移り変わる季節と変わらぬ幸せを交差させる「ご注文はうさぎですか? BLOOM」、7話の舞台はハロウィン。木組みの家と石畳の街にカボチャの色彩が加わるように、今回の話はいくつもの混ざり合う奇跡が描かれる。
ご注文はうさぎですか? BLOOM 第7話「今夜は幽霊とだって踊り明かせるHalloween Night!」
ハロウィンがやってきた!ラビットハウスも特別営業で、ヴァンパイア姿でお出迎え。マヤとメグはトリック・オア・トリートと言いながらフルール・ド・ラパンや甘兎庵も訪ねます。街には仮装した人々が集まって賑やかです!
(公式サイトあらすじより)
1.ハロウィンはマジックアワー
仮装イベントとしての色彩を持つハロウィンの間は、人も街も装いが普段と違うものが混ざる。カボチャの溢れる街や、変装して「トリックオアトリート」を楽しむ人々……賑やかなそれらが見られる時間はごく限られている。例えるならそれは、日没前や日の出後のわずかな時間だけ現れるマジックアワーのようなものだ。
わずかな時間だからこそ普段は見られない混ざり合いが許され、特別が特別でなくなる。むしろ自分からトリックしにいくココアや魔女の館と化す甘兎庵、そこで一時的に手伝うマヤとメグなど前半には特に混ざり合いがあふれている。チノに代わって千夜を加えた新・千マメ隊などはいっときの冗談だから存在を許される分かりやすい例だろう。そういう時限が示されたことで、後半はマジックアワーを更に奇跡の時間へと変えていく。
2.生者と死者、本物と偽物の混ざり合う時
「ハロウィンて、本来は死者の魂が戻ってくる日よね」「仲間だと思わせるために、冥界の仮装をする」
後半、街が仮装にあふれる中での千夜とシャロの言葉は示唆的だ。本来、死者が現世に蘇ることはあってはならない。けれど生者が仮装し、死者と見分けのつかなくなった街ならば蘇った死者の魂も目立たずに済む――それと知らず混ざり合うことができる。
もしはぐれていなければ、ココアはチノに似た雰囲気の女性と出会うことはなかったろう。皆が一緒にいる時に遭遇すれば、チノはきっとそれが誰だか気付いてしまう。手品があくまで魔法のように不思議なものでなければいけないように、ティッピーが祖父なのが秘密であるように、死者が生者と混ざっていることは知れてはならないのだ。
しかしハロウィンというマジックアワーはやがて終わる。チノがティッピーを抱きしめずにいられないのは、ハロウィンと同時には消えないと言われてもずっと一緒にはいられないのもまた確かだからだ。いつかは魔法は解けてしまうからだ。
「チーノちゃん! お姉ちゃんが習いたての魔法を見せてあげよう」
ココアはチノのそんな不安を知る由もないけれど、まるでチノの母親のように同じ手品を披露してみせる。魔法のようなそれが本当は手品であることをチノは知っている。けれどそれが偽物の魔法であると知っているからこそ、彼女は母にそれを見せてもらった幼き日のように元気を取り戻せる。魔力だとか霊魂だとかそういったものとは違う、偽物だからこそ本当にチノを魔法にかけてしまう力がそこにある。
マジックアワーはまだ終わらない。混ざりあった偽物の姉妹の日々は、まだ続くのだ。
感想
というわけでごちうさ3期7話のレビューでした。「手品」「魔法」「マジックアワー」なんかのキーワードは早々に浮かんだのですが、前半をひとくくりにする「混ざり合う」がさっぱり浮かばず書けなかった次第。昨日のアニガサキのレビューといい、まじめに思考力の枯渇を心配した方がいい気がする。
美術が毎度素晴らしくきれいな本作ですが、今回はカボチャの黄色い灯りがマジックアワーとしての空間を引き立てていて特に素晴らしかったです。「お姉ちゃんが習いたての魔法を見せてあげよう」の時のココアの芝居がかった歩き方も、彼女がチノを喜ばせることにナチュラルに全力投球なのが伝わってきました。
できればラパン千夜の脚線美をもっと見たかった。