その空は1人じゃない――「ストライクウィッチーズ ROAD to BERLIN」9話レビュー&感想

f:id:yhaniwa:20201204015102j:plain

©2020 島田フミカネKADOKAWA/第501統合戦闘航空団

 
ベルリン奪還へ、二歩下がっては三歩進みを繰り返す「ストライクウィッチーズ ROAD to BERLIN」。9話ではロケット型ネウロイ迎撃のため、ミーナが1人特殊なストライカーユニットで飛ぶ。今回は「ミーナの空」は1人飛ぶものなのかと問いかけるお話だ。
 
 

ストライクウィッチーズ ROAD to BERLIN 第9話「ミーナの空」

 
キール軍港を拠点に、いよいよ動き出すベルリン奪還作戦。
だが、それを察したネウロイはベルリン上空の巣《ウォルフ》から強力なロケット型ネウロイを撃ち込んでくる!
超高速で飛行し着弾時には音速すら超えるネウロイに対し、現状のストライカーでは有効な対抗策が見当たらず、希望を失いかけるミーナたち。
その時、「新作を持ってきました」とウルスラが現れる!

 (公式サイトあらすじより)

 
 目次
 

1.コメートに自分を託して

f:id:yhaniwa:20201204015327j:plain

©2020 島田フミカネKADOKAWA/第501統合戦闘航空団
9話冒頭で描かれるのは、作戦会議でキールに向けて飛ぶカールスラント組の3人だ。ミーナ、バルクホルン、ハルトマン……形は違えどベルリン奪還に特別な意味を抱く、連帯を強く感じさせる3人。しかしその飛行のさなか、ミーナは苦しげに飛び2人から遅れる。見方を変えればこれはミーナが「1人になりかかっている」とも言えるだろう。魔法力の衰えはほぼ全てのウィッチのさだめだが、同時に起こるわけではない。魔法力を失う時はウィッチがウィッチでなくなる時、そこから外れて1人になる時なのである。
 
1人になるのは寂しく辛い。既に501を外れた坂本にしても、かつて涙したのは1人ではなく11人の中にいたいからだ。しかし魔法力の衰えを感じたミーナが進んだ道はむしろ、積極的に1人になることだった。
圧倒的な加速を誇る敵のロケット型ネウロイに対抗できるのは特殊なストライカーユニット・ME-163コメートただ1機で、それを短時間で機能させられるのも空間把握の固有魔法を持つミーナのみ。魔法力の衰えは明かさず、食事も皆と共にしない。少人数でネウロイの巣近くまで潜入する危険な作戦にしても、できれば1人で行きたいくらいだったろう。すさまじい加速性能・トップスピードを持つ代わりに燃料の少ないコメートと今回の作戦は、ウィッチとして生き急ぐミーナの思いを具現化したような代物だったのだ。
 
 

2.その空は1人では飛べない

 
ウィッチはウィッチでなくなった時、そこから外れて1人になる。ミーナはそのさだめに従い、ウィッチとしての命を燃やしつくさんばかりに1人駆けていく。だが、彼女が1人になることを仲間達は許さなかった。隠してもバルクホルンは魔力の衰えに気付いて同行を決めるし、トラックの運転やコメートの整備にはエーリカやウルスラが要る。
1人のようでそうでないのは敵ネウロイも同様で、6話の強敵ネウロイは1体ずつ現れても1体しかいないのではなかったし、1発ずつ放たれたロケット型ネウロイも最終的には多数の姿を現した。高い高い場所へ飛ぶウィッチは1人であっても、それは孤独とは少し違うのだ。
 
だから戦えるのがミーナだけであっても、それは彼女が皆を置いていっていいわけではない。作戦遂行のためであっても、他に手段がなくても約束を破っていいわけではない。それは彼女が皆を裏切ることだし、同時に皆に預けたはずの自分を裏切ってしまうことにもなるのだから。
一個人であることは、集団内においてこそ成立する。ミーナは1人でミーナたり得ているわけではないのだ。普段の冷静さも時には仲間になだめられてこそ取り戻せるし、年長らしさはエーリカのような幼さを前にしてより発揮される。
 
 

f:id:yhaniwa:20201204015341j:plain

©2020 島田フミカネKADOKAWA/第501統合戦闘航空団
 
バルクホルン「馬鹿野郎!必ず帰るって約束しただろ!一緒にベルリンでお茶するって言っただろ!後はお願いってなんだ!?……そんな命令、ふざけるなよ!」
 

f:id:yhaniwa:20201204015400j:plain

©2020 島田フミカネKADOKAWA/第501統合戦闘航空団
喜びも悲しみも、時にはすっぽんぽんになってしまうバカバカしい出来事も含めて共にする仲間がいることは、ウィッチであるかどうかとは関係ない。いずれ魔力が尽き501から外れるとしても、ミーナは孤独ではない。ミーナの空はけして1人ではないし、1人では飛べないものなのだ。
 
 

感想

というわけでストパン3期の9話でした。バルクホルンがいるとこういう話は際立つなあ。成長を見せつつ6話同様思いっきり感情を震わせもする、人間的に好き。眼鏡っ娘ハルトマン・ウルスラの頼りになるのにズレてるところもお話の重量を上手い具合に整えてくれるこの味わい。
「いや死なんでしょ」とは思いつつ挿入歌に涙腺を刺激される、シンプルさの光る良い話だったと思います。
 
残り3話、最後は3人が笑顔でお茶してるところが見たい。次回も楽しみです。