死と再生のコンビ――「吸血鬼すぐ死ぬ」2話レビュー&感想

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©盆ノ木至(秋田書店)/製作委員会すぐ死ぬ
賑やかさを増す「吸血鬼すぐ死ぬ」。2話にして様々なキャラクターが登場するが、メインはやはりドラルクとロナルドの二人。今回の騒ぎを通して見えてくるのはそのコンビの特別さだ。
 
 

吸血鬼すぐ死ぬ 第2話「襲撃!!フクマさん」「新横浜に花と散るらむ」「壁を叩いて殺せるか」

オータム書店の担当編集フクマから電話がかかってくる。ロナルドが執筆する人気小説『ロナルドウォー戦記』2巻の原稿締切は今日だったのだ。忘れていたロナルドとなぜか巻き込まれたドラルクは逃走を図るが、フクマは原稿回収を迫る。
 

1.ロナルドすぐ死ぬ

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©盆ノ木至(秋田書店)/製作委員会すぐ死ぬ
ロナルド「ところで、北海道特選牛乳が買ってあったからあげるぜ」
ラルク「あまりにチョロい」

 

アバンとAパートからも分かるように、ロナルドは見た目よりもポンコツで危なっかしい男だ。ドラルクに自伝を褒められれば悪態をつきながら上等な牛乳をプレゼントし、頭の上がらない武闘派編集フクマさんの前では怯えてまともな思考もままならない。吸血鬼対策課のヒナイチとドラルクを会わせまいとしての奇行に至っては劇中で薬物中毒を疑われるレベルで、アニメで演じる古川慎 氏の喉が心配になるレベルでロナルドは動揺しまくっている。心の平静を命に例えるなら、ロナルドの死の回数はけしてドラルクに劣らないだろう。では、彼をもっとも死なせて――動揺させているのは誰か? もちろんドラルクである。
 
 

2.吸血鬼すぐ死なす

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©盆ノ木至(秋田書店)/製作委員会すぐ死ぬ
ロナルド「あまりのことにしばらくまともにツッコミできなかったわ!ビタ一文も出すわけねーだろボケ!」
 
ラルクと一緒にいる時、ロナルドはほとんどのべつまくなしに叫ぶ。吸血鬼とその退治人の二人では価値観が大きく違うのだから当然だろう。Bパートの給料の話で見られるように、ドラルクは軽率にロナルドを怒らせ叫ばせる。つまりドラルクは自らがすぐ死ぬだけでなく、ロナルドの心の平静という命を日常的に奪ってもいる。
 

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©盆ノ木至(秋田書店)/製作委員会すぐ死ぬ
ロナルド「秘技!ハンター16ビート地団駄!」
ヒナイチ「なにしてんだ貴様ー!?」

 

これがもっとも分かりやすいのはCパートのヒナイチ来訪話で、ここでロナルドが奇行に走るのはドラルクのことで頭がいっぱいだからだ。直接の出番は少なくとも、このCパートは常にドラルクの影響下にある。「秘技ハンター壁ドン」だの「秘技ハンター16ビート地団駄」だの、ロナルドはこれらでドラルクを殺すつもりでいるが、むしろ彼こそその度にドラルクに心の平静さを殺されているのだ。
前回吸血鬼と共にすぐ死んでいたのはあくまで退治人の存在価値であったが、この2話に至ってはその影響はもっと個別的で直接的だ。同居生活を始めたことでロナルドは、もはや彼自身もまたすぐ死ぬ存在になっているに等しい。
 

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©盆ノ木至(秋田書店)/製作委員会すぐ死ぬ
ロナルド「頼む、ちょっと一発ドラ公ぶん殴って殺してきてくれ」
 
ただ本作において「すぐ死ぬ」ことは「すぐ終わる」ことを意味しない。ドラルクがすぐ蘇るように、本作における「すぐ死ぬ」は「すぐ蘇る」とセットだ。
 
 

3.死と再生のコンビ

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©盆ノ木至(秋田書店)/製作委員会すぐ死ぬ
ロナルド「何がよくやっただ、勝手に動きやがって!」
 
ラルクが関わるとロナルドはすぐ平静さを失う。つまりすぐ死ぬ。だがドラルクの存在は彼をただ死なせたままにしない。これが端的なのは、Bパートで吸血鬼ゼンラニウムと戦うドラルクをロナルドが助けに現れる場面だろう。Aパートでフクマさんに怯えすっかり威厳のなくなった彼も、ドラルクを救出すればなんだかんだで格好良さを取り戻せる。
 

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©盆ノ木至(秋田書店)/製作委員会すぐ死ぬ
ヒナイチ「日を改めるぞ!首を洗って待っていろーー!」
 
そして格好良さとはいかずとも、ドラルクと共にいるからこそロナルドが救われる場面は多い。フクマさんに怯えていてもドラルクがいれば漫才にはなるし、ヒナイチ相手に働いた奇行はドラルクの礼儀によって事実上キャンセルされた。
 

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©盆ノ木至(秋田書店)/製作委員会すぐ死ぬ
ラルク「いやあ、だが今回は私なかなか頑張っただろう?」
ロナルド「フン、まあてめえにしちゃあ少しはやったかもな」
 
ラルクがいるからこそ、ロナルドというキャラはポンコツで完結しない。ツッコんだりツッコまれたり、死なせたり死なされたりできて、そして再生できる。それはある意味、吸血や契約よりも遥かに不可分な関係であろう。
死と再生の繰り返しにこそ、ドラルクとロナルドの関係の特別性は現れているのだ。
 
 

感想

というわけで吸血鬼すぐ死ぬの2話レビューでした。なんというか実に濃厚なカップリング感のある作品だ……これ見続けると僕はその内、ドラルクとロナルドに悶絶する日が来るのではないかという予感がします。二人で一生漫才やっててほしい。
 

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©盆ノ木至(秋田書店)/製作委員会すぐ死ぬ
あとトレンドにも上がってたそうですがまさかの大塚明夫出演がインパクト強過ぎてですね。ルパン三世 PART6の0話見て「さあ、次回から大塚次元だ!」って思ってたところにこの不意打ちは誰でも致命傷ものだと思います。ズルいって。ヒナイチもリアクションがいちいちかわいかったし、これから更に増えていく登場人物が楽しみです。
 
 

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