話数単位で選ぶ、2020年TVアニメ10選

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©Koi・芳文社/ご注文はBLOOM製作委員会ですか? 「ご注文はうさぎですか? BLOOM」8話より
新米小僧さんの「新米小僧の見習日記」から変わって個人ニュースサイトaniado」さんが集計してくださることになった「話数単位で選ぶ、2020年TVアニメ10選」企画。2020年も参加させていただきます。
ルールは以下の通り。
 
・2020年1月1日~12月31日までに放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定。
・1作品につき上限1話。
・順位は付けない。

 

 

 

  

No.1 ご注文はうさぎですか? BLOOM 第8話「スタンプ スリープ スタディ スマイル」

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©Koi・芳文社/ご注文はBLOOM製作委員会ですか? 「ご注文はうさぎですか? BLOOM」8話より
TVシリーズとしては5年ぶりのごちうさ3期。本作で嬉しかったのは、2015年に時を戻すような作品ではなく、2020年のアニメとして変化を大きく扱っていたことでした。
感動色も強まっておりチノ関連はキャッチャーミットをぶち抜くような豪速球回が多かったですが、10選としては選ぶのはリゼ回。
将来の進路という大人への道のことなのに、この回のリゼは家出に始まりとても子供っぽいんですよね。でもむしろ、それが彼女の成長に繋がっている。
 
大人になるためには大人ぶるのではなくまず子供をやりきるべきで(フリクリだ)、強くなるためには強がるのではなく弱さを認めなくてはいけない。素直になるのは気恥ずかしいけどとても大切なことなのだとこの回のリゼの姿、あるいは彼女の父の姿から感じました。他の回のチノの成長がどういうものかにも繋がっている、とても示唆的な回だったと思います。
 
 
 

No.2 ストライクウィッチーズ ROAD to BERLIN 第9話「ミーナの空」

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©2020 島田フミカネKADOKAWA/第501統合戦闘航空団 「ストライクウィッチーズ ROAD to BERLIN」 9話より
「変わる」「変わらない」でごちうさと対照的だったのがストパン3期。芳佳の不調にしろ手を変え品を変え襲い来るネウロイにしろ、本作は理不尽な変化に対して「変わらない」ことの重さを描く内容だったと思います。
この9話は魔法力の衰えという「理不尽な変化」に抗いながらも墜落しそうになるミーナが、「変わらない」友誼で繋ぎ止められるシーンが本当に素晴らしい。ミーナを演じる田中理恵さんの挿入歌「願いの灯」もあって、分かっていても目が潤んでしまいます。
 
抗いがたい変化の中、それでも変わらずにいるべき自分の核は何か。ミーナを救うのが、情の厚さはそのままに戦闘隊長として成長(変化)しているバルクホルンであることもとても印象的でした。彼女のファンで良かった。
 

No.3 ゴッド・オブ・ハイスクール 第5話「ronde/hound」

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©2020 Crunchy Onigiri, LLC 「ゴッド・オブ・ハイスクール」5話より
今年も多くの過去の名作のアニメ化・再アニメ化がされましたが、もっとも「懐かしい」と感じたのはこの「ゴッド・オブ・ハイスクール」でした。初めて見るのに懐かしい、幼い頃に読んだ少年漫画の匂いがしました。
少年漫画、それもジャンプ漫画には「友情・努力・勝利」の三本柱がありますが、本作をそれに当てはめるなら間違いなく「友情」でしょう。主人公自身も含めた「孤独から救い合う物語」と言える作風において、この5話の爽やかさは特筆すべきものがあったと思います。こういう気持ちよさって「変わらない」ものですね。
海の向こうから来てくれた本作という友達に、感謝したくなる視聴時間でした。
 

No.4 ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 第3話「大好きを叫ぶ」

眼鏡っ娘の赤面山盛りありがとうございます!……それはそれとして。
これまでのシリーズと異なりソロアイドルを描く本作を僕は「自分を大切にする」話と見立てていますが、そのきっかけとなったのがこの3話でした。
自分より他人を優先して、にも関わらず自己犠牲は自己満足にしかならない。2人の自分を通して「自分を他人のように大切にする(それによって他人も自分のように大切にできる)」ことを学ぶ中川菜々(優木せつ菜)のありようは、1人を描きながら集団を描いた素敵なものだったと思います。
 
 

No.5 歌舞伎町シャーロック 第21話「絶入」

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©歌舞伎町シャーロック製作委員会 「歌舞伎町シャーロック」21話より
多種多様という言葉は簡単だけど難しいものです。ネットを介し多くの人と触れるようになったことで、僕たちは他人を簡単に狂人扱いするようになった。けれど角度を変えて見れば、その相手も私達と同じどこにでもいる人間なのではないか。
そういう、自分とは違うんだと存在そのものに目をつむりたくなるような他人との距離感を描いた点で、本作は抜きん出ていました。
 
この21話のモリアーティは僕たちの常識から外れきって、しかし確かに僕たちと同じように満たされて死んでいった。彼もまた僕たちと同じ人間であったことを「やり直す」残りの話ももちろん素晴らしかったのですが、それはこの回あってこそのもの。よく、こんな話を描けたものです。
 
 

No.6 天晴爛漫! 第3話「DUEL」

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©2020 KADOKAWA/P.A.WORKS/天晴製作委員会 「天晴爛漫!」3話より
2019年にも「荒野のコトブキ飛行隊」を10選の1つにしましたが、僕は荒野を行く作品の持つ概念性がとても好きです。
だだっ広くて何もないように見える荒野に確かに道はあり、困難と引き換えに私達はどこへでも行ける。そこに見えない道があるからこそ、全く縁もゆかりもないように思える他者と交差する時があり、共鳴する時がある。荒野を行く作品は、人生の自由と険しさにあふれている。
この3話は予想を超える勝ち方や自分とは違う世界に住んでいるように見える人間との共感など、本作に荒野の魅力がたっぷり詰まっていることを確信させてくれる気持ちの良い回でした。
 
登場人物が集うのは大陸横断レースだけど、天晴達が「心の荒野」を走る生き様を見せることこそこの作品の眼目だったのだと思います。

No.7 デカダンス 第10話「brake system」

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©DECA-DENCE PROJECT 「デカダンス」10話より
今年は、虚実の扱いに目に見える穴の空いた年だったと思います。ありていに言えば、多くの人が「どうしてあいつらはあんな与太話を信じるんだ、あんな連中を信用してるんだ。バカじゃないのか」と嘲笑いながら自分も別の与太話を信じるようになった。その侮り合いによって、歩み寄れるものも歩み寄れなくなった。もちろん、僕も。
リテラシー向上に努めようが「どっちもどっち」などと冷笑と無関心を決めこもうが、もはや嘘を信じない方が難しい。ならば虚実を見極める能力以前の、私達のありようの方にこそ道があるのではないか。そういう意味で、嘘を信じまた騙されていたナツメが虚実そのものによりかかるのではなく、自分の見た「真実」は何だったのか見つめ直すこの10話には希望を感じました。
 
僕はナツメの「絵に描いた」(ような、ではない)いい子ぶりがどうしても好きになれなかったのですが、それに一定の納得を見つけられたという意味でも個人的に意義を感じた回です。
 
 

No.8 虚構推理 第12話「秩序を守る者」

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(C) 城平京・片瀬茶柴・講談社/虚構推理製作委員会 「虚構推理」12話より
虚、という点では、主人公の側が虚構を生み出す本作もとても現代的な作品でした。虚構を駆使するからこそなんでもありではなく、いっそうの配慮と倫理観が求められる。守るべき一線をどこかに置かなければ、私達は不思議な力などなくとも怪物になってしまう。
 
この12話を選んだのは、最後の「終」が痺れるほど格好良かったから。本作は毎回「つづく」を大きく映して終わり続けてきましたが、最後まで見ればそれは本作の世界が秩序を取り戻せていなかったからということが分かります。不穏だからこそ「つづく」と示し続けてきた。
けれどこの12話では先の不安はあれど、確かに平穏は訪れている。時間をスキップしてどういう関係なのか確信が持てなかった九郎と琴子が、確かに恋人であることも分かる。全てに秩序がある。
最後に大きく映される「終」には、それを取り返し守り抜いた誇りこそが込められているように思うのです。
 
アニメ2期も決定とのことで、鋼人七瀬以外の話がどのように描かれるかとても楽しみです。マガポケで漫画版を追いかけてますが毎回驚かされ続き。
 
 

No.9 推しが武道館いってくれたら死ぬ 第9話「オタクじゃなく一人の人間として」

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(C) 平尾アウリ徳間書店/推し武道製作委員会 「推しが武道館いってくれたら死ぬ」9話より
僕を変えた作品という意味で今年外せないのが「推しが武道館いってくれたら死ぬ」。ドルオタというものがどうも理解できず、だからこれを見て少しは分かるかな……と見てみたのですが、1話にして「ああ、この人達は僕がアニメレビューにイカれてるのと同じようにアイドルにイカれてるんだな」と感じてしまって。自分とは縁遠い、全然違うんだと思っていた人達に一気に親近感を抱いてしまったのでした。
 
9話はそんな本作の中でも「推し」な寺本優佳の回と言える話。マイペースで1人だけ「武道館行けなくてもいい」なんて言っていた彼女には彼女なりに道理があって、そしてその彼女なりの道理が後に彼女にも武道館行きを願わせる。
多くの人が思い思いの願いを胸に初詣に向かう状況とも照応するものですが、「違っても同じものを目指せる」のではなく「違うからこそ同じものを目指せる」んだということをこの物語からは教えてもらいました。
そして #優佳愛してる
 
 

No.10 ガンダムビルドダイバーズRe:RISE 第22話「刻限のゼルトザーム」

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©創通・サンライズ 「ガンダムビルドダイバーズRe:RISE」22話より
第2クールで一気に人気の爆発したその名の通り「リライズ」する物語。1話1話が印象的でしたが、1つ選ぶなら本作の「ヒーロー」を明示した22話。
小さな頃に憧れたそれは齢を重ねるほど特別に見えて、遠く彼方に去っていくもの。だけどそれを「特別」の一言で片づけてしまうのはむしろ傲慢で。
特別に特別をぶつけて勝ち取るのではなく、特別を特別でなくす者。奇跡を奇跡でなくす者。それこそがヒーローなんだとこの回は教えてくれる。
もちろん私たちはヒロトのようにも振舞えないだろうけど、彼らを応援し特訓に付き合ったり、アルスを迎え撃ったGBNのダイバーのようにはなれる。
 
取り返しのつかないことはやり直せないことではない。できることに限りがあることは無力ということではない。ヒロト達の姿は、それをこそ示してくれていました。
 

選外候補

 
 
 

雑感

以上の10本となります。春に放送延期が続出したこともあり、少ない視聴本数から選べるかな?とも思いましたが、こうしてみると自分の中では確かにこの10本だなと実感します。
今年は自分の中ではアイドルものに対するハードルを越えられた年で。冬期の推し武道をきっかけに、話数の多さで尻込みしていた「ラブライブ!」シリーズを春の放送延期を契機に見ることができました。サンシャインと合わせて50話以上、この時をおいて機会は無かったことでしょう。
 
レビューの書き方に限らず、色んなことに悩んだり、失敗したりを繰り返した年でした。それら1つ1つが取り返しがつかないことを認識して、それでも止まらずにいたいと思います。
 
 
昨年の記事はこちら↓