往復する内面と外面――「おちこぼれフルーツタルト」7話レビュー&感想

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©浜弓場 双・芳文社/おちこぼれフルーツタルト製作委員会
人気も嗜好もおちこぼれなアイドル奮闘記「おちこぼれフルーツタルト」、7話冒頭、衣乃ははゆが相変わらず子供パンツを履いているのを目にして下着を買いに行こうと提案せずにいられない。下着は着用者そのものではないが、その選択には趣味や意気込みといったものが現れる。内面は外面に現れるものなのだ。
 
 

おちこぼれフルーツタルト 第7話「とります!おといれ?」

 
ある日、はゆの子供パンツを偶然目にしてしまった衣乃の提案で、下着を買いに行くことになったフルーツタルト。来たる レコーディングに向けて気合を入れる為、思い思いの勝負パンツを選んだ一同は、その値段と自分たちの経済状況の差に落胆する。そんな時、姉のロコが勝負パンツを購入すると耳にし、合流したチコがフルーツタルトのメンバーにアドバイスを贈るのだが……。
 

1.外面から変わる内面

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©浜弓場 双・芳文社/おちこぼれフルーツタルト製作委員会
内面は外面に現れる。はゆが高校生にもなって子供パンツを穿いているのは必然で、そこにあるのはメンバー中もっとも精神的に幼くもっとも純真な彼女の魂そのものだ。なおかつその子供パンツすらボロボロなのは、けしてグラマラスとは言えない自身の体型へのコンプレックスの裏返しとも言えよう。
 
しかし内面が外面に現れるのなら、外面を整えることは内面を整えることにも繋がるということだ。ちょっと背伸びした何かを身につけることは、結果的に心の背伸びも促す。試着室で「はゆ、もう子供じゃないもん」とひとりごちるはゆの心は、確かに大人の階段を一歩上っている。衣乃と色違いの下着を選んだことも、自分と同じように選んだへもに対抗意識を燃やすのも、彼女の自意識に何がしかの変化を生んでいくことだろう。
 
 

2.内面から変わる外面

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©浜弓場 双・芳文社/おちこぼれフルーツタルト製作委員会
内面と外面には密接な関わりがあり、外面を変えることは確かに内面の変更にも寄与する。しかしそれはあくまで半面であり、外面だけで全てが変わるわけではない。制服を来てもリリは学生ではないし(それがいい)、姿が見えなくともリリがいる時点でロコはクリームあんみつがスタジオにいることに気付いている。内面からの変化が無ければ、外面もまた本当に変わることはないのである。
 
衣乃達がレコーディングに苦戦するのはカツ丼や勝負下着だけでは内面までは変えられていなかった証であり、緊張などに打ち勝てていないことの外面的現れだ。だから内面を変えれば、それをきっかけに外面も――つまりこの場合は歌声も変わることができる。「自分の好きなことを考えながら歌ってみる」というのはチコのでまかせ的アドバイスに過ぎないが、衣乃達の内面は確かに変わることができた。緊張なり声量なり上手い下手以前の問題だった衣乃達は、低くとも確かにハードルを越えることができたのだ。
 
 
衣乃達はまだまだ、内面も外面も未熟だ。相手を思いやった下着購入の誘いもその表現(外面)は変態的になりがちだし、しっかり外面化できた歌も内面ゆえにやたらねっとりしていて結局リテイクをくらう。どちらも上手くはできない、おちこぼれだらけのフルーツ少女達。けれどタルトの上ならば不揃いも不思議な調和を生んで、一つの食べ物としての美味に繋がる。賑やかでちょっと過激な日々の中、それでも少しずつ衣乃達は前に進んでいるのだろう。
 
 

感想

というわけでおちフルの7話レビューでした。はゆが純朴過ぎてお色気ありの世界で見るのが申し訳なくなってくるレベル。成長が見たいようなずっとこのままでいてほしいような、これは真性のロリコン(≠ペドフィリア)発生装置では…… チコのシスコンぶりもだいぶ脆さが出てきた感じで面白かったです。
 
さて、次回はカレー作り回。ライブやレコーディングとはまた違った一体感が求められそうですが、はたしてどんなドタバタが。