことよりも打ち倒すことよりも、もっと広く大きな意味を持っているのである。
2.守ることは奪わせないこと、変えさせないこと
このブログでは、本作1話を「変わらないことの価値」を描いたものであるとレビューを書いた。それはこれまでの話でも変わらない。原因不明の魔法力の不調、手を変え品を変え襲い来るネウロイの脅威、ミーナの魔法力の衰えの始まり……どれもが変化であり、それも理不尽な変化だ。
もちろん、人は生きる限り変化していく。けれど先に挙げたような変化は、その人の大切なものを奪って変えてしまう。暴力的で一方的な変化は、変えてはいけないものを変えてしまう。例えば「死」という変化が、かけがえのないたった1つの命を奪ってしまうように。
だから芳佳の言う「守る」とは、そういう理不尽な変化から守ることだ。命を、意思を、居場所を――それぞれの奪わせてはいけないものを守ることだ。変えさせないことだ。
そしてそのいちばん大切なものを守るためになら、変えないためになら、芳佳達はいくらでも変わる。何にでも変わる。妹から得た地下鉄の知識を自分達の進む道にし、それが塞がれていれば防空壕を進むように。規律を重んじる静夏が、芳佳を守りたいがゆえに命令違反までしたように。魔法力の枯渇した芳佳が衛生兵として戦い、それで足りなければ理屈も何もかも吹き飛ばして再び魔法を使えるようになるように。そして復活した彼女のシールドがもはや敵の攻撃を防ぐだけでなく、その巨大さ分厚さで障壁としてすら機能するように。
人は変わらないためにこそ変わる 。理不尽な変化からいちばん大切なものを「守る」ために芳佳は、501はこれからも戦い続けるだろう。
感想
というわけでストパン3期RtBの最終回レビューでした。なんというか奇妙に書きあぐねた回でした、いい話なのになかなかどこを掴んだらいいか定まらず……1話1話のテーマを探り出すのが僕のレビューの勘所ですが、今回はネウロイのコアをなかなか見つけられなかったようなものですね。
全体としては長期に渡ってシリーズを続けている作品だからこその、扱いに説得力のあるテーマを持った作品だったと思います。このあたりは1期2期やブレイブ、「~発進しますっ!」なんかを並べてみるともっと面白く見えてくるかもしれません。
これからも続くウィッチ達の世界に期待しつつ。スタッフの皆様、お疲れさまでした。