鏡は同じものを映さない――「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」2期1話レビュー&感想

トキメキ新たに「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」。2期1話では短期留学生の鐘嵐珠(ショウ・ランジュ)を始めとした新たなキャラクターが登場する。今回は嵐珠の役割について書いてみたい。
 
 
無事スクールアイドルフェスティバルをやり遂げた同好会のメンバーたちは、みんなの期待に背を押され、早速第2回のフェスティバルを企画していた。きたる虹ヶ咲学園のオープンキャンパスで告知PVを公開しようと同好会が盛り上がるなか、音楽科へ転科したばかりの侑は、編入者向けの補習に悪戦苦闘。音楽科と同好会の二足のわらじで忙しい日々を過ごしていた。一方その頃、オープンキャンパス実行委員の三船栞子のもとに一通のメッセージが届く。そしてオープンキャンパス当日、鐘嵐珠(ショウ・ランジュ)とミア・テイラーが留学生として、虹ヶ咲学園へやって来た。
 

1.純度の高いスクールアイドル・鐘嵐珠

嵐珠「スクールアイドル・鐘嵐珠のデビューステージよ。伝説の始まりを心に刻みなさい!」
 
1期から15ヶ月を経て2期開始となった「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」。新たに鐘嵐珠(ショウ・ランジュ)、ミア・テイラー、三船栞子と3人のキャラクターが姿を見せているが、1話で台風の目となっているのはもちろん、挿入歌「Eutopia」を披露する嵐珠だ。スクールアイドルをやるために香港から短期留学する行動力、自信に満ちあふれた言動、それを裏切らない圧巻のパフォーマンス……予定になかったライブを苦もなくこなしてみせる点も含め、嵐珠は物語の開始時点で完成形に達している。一言で言えば彼女は「純度の高いスクールアイドル」であり、虹ヶ咲のスクールアイドル同好会に籍を置くのは当然のように思えるが――同好会の実情を見た彼女の選択は、入会ではなく個人での活動であった。
 
嵐珠「アイドルがファンに夢を与えるのは素晴らしいことよ。でも、与えるだけでいい。誰かに支えられなきゃパフォーマンスもできないアイドルなんて情けないわ」
 
嵐珠の考えるスクールアイドルとファンの関係は、スクールアイドルがファンに夢を与えるもの。同好会の面々のようにファンに支えられてパフォーマンスするなどというのは、彼女の感覚からすれば「純度が低い」のだ。スクールアイドルへの情熱に燃えるが故に相容れない嵐珠はスクールアイドル同好会とは対照的で、文字通りライバルと呼ぶに相応しい。だが、彼女が対照的なのはけして同好会に対してだけではない。
 
スクールアイドル同好会と対照的な嵐珠と相対あいたいするもう一人の存在。それは誰あろう本アニメの中心人物、高咲侑である。
 
 

2.高咲侑と鐘嵐珠

侑「わたしはスクールアイドルじゃないよ」
 
アニメ「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」オリナルキャラクター・高咲侑。同好会の上原歩夢の幼なじみであり1期の終わりでは普通科から音楽科に転科、今は音楽の練習に悪戦苦闘中の高校2年生。彼女と嵐珠が対照的、ライバルだというのは一見すると奇妙な話だ。嵐珠が極めてスクールアイドルらしいスクールアイドルなのに対し、侑はそもそもスクールアイドルですらない。どちらが観客を呼べるか勝負をするなどといった展開は考えられないし、故に競うフィールドすら物語の上には現れないだろう。しかし二人が対照的なのは、あるいは共通しているのは、むしろその接点のなさにこそある。
 
嵐珠「え?どうしてスクールアイドルじゃないのに同好会にいるの?」
 
侑はスクールアイドル同好会では極めて特異な立場にいる人間だ。籍は同好会に置いているが自分がスクールアイドル活動をするわけではなく、さりとて幽霊部員というわけでもなくむしろ会の活動には極めて積極的。初めて同好会を訪れた嵐珠が彼女をいぶかしがるのは当然の反応だろう。侑は傍目から見れば同好会にもっとも相応しくなく、しかしもっともなじんでいる"異物"なのである。そしてこの特徴はひっくり返せば実は嵐珠にそのまま当てはまるもの――つまり対照的なものだ。なにせ侑と逆に同好会にもっとも相応しく、しかしもっともなじまず籍を置かなかったこれまた"異物"こそが嵐珠なのだから。
 
嵐珠「あなた歩夢ね!会いたかったわ!」
 
対照的であること、つまり正反対であることを念頭に置いた時、侑と嵐珠の接点のなさは逆に強い関係性を帯びてくる。歩夢から好かれているのが侑なら歩夢が好きで思わず抱きついてしまうのが嵐珠だし、夢を叶えるため以前の生活を捨ててきた(香港から短期留学してきた)のが嵐珠なら夢を叶えようとしながらも以前の生活を捨てようとしない(転科した音楽科での授業をしつつ同好会に所属し続けている)のが侑だし、それを文句なしにこなしているのが嵐珠なら赤点を取ってしまうほど上手くいっていないのが侑……二人のフィールドは直接的な競争とならないよう巧妙に配置されつつ、しかし間違いなく対照的な関係にある。侑と嵐珠は確かにライバルであり、すなわち"鏡"の関係にあるのだ。
 
 

3.鏡は同じものを映さない

嵐珠「あたしはスクールアイドルにトキメキを感じて、やりたいと思ったからここまで来た。でもあなたの夢はスクールアイドルじゃないのよね、だったら同好会を離れてその夢を真剣に追い求めるべきよ」
 
鏡というのは便利なものだ。そこに映った自分の姿を見ることで私たちは寝癖や服装などをチェックし整えることができる。だが、鏡に映っているものは本当は私達と全く同じものではない。映っているのは左右や向きが逆になった――つまり正反対のものだ。鏡に映るものが左右全く同じであれば私達はかえって混乱するであろうし、そもそも向きが同じなら私達は自分を確認することすらできない。
 
侑「やりたいことをやりたいって気持ちだったら、わたしだって負けてないつもり!」
 
自分とただ同じものを見る時、人は本当の意味で自分を見ることができない。劇中のオープンキャンパス用の映像を担当した同好会メンバー(侑、璃奈、しずく)は共にこだわってしまう気質であるが故にクオリティアップにキリがなかったし、編集されたその映像には同好会の面々の本当の姿(クールに見える果林のだらしなさやNGテイク)は映っていない。
鏡がそうであるように、正反対のものによってこそ私達はふだん見落としている自分を見つけ出すことができる。ならば同好会や侑と重なりつつも正反対の嵐珠の登場は、1期で一度完成してしまった自分達を見つめ直すのに最適なものであろう。
 
鏡は同じものを映さない。対照的だからこそ嵐珠と同好会、そして侑は互いを切磋琢磨する鏡たり得るのだ。
 
 

感想

というわけでニジガク2期1話レビューでした。そういえばあんな人物こんな関係あったよねと思い出しながら視聴しましたが、スッとテーマをまとめることができました。嵐珠の圧倒的なスター性が際立ちだからこそ他の皆も好きになれる、とても整理された1話だったと思います。良い意味で1期を壊してくれそうで非常に期待の高まるスタートでした。
 
最近ファ美肉おじさん最終回レビューがドツボにハマってしまったり、「オッドタクシー イン・ザ・ウッズ」も見たけど何が書けるかさっぱり見当つかないとすっかり不調でとても不安だったのですが、この1話で自信を取り戻せました。個人的に感謝です。
 
 

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