偽物に可能性を見る――「ご注文はうさぎですか? BLOOM」4話レビュー&感想

 

f:id:yhaniwa:20201101161523j:plain

©Koi・芳文社/ご注文はBLOOM製作委員会ですか?
ココアの高校で文化祭の開かれる「ご注文はうさぎですか? BLOOM」4話、彼女のクラスの模擬店はまさかのビアホール……もちろん提供するのはビール風のジュース、偽物。そもそも模擬店自体が店の偽物でもあり、つまりこの4話は偽物があふれ出すお話
である。
 
 

ご注文はうさぎですか? BLOOM 第4話「あったかもしれない日常」

 

1.氾濫する偽物達

f:id:yhaniwa:20201101161541j:plain

©Koi・芳文社/ご注文はBLOOM製作委員会ですか?
当然の話ではあるが、文化祭は学校の常の姿ではない。限られた期間だけ現出する仮の姿、偽物と言ってもいい。そして場所そのものが偽物である以上、そこでは多種多様な偽物があふれることになる。最初に挙げたビール風ジュースはもちろんだが、帽子ではなくかぶりもののティッピーは巨大化した偽物だし、千夜にとっては模擬店の運営は甘兎庵の偽物。居心地のいい店は青山ブルーマウンテンにとって偽の仕事場になり、店員の服を着たばかりにリゼ達は店員の偽物を務めることになる。
文化祭がずっと続いてはもう学校ではないように、今回登場する偽物の大半はあくまで偽物でなくてはならないものだ。本物であっては困るものだ。
 
 

2.偽物だから見える可能性

f:id:yhaniwa:20201101161558j:plain

©Koi・芳文社/ご注文はBLOOM製作委員会ですか?
しかし偽物にはむしろ偽物だからできることがある。ビアホールは本物では未成年お断りになってしまうし、千夜にとってこの偽の店舗経営はいずれ本当に社長になった時のための大きな財産になった。ティッピーのかぶりものは帽子ではなくかぶりものだからチノは積極的に話ができるようになるのだし、転入などと面倒な手続きをせずとも制服だけの偽者としてならリゼ達もこの学校の生徒になれる。
 
そして何より大きいのは、文化祭がチノにとっては「学校説明会の偽物」になったことだろう。偽の店員として過ごすことが、擬似的にでもこの学校の一員になったことが、チノにこの高校への進学を想像させた。文化祭は「この学校に進学した時に過ごす日々の偽物」をチノに味わわせ、それがチノの進学先という本物を決定したと言える。
 

f:id:yhaniwa:20201101161610j:plain

©Koi・芳文社/ご注文はBLOOM製作委員会ですか?
本物だけ、現実だけを見る日々は味気ない。叶わないこと、あったかもしれないこと、あるかもしれないこと。そういうことを想像してこそ人は未来に進むことができる。
誤解や思い込みも含め、人は偽物の中にこそ可能性を見るのだ。
 
 

感想

というわけで、ごちうさ3期の4話レビューでした。ココアのクラスメイトの個性あり、4人のあったかもしれない世界あり、チノの進路決定と盛りだくさんの内容でした。マヤとメグが偽物の非難でチノの選択を祝福してあげるのが、偽物の持つ優しさをよく象徴してくれていたように思います。一緒にいられなくなるのは寂しかろうに、いい子達だ……
 
 

f:id:yhaniwa:20201101161648j:plain

©Koi・芳文社/ご注文はBLOOM製作委員会ですか?
駄目だ、委員長がエプロンかけて味噌汁作ってる将来の可能性しか見えない。