偽者だから見えること――「ご注文はうさぎですか? BLOOM」9話レビュー&感想

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©Koi・芳文社/ご注文はBLOOM製作委員会ですか?
少女達の大切なものを見つめ直す物語としても味わい深まる「ご注文はうさぎですか? BLOOM」。9話の始まりは幼き日の千夜の回想から……だが、後に分かるようにこの回想では肝心な部分が欠落している。外側が同じでも不可欠なものが抜けているならそれは別物、偽物にも等しい。今回は千夜そしてリゼを通して、偽物だからこその視界を見せてくれるお話だ。
 
 

ご注文はうさぎですか? BLOOM 第9話「やきもち風味のカモミール

 
生徒会長候補に千夜が選ばれた!
選挙に向けて演説原稿を書いたりポスターを用意したりと、準備が始まります。
けれど千夜はそわそわとして、何かを探しているようなのでした。
そんなとき、街でリゼに出会います。

 

 
 
 

1.偽者だから知れること

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始まりこそ千夜からだが、今回前半で偽物として先に動くのはリゼの方だ。もうすぐ大学生になるから大人っぽくイメチェンしてみたい、という彼女の願望は現状から背伸びした偽者の自分になってみたいという願望であり、千夜のコーディネートによりそれは見事に成功する。しかしあまりに上手くできたコーディネートはココアやチノからすれば「リゼである」という肝心な部分が抜けてしまうほどで、紆余曲折あってリゼはリゼの代役・ロゼとして――つまり偽者としてラビットハウスで働くことになった。
 
偽者ロゼとして振る舞う中で、リゼはリゼのままでは知れなかったことを知る。バイトの機会が減ったのをチノが寂しがっていることであったり、ココアは自然体のリゼがとても好きなことであったり、背伸びした格好もけして似合わないわけではないことだったり。そして何より重要なのは、リゼが自分自身の思いを知ることができたことだろう。
 

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リゼ「すまない、気付かれないのが寂しくて確かめるようなことを……」
 
心理戦うんぬんなどともったいぶってはみたけれど、リゼがココア達に自分から正体を明かさなかった理由はとてもシンプルなものだった。前回もそうだが、最年長としてのリゼの大人っぽさにはどこかいびつな部分があって、年相応に(あるいはこれまでできなかった分、年齢以上に)子供っぽくなることでこそその欠落は埋められる。自分を欠落させたロゼというに偽者になることで、リゼは大人になるために口調や服装よりも必要なものを得ることができたのだ。
 
 

2.偽者になってしまうから分かる価値

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リゼに続き後半で偽物になるのは千夜だが、彼女の場合それは2つの要素にまたがる。
1つは生徒会長。まだ当選したわけではないのにその時のあれこれが語られる状況は、偽物の生徒会長になったようなもの。
もう1つは大切な王冠をなくしてしまったことからの様子のおかしさ――つまり「普段の千夜の偽者」になっていることだが、こちらの方はシャロ以外は気付かない。接客ではぴったり息が合うことからもけしてココア達との仲が不十分ということはないけれど、やはり千夜にとってシャロは特別な存在なのだ。
偽者の生徒会長になって、偽者の自分になって、しかしそこにある欠落こそは千夜に大切なものを思い出させてくれた。
 

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千夜「この王冠と一緒。大切なものはすぐそばにあるのに、見えなくなってた」
 
大切なものはすぐそばにあるからこそ見落としがちで、誰もがそれを簡単に偽物にしてしまったり、自分自身偽者になったりする。けれど容易く見落とすからこそ、時には偽物になってしまうからこそ、人はそれを見つけ直して価値を識り直せるのである。
 
 

感想

というわけでごちうさ3期の9話レビューでした。だいぶ遅くなってしまいました、すみません。これまでの話でも「偽物」という言葉を多用してきましたが、それが今回の千夜と結びつくのかだいぶ悩んでこうなった次第。「王冠は偽物である」という感じでも書けそうな気もしますが、ちょっとまとめられませんでした。
 
シャロとの友情はもちろんのこと、チノの推薦状に爆発しそうになっている様子など千夜の魅力たっぷりの回でした。進路じゃなくても別れの危機はあるもので、そのあたりを乗り越える姿を見せてくれた回だったのだと思います。
 

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生徒会長当選おめでとうございます!