リゼはおままごとがしたい――「ご注文はうさぎですか? BLOOM」8話レビュー&感想

f:id:yhaniwa:20201129193031j:plain

©Koi・芳文社/ご注文はBLOOM製作委員会ですか?
少女達の変化と成長に時の流れを見せてきた「ご注文はうさぎですか? BLOOM」。これまでそれが目立つのはチマメ隊であったが、シャロやブルーマウンテン&凛の描写も同様であってけして独擅場というわけではない。8話でそれを見せてくれるのは最年長、こちらも進路選択の迫っているリゼだ。
 
 

ご注文はうさぎですか? BLOOM 第8話「スタンプ スリープ スタディ スマイル」

 
 
進路のことで父親とケンカしたリゼが、ラビットハウスに泊まっていました。
リゼは将来、小学校の先生になるという目標を持っているのです。
リゼ先生に刺激されたのか、みんなも勉強を張り切りだしました。

 

公式サイトあらすじより)
 

1.職業体験から見える、リゼの本質

f:id:yhaniwa:20201129193048j:plain

©Koi・芳文社/ご注文はBLOOM製作委員会ですか?
今回は職業体験の色彩の強い回だ。別に研修が行われたりするわけでもないが、小学校の先生になりたいというリゼの夢をきっかけにココア達も先生役を演じてみたりする。理科教や国語の先生、家庭教師などそれぞれ違う形で演じてみるものの――ココア達のそれはリゼほど上手いとは言えない。ココアは教師役をやってもだめお姉ちゃんの性根が出てしまうし、年下のチノは大人ぶっても生徒側にしかなれない。立場を多少変えてみたところで、彼女達の本質が変わるわけではないのだ。
 
そうやって見た時、リゼは確かに先生に向いている。ココアとチノに接する様子は母親か何かのようだが確かに「幼子」を導いているし、皆にスタンプカードを配る天然プレイボーイぶりも見方を変えれば先生と生徒の交流のよう。チマメ隊によって振り返られる過去も示す通り、リゼのこれまでの行動は教師に向いた本質が少し形を変えて現れていたに過ぎない。
 
 

2.おままごとから見える、リゼの求めていたもの

職業体験的なやりとりはリゼの先生に向いた本質を明白にするが、現れている本質はけしてそれだけではない。
 

f:id:yhaniwa:20201129193107j:plain

©Koi・芳文社/ご注文はBLOOM製作委員会ですか?
「普段1人で食事することが多いから、食卓が賑やかなのは嬉しいなって」
 
人は1人でいる時、何かを――俳優のように全くの別人をという意味ではなく――演じることは難しい。親であったり姉妹であったりといったロール(役割)は相手がいるから成立するもので、その人だけの時には演じる意味が無いからだ。引用したリゼの述懐は、彼女が何かを演じる機会に恵まれなかったことを象徴していると言える。
 
だから今回の出来事は、彼女にとって職業体験であると同時に「おままごと」としての意味を持つ。妹のふりをしてみたり、母親になってみたり、チマメ隊や皆から先生と呼んでもらったり。今までできなかったそれを、リゼはたっぷりと満喫する。皆に頼りにされ先生になる夢を深める一方、今回のリゼは全方位で皆に甘えているのだ。パーティの後で一番最初に寝入ってしまうリゼの姿は、遊び疲れて眠る子供そのものなのである。
 

f:id:yhaniwa:20201129193121j:plain

©Koi・芳文社/ご注文はBLOOM製作委員会ですか?
そして、目覚めたリゼは父ともまたおままごとをする。自分の夢を笑ったのは嬉し涙を隠すためだったと聞いて、まるで先生になったように父を導く。父の額にうさぎスタンプを押してあげた彼女の額にも、同じスタンプが1つ。
リゼは、子供らしい経験をすることで大人への一歩を歩んでいる――
 
 

感想

というわけでごちうさ3期8話のレビューでした。チノ関連でがっつり泣かせに来ていた本作ですが、今回のリゼ回もどうしてどうして。彼女は彼女で色々足りなかったものがあって、それがココア達との日々の中で埋められていたのはとても感動的でした。家出も「子供」の行為だし、ままごとというのはこれまでも読み解く鍵にできた「偽物」だし、想像以上に興味深い構成になってきた。
 

f:id:yhaniwa:20201129193141j:plain

©Koi・芳文社/ご注文はBLOOM製作委員会ですか?

f:id:yhaniwa:20201129193154j:plain

©Koi・芳文社/ご注文はBLOOM製作委員会ですか?
それはそれとして眼福。シャロもかけているかと思ったが体育教師スタイルだった。