変われなくても変わる方法――「ストライクウィッチーズ ROAD to BERLIN」3話レビュー&感想

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©2020 島田フミカネKADOKAWA/第501統合戦闘航空団
坂本に代わって新たに501の一員となった静夏だが、入隊挨拶からつまずくなどなかなか落ち着けない。芳佳はそんな静夏を優しくフォローしていたが、彼女にも思わぬ出来事が起こり……
 
1期2期、そして劇場版を経て歴戦の勇士となった芳佳。彼女が優秀なウィッチであることは魔法力ある限り変わらない、ように思える。しかし不変のものなどそうそうありはしないし、だからこそ変わらないことは難しい。そして新たに配属となったが未熟さに悩む静夏からすれば逆に、変わることこそ難しい。
芳佳に異「変」の起こる「ストライクウィッチーズ ROAD to BERLIN」3話は、そういう難しさを描いたお話だ。
 
 

ストライクウィッチーズ ROAD to BERLIN 第3話「二人ならできること」

 

1,芳佳と静夏の抱える問題は正反対だが同じ

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©2020 島田フミカネKADOKAWA/第501統合戦闘航空団
1話でも見られたように、芳佳は変わらない(守る)ことに執念とも言える精神的強さを持った少女だ。訓練の厳しさも戦いの激しさも魔法力の枯渇すら彼女を変えることはできず、芳佳は戦場へと舞い戻ってきた。当初は未熟だったことが成長=変化となって「変わらない」の対の役割を果たしてきたわけだが、経験を積んだ今となってはその余地は少ない。芳佳はもはや「変わらない」を通り越して「変われない」域に達している。
 

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©2020 島田フミカネKADOKAWA/第501統合戦闘航空団
一方で新たに配属となった静夏は、存在そのものが変化の象徴だ。彼女が501に加わったのは坂本に代わって(変わって)だし、彼女が加入すれば芳佳にも501での後輩が生まれる。しかし芳佳への強過ぎる憧れは彼女を不安定にしており、入隊の挨拶が股間見せになってしまったり訓練でもペリーヌ達についていけない。実力そのものはあるのだからそれが「変わらなければ」戦えるのに、「変わってしまう」問題を静夏は抱えている。
 
こうして芳佳と静夏を並べて分かるのは、2人が対照的――なようでいて実は同じ問題を抱えていることだ。変化も不変も、どちらか片方だけあればいいわけではない。変えない方がいいものを変えれば問題が起きるし、変えた方がいいものを変えなければ問題は大きくなる。重要なのは必要に応じて変化と不変を使いこなすこと、つまり調整することであり、芳佳も静夏もそれができない問題を抱えているのは変わらないのである。
そして2話では魔法が「変える力」でもあることが描かれたが、であれば芳佳が陥った魔法圧(魔法力を調整する力)の低下とは変える力の調整力の低下に他ならない。芳佳がこの謎の不調に襲われたのは強過ぎる彼女へのストーリー的ハンディキャップというだけでなく、この3期で芳佳が立ち向かうべき課題を示していると言えるだろう。
 
 

2.正反対の同じ問題を抱える二人だから

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©2020 島田フミカネKADOKAWA/第501統合戦闘航空団
今回のネウロイは芳佳と静夏が戦力外の状況で飛来してくるが、その戦法は2人をあざ笑うように「調整」を駆使したものだ。501は既に伝説的な戦闘集団だが、ウィッチの強さは集団で発揮されるものだから分散させられればガクンと力は落ちてしまう。分身を囮に使ってウィッチ達を集めさせないのは、分散という相手戦力の調整なのだと言える。
そして相手が分散の調整で向かってくるなら、芳佳達がすべきは当然その逆、集合の調整になる。芳佳が「変われない」問題を抱え静夏が「変わってしまう」問題に苦しんでいるなら、2人の集合が互いの問題を相殺してくれる。それぞれが半人前であることは今は変われなくとも、一緒なら一人前に変わることができる。
「二人ならできること」「半人前でも二人合わせれば一人前」というのは単なる足し算ではなく、パズルのピースのような組み合わせだからこそ生まれるものなのだ。
 
かつて芳佳とそういう組み合わせを見せたのはリーネだったが、ピースに四辺があるように芳佳の抱える問題もリーネとの組み合わせで解決するものばかりではない。静夏こそはきっと、リーネとは異なる部分でリーネ同様に芳佳と噛み合うピースとなってくれることだろう。
 
 

感想

というわけでストパン3期RtBの3話レビューでした。ヤキモチ焼いたり情緒不安定だったり静夏が芳佳を好き過ぎでしたが、最終的にガミガミも戻ったのはこれも調整力の回復と言えるかしらん。うん、これくらいの方がいいな。全体のテーマ的な道筋も見えてくる、良い回でした。
 

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©2020 島田フミカネKADOKAWA/第501統合戦闘航空団
それにしても、怒ってても心配してても叱咤になってしまう、「変わってるのに変わってない」バルクホルンお姉ちゃん不憫。芳佳、早く全力で甘えに行くんだ。