バラバラの可能性――「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」10話レビュー&感想

9人それぞれの物語を終え、新たなステップを踏み出す「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」。10話は合宿回だがその場所はいつもと同じ学校だし、楽しく遊びもする様子はある意味普段どおり。変化と不変のどちらが大きいかは、人によって意見の分かれるところだろう。今回はそうした分かれる意見の光と影がぼんやり姿を現すお話だ。
 
 
 
一学期が終わり夏休みを迎え、同好会ではこれからのことを考えて合宿を行うことになった。翌日からの練習に備えて休むつもりが初めての合宿に浮かれ気分の一同。そんな中、侑はやりたいことを見つけていくみんなをどこか羨ましく思っていた。その夜、音楽室で1人ピアノを弾いていた侑の元に訪れたせつ菜から、いつか侑さんの大好きを応援させてほしい、と励まされる。そこへ偶然通りかかった歩夢は笑顔で話す2人に声をかけることができなかった。
 
 
目次

1.バラバラから可能性が生まれる

最初に述べたように、今回の合宿の舞台は学校だ。自由な校風と専攻の多様さで人気の虹ヶ咲学園は、これまでも校舎に留まらない姿を見せてきた。例えば様々な部室を抱えるワンダーランド。例えば猫の住処。例えば優木せつ菜の復帰ステージ。一口に学園と言ってもそこには無限の如き変化の可能性が秘められていて、だから合宿の舞台としても十分な資格を持つ。いや、同好会の皆にはそれを引き出す力がある。
 
「皆、ホントにバラバラだね」
 
侑が言うように、合宿の目的であるライブにしても同好会メンバーの求めるものはバラバラだ。メチャかわパワーでメロメロにしたい、ダジャレぶちかましたい、大好きを叫びたい……そのバラバラは彼女達がライブから引き出した可能性であり、逆に言えばライブという一点だけは外していない。同じものを見ても人が考えることはそれぞれ違うからこそ、そこに可能性が生まれるのだ。
 
 

2.可能性はスクールアイドルだけのものではなく

そして今回は、ここ数回は物語の中心からは一歩引いていた侑にスポットライトが当たる。同好会の一員でありながらスクールアイドルではない彼女の立場は独特なもので、つまり同じものを見た時に異なることを考える可能性をもっとも秘めている。そして逆に言えば違いはそれだけであり、歌うことも踊ることもなくとも彼女が「虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」の一員であるのは紛れもない事実。かつて侑と邂逅した音楽室でしかし異なる時間で、せつ菜の言葉はそれを証明してくれる。
 
「侑さんからは、そんな風に見えてるんですね」
「いつか侑さんの大好きが見つかったら、今度は私に応援させてください」
 

 

侑はスクールアイドルではないが故にスクールアイドルに新たなものの見方を提示できたが、それはスクールアイドルでない侑にスクールアイドルだからこそ提示できる新たなものの見方があるということでもある。ライブに対し皆が考えた「バラバラの可能性」は、けしてスクールアイドルだけのものではないことを侑はせつ菜に教えてもらったのだった。
 
 

3.可能性があるから、人はすれ違う

しかし同じものを見てもそれぞれ違うことは、けして喜びばかりを連れてきてくれるわけではない。歩夢は幼馴染として侑とずっと一緒に過ごしてきた。スクールアイドルの夢を一緒に見てほしいと頼んで、これからも「2人一緒に」いられると思っていた。
けれど、侑の考える一緒は「みんな一緒に」へと広がっていた。
侑の考えが好ましいものなのは間違いない。反対する理由はどこにもない。しかしそれは、歩夢の考えていた「一緒に」とは違う。
 
人は同じものを見たとしても、同じように見ている・・・・・・・・・とは限らない。例えば同じアニメを見ても、感動する人もいれば嫌悪する人もいるように。例えば作品から同じメッセージを受け取ったとしても、それを自分の考えにどう反映するかは全く違うように。
「バラバラの可能性」は人が個々人を尊重する上で絶対に避けて通れない、諸刃の剣なのである。
 
 

感想

というわけでアニガサキの10話レビューでした。誰か1人にスポットライト当てるこれまでとは異なるため戸惑いましたが、侑の役割がとても大きいものになってきそうですね。10人目なのですから、考えてみれば納得の展開。
せつ菜と侑の抱擁はアクシデントなのだけど、歩夢の知らない侑の存在を示す意味では誤解ではないし、恋愛でないのに恋愛のような描写も確かに三角関係ゆえのものでもある。合宿でのワイワイした描写やデザートを出すかすみと璃奈なども含めて「バラバラの可能性」に満ちた回だったと思います。
侑と歩夢の関係だからこそ描けるものがどんなものなのか、次回も目が離せません。
 
あと、この水着を着たギャップある感じの中川菜々が見たいです。