新たな年の始まりと共に新たな一歩を描く「ご注文はうさぎですか? BLOOM」12話。ココアは手品と歌、ジャズにチノのボーカルと次々に話を広げていく。突拍子もないその行動はしかし、不思議とチノと亡き母を繋げている。最終回となる今回は、ココアのその輝きを称揚するお話だ。
ご注文はうさぎですか? BLOOM 第12話(最終回)「その一歩は君を見ているから踏み出せる」
もう今年も年末です。正月は実家に帰らないというココアに、姉のモカはさみしさを募らせて、楽しそうな写真にやきもちを焼いています。もうすぐ来る、新しい季節に向けて、みんなが新しい一歩を踏み出します。
(公式サイトあらすじより)
1.ココアといる分だけ、遠い場所と繋がれる
この12話ではOPでのみ姿を見せていたココアの姉・モカと母親が登場するが、2人は「木組みの家と石畳の街」を訪れたり電話をかけたりはしない。けれど話すことはココア絡みのことで持ち切りで、画面には末妹への愛情が満ち満ちている。遠く離れてはいても、ココアを通して繋がっているのだ。
またその繋がりはけして一方通行ではなく、チノはココアが送ってもらったモカの高校時代の制服が自分の母と同じ学校のものだと気付く。母がずっとここにいたわけではないと知ったことは、彼女の意識を街の外に向ける機会となった。
中学時代を知りたいと言われて制服を送ってもらったり、雪に埋もれていたかと思えばカレーの匂いに釣られて探しに行こうと行ったり、ココアの行動は本当に突拍子がない。けれど突拍子の無いものはつまり、遠くにあるものだ。チノだけでは届かなかった、遠くにあるものだ。
2.あなたがいたから来られた場所を、あなただけに
ガレット・デ・ロワで指輪を引き当て王様になったチノは、何を命令するか決める時間の中で皆の話を聞く。卒業旅行の話、お礼の話、外の世界の香りや喫茶店の話……どれも取り留めのない、1つ1つはどうということもない話。けれどチノはそこから、リゼの合格祝いとチマメ隊の卒業旅行を兼ねた、自分も見てみたい外へのお出かけを提案する。彼女もまた「繋げた」のだ、遠くに離れてバラバラだったはずの皆の希望を、繋げたのだ。
人は遠くにあるものに手を伸ばしても、自分の腕の長さより遠くには届かない。けれど誰かと手を繋いだら、その分だけ遠くへ手を伸ばすことができる。チノの伸ばした手は今、友人と繋いだ手は今、とうとう街の外まで伸びようとしている。そしてそれは彼方の景色というだけではなく、自分の中にもある。己の中のあまりにも深くにしまい込んでしまった思いには、チノ1人では手が届かなかった。
チノ「今のわたしはちょっとおかしいので、ついでに言っておきます。あくまでついでです」ココア「?」チノ「あの……ありがとうございます、ココアさん」
あなたがいたからもう一度手を伸ばせたその思いの、"最初の一杯"をあなたに。チノの微笑みを言葉の終わりまで見られるのは、たった1人だけ。
ココアはチノと、彼女のもっとも内側にしてもっとも遠くにあった素直な思いを繋いだのだ。
感想
というわけでごちうさ3期12話レビューでした。「離れる」「遠く」というのが最後のチノの普段と違うありようにかかっていると目星はつけたものの、じゃあそれはみんなと「一緒に」とどう結びつけたらいいか……というところになかなか答えを出せず。最終的に「手を繋いだ分だけ遠くに行ける」というまとめ方になりました。「遠くは自分の内側にもある」というのは書いている内に自然と浮かんだものです。
話数10選にも書きましたが、僕は本作が2015年に年を戻すのではなく2020年のアニメとして「変化」を大きく扱っていたことがとても嬉しくまた心を揺さぶられました。永遠には続かない日常と、しかしそこにある永遠の幸せ。見る者を優しく包み込み、そして確かに背中を押す。そんな作品だったように感じました。
見て本当に良かったです。スタッフの皆様、お疲れさまでした。