アブノーマル揃いの（少）女達の奮闘を描く「おちこぼれフルーツタルト」。デビューシングルの発売イベントが描かれる9話は、歌が好きで重ねてきた利音の努力が物販の売り子として活かされるところから始まる。目指した方向そのままが成功とは限らない、今回はそんなお話だ。
おちこぼれフルーツタルト 第9話「りにょうさよう！」
遂に完成したフルーツタルトのデビューシングル！だが、ネズミ荘に山積みのダンボールで届いたその数、なんと3千枚！あまりに多い数にたじろぐ一同。そして、その発売ライブは都内でなく穂歩の地元の大宮だと言う…。不安を隠しきれないメンバーに、穂歩が売り子として用意した助っ人はなんと衣乃の同級生、本町利音だった！
（公式サイトあらすじより）
1.まっすぐ進むのは難しい
まっすぐ目標に向かうことはなかなか難しい。最短距離は人気があるから人に先を越されることが珍しくないし、それを補おうとすればお金も必要になってくる。ましてや、ネズミ荘とその周りにいるのはすぐ自分の欲望に走る人間ばかりなのだからなおさらだ。穂歩は接待を名目に1人美味しいものを食べるし、利音による衣乃達の物販指導もともすれば胸や握手時間延長と言った方向に走ってしまう。
利音「カレーの歌……なんで？」
象徴的なのはデビューシングルのカップリング曲で、「タルトなキモチ」のカップリングが「目指せ！カレーNo.1！」というのは「フルーツタルト」としては完全に脇道に入ってしまっている。これまでの話からも明らかなように、まっすぐな道、王道サクセスストーリーからすぐに外れてしまうのは衣乃達の宿命なのだろう。
2.「おちこぼれ」だからこそのまっすぐへの道
まっすぐ進めないことはもちろん、損だし弱点だ。衣乃達は会場に向かうのも車に乗せてもらえないし、はゆは勝手に抱き枕カバーを作られた怒りを「清純にかわいくできてる」「ホントにそこそこ人気ある」と言われればチョロくもごまかされてしまう。衣装の管理すらまともにしてもらえないあたり、「おちこぼれ」の彼女達にまっすぐな道はどうも縁がない。
しかし冒頭の利音が合唱部での経験を売り子のスキルに変えて満足しているように、まっすぐ進むばかりが道ではない。というより、まっすぐ進めない時の方が世の中にはずっと多いはずだ。ならば、そんな時にまっすぐに近づく方法こそ人には必要なのではないか。
衣乃「だからきっと、このドキドキは素敵なドキドキなんだと思うんです」
初ライブで緊張してドキドキしてしまうへもに、つまりまっすぐな道から外れてしまった彼女に、衣乃はドキドキを抑えるようには言わない。むしろドキドキを肯定的に捉え直して彼女を立ち直らせる。それは屋外でするにはとても恥ずかしい言い草だし、へもの衣乃好きをいっそうこじらせてしまう――道から外れさせてしまうけれど、おかげでへもは立ち直った。そうしてフルーツタルトが披露したライブは、オーラすら放つ素晴らしいものになった。おちこぼれでまっすぐな道からは外れたはずの衣乃達の歌は、観客の心にまっすぐ刺さった のである。
人は目指した道へまっすぐにばかりは進めない。けれど時には、外れた道から更に外れることでまっすぐ進める場合もあるのだ。
感想
というわけでおちフルの9話レビューでした。目隠し棒を素人ものの目隠しに見立てるのやめーや。穂歩が道を外れてかわして外れてかわして結局は「マジ説教」に帰ってくるのはまあ妥当、一度正座して説教された方がいいと思います。
あと漏らしたの漏らさないのと屋外でする会話と違うよね、という疑問を消し飛ばす感動のシーンから「屋外だからね」とツッコミが入る展開も妙に心得た感じでツボに入りました。
さてさて、次回はライブ後半戦。カップリング曲の方は打ち合わせ不足なんじゃないかと不安もありますが、果たして。
衣乃の笑顔はもちろんかわいいが、それに照れてるはゆはもっとかわいい。
