心の霧を晴らして――「ストライクウィッチーズ ROAD to BERLIN」8話レビュー&感想

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©2020 島田フミカネKADOKAWA/第501統合戦闘航空団
ベルリン奪還へ一歩一歩を踏みしめていく「ストライクウィッチーズ ROAD to BERLIN」。8話でサーニャとエイラは濃い霧に包まれる。ネウロイが発するその霧は、もちろんただの霧ではない。視界に限らず多くのものを遮る霧だ。
 
 
哨戒任務中のサーニャとエイラが遭遇したネウロイは、自ら霧を出してその中に隠れる厄介な能力を持っていた。
そのネウロイによって、次の戦略目標だったキール軍港は深い霧に包まれてしまい、ベルリン奪還作戦の進展に支障が生じてしまう。
この事態に対し、サーニャは自らの索敵能力を使ってネウロイを探し出す作戦を立案。
「絶対に成功させます、ミーナ中佐」
彼女はエイラ、宮藤、服部と共に、深い霧の中へ入っていくのだが…。
 

1.未来を覆う霧

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©2020 島田フミカネKADOKAWA/第501統合戦闘航空団
ネウロイの発した霧は、キール周辺を包んで視界を効かなくしてしまう。オペレーション・サウスウインドの橋頭堡となるキールが霧に包まれることは作戦そのものが霧中に陥ることであり、故に軍上層部は無差別攻撃でキールを手中に収めようとするわけだが――ミーナやバルクホルンにとっては、その先にあるのもまた霧だ。港湾機能修復を待って作戦が春を過ぎれば、2人は二十歳になり魔法力の限界が始まる恐れが出てくる。念願のベルリン奪還作戦の時に戦えるかもしれない、戦えないかもしれない。霧の中というのは、先がないのとはまた違った焦りを生むのである。
 
 

2.心を覆う霧

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©2020 島田フミカネKADOKAWA/第501統合戦闘航空団
サーニャ達は霧を発するネウロイを撃破するためキールへ向かうが、彼女達が遭遇するのもやはりまた霧だ。探知能力に反応しないから敵はいないと主張するサーニャと、予知で感知したから敵はいると主張するエイラはいつになく意見が分かれてしまう。神の視点に立てる私達にはエイラの方が正しいとなんとなく理解できるが、実際のところ事実が見えていないのは、霧の中にいるのはサーニャだけではない。
エイラは目をつぶっていてもミリ単位で位置が分かるほどサーニャを理解しているが、サーニャがなぜ疲労を押してまで探索し作戦成功に固執するのか見えていなかった。サーニャのことは見ていても、サーニャの見ているものまでは十分に見えていなかったのだ。霧の中にいたのだ。
だからサーニャがミーナ達に残された時間の少なさを思いやったこと、同じく故郷を奪われた自分の思いを重ねていたことを知ることでエイラは霧から抜け出すことができる。あれこれと悩むのでなく、行動に移せるのだ。
 
 

3.霧の先の光明

エイラに比べ、サーニャの入り込んだ霧はもう少し深い。それは言ってみれば「見えない霧」だ。霧の中にいることすら気付けない、そんな霧だ。事実彼女はネウロイの罠にまんまとかけられながら、霧の中にいることに気付いてすらいなかった。自分は探知波で正しく敵や状況を見ることができているとうぬぼれていたのだ。探知していたのが単なる子機に過ぎないと知った時、彼女は初めて自分が霧の中にいると認識したのである。
けれどサーニャは自分が誤っていたことと同時に、「エイラが正しかった」こともまた認識した。その一点において、彼女は確かに霧から抜け出してもいる。
 
サーニャとエイラ、2人が共に霧の中へ抜け出す道を見つけたなら、その先には光明がある。ネウロイサーニャの探知波でも見つけられないなら、見つけられるようにしてやればいい。未来予知で探ったコアの将来位置にエイラが掴まれば、サーニャは探知波で正確にそこを狙うことができる。エイラの正しさを見つけられたサーニャなら、彼女を信じてそれができる。エイラとサーニャを仲違いさせた霧を操るネウロイだが、その撃破が関係を修復したことを考えれば、親機の形状がまるでヒンメリ(幸運のお守り)のようだったのは必然だったのかもしれない。
 

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©2020 島田フミカネKADOKAWA/第501統合戦闘航空団
かくてキールは無傷で奪還され、サーニャにプレゼントを贈ろうとしたエイラは逆に自分の方がプレゼントをもらう。今回の敵の分析について正しかったのはエイラの方だったが、彼女だって全てを見通せるわけではない。1人で全ては見通せないからこそ、生きることには苦悩も驚きも喜びも生まれるのだ。
 
 

感想

というわけでストパン3期8話のレビューでした。今回は割とオーソドックスな読み解きになったな。珍しい意見の食い違いからのちょっと背丈に差のある見つめ合い、手を繋いでの飛行と、終わりイチャイチャなら全て良し感ある。いや、いい。
色々な意味で終わりが近づいているのを感じる回でしたが、さて次回のミーナ回やいかに。