前回チノがココアと同じ高校を目指すと決めたことから、「ご注文はうさぎですか？ BLOOM」5話はココア達がチノと同じ校舎での再会を期する乾杯をする場面から始まる。ココアいわく「義兄弟の盃」とコミカルな言い回しだが、この言葉こそ5話を読み解く上で重要な意味を持つ。今回はたくさんの義兄弟が登場する話なのだ。
ご注文はうさぎですか？ BLOOM 第5話「彼女は熱き旋風 彼女は気ままなそよ風」
1.義兄弟の必要条件
義兄弟とは、血縁の無い者が兄弟のような関係性を持つことで生まれる。鍵となるのは血縁が無いこと、本来なら関わりがないことで、つまり違いのある偽物でなければ義兄弟とはなり得ない。
そういう視点からすれば、例えばチノの希望校合格でココアが兼任することになる「姉」と「先輩」は別物にも関わらずよく似たもの、つまり義兄弟として見えてくる。
ならば千夜が姉兼先輩として頑張るためのマラソン大会の練習にココアがついてこられないのは当然の話で、姉として頼れないココアは姉の義兄弟である先輩としても変わらず頼れない存在のままなのだ（そういう存在だからチノとの今の関係が成り立っているわけだが）。
一方で今回の前編、千夜は変わる方の存在として新たな義兄弟を見つけていく。もともとリゼと千夜の容姿は少し似ているところがあるが、性格や運動の得手不得手は全く違う。しかし今回2人はそれぞれ違う動機を持ちながら一緒に練習するようになり、そのことが関係性を深めていく。リゼの言う戦友とはここでは義兄弟の同等表現だし、千夜はリゼ同様に髪型をツインテールにして大会に臨む（しかしあくまで義兄弟であるから、運動を続けるほど同じにはならないし髪もココアを牽引するために使われる）。
マラソン大会自体は本来、姉や先輩であることとは何の関係もない。しかし完走の自信は千夜の精神に大きな影響を与え、ひいては姉や先輩としてのあり方にも関わるだろう。マラソン大会と姉や先輩への変身は、千夜にとって義兄弟の関係にあるのだ。
2.義兄弟が示す、変化の中の永遠
後編の主役は打って変わって作家の青山ブルーマウンテンと担当編集の真手凛が務めるが、こちらも中心となるのは義兄弟関係だ。仕事に追われる普段と違って今回の青山はオフ日だが、いざ休みとなってもなかなか何をしたものか決められない。結果するのがココア達も交えた鬼ごっこ――鬼役を凛が務めるのであれば、内実は違ってもやることは普段の原稿の催促と変わらない。原稿の催促と鬼ごっこは義兄弟の関係にある。
原稿の催促と鬼ごっこと義兄弟性を先に利用するのは青山の方で、彼女はのらりくらりと追跡をかわす普段同様に凛を振り回す。凛は凛で普段の追跡と同じようなことをしてしまうから、間の悪さを最大限に発揮してしまって追いつけない。相手が義兄弟の関係性を利用するなら、対抗策になるのもまた別の義兄弟の関係性の利用だ。
うさぎのカルーセルは擬似的に時間を巻き戻し、現在と過去を義兄弟のように近づけてしまう。高校の時も凛は青山を追いかけ、間が悪くてもなんでも結局は追いついてきた。先輩と後輩から作家と編集に変わっても、実際のところそれは義兄弟のように変わらぬ姿を持ち続けている。逃げる青山の心は、本当はずっと前から凛に捕まっている。
そして、この2人の関係はココア達5人の将来の関係を示す義兄弟でもある。にぎやかな日常の中でも時間は流れているからいつまでも同じ関係ではいられないけど、変わる中でも近い関係を続けることはできるだろう。
時が流れても、何が変わっても、「義兄弟」の相似はずっと遍在する。ココアとチノという義姉妹もまた、姿を変えてもこれからも続く擬似的な永遠なのである。
感想
というわけでごちうさ3期の5話レビューでした。なんだかんだでコミカルさが勝っていた前半から、後半ラストで一気に感動へ持っていくのはズルい。完全に恋愛映画の文法だぞ！
しかしこの見せない下着、穿いてないのと義兄弟状態では。もっとスカート伸ばしていいのよ。
