らしくあるための距離――「ルパン三世 PART6」2話レビュー&感想

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©モンキー・パンチ/TMS・NTV
美味しいものはお預けの「ルパン三世 PART6」。2話ではルパン一味とホームズの最初の激突、そしてロンドンでの騒動のひとまずの終わりが描かれる。じれったさもあるこの展開はしかし、一つの示唆を含んでいる。
 
 

ルパン三世 PART6 第2話「探偵と悪党」

ルパンの姿を見て、気絶してしまうリリー。ホームズは怒りをあらわにし、ルパンを見つけ出すと語気を荒げる。一方アジトに集ったルパンたちは、手に入れた絵の分析中。レイブンは、第二次世界大戦後、英国政府を影から操ってきたとされる秘密組織――メンバー等はすべて謎に包まれ、その実態は雲を掴むよう。レイブンの謎は、ルパンとホームズの因縁にも関係している様子で……?
 

1.「近づく」ことの引力

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©モンキー・パンチ/TMS・NTV
ホームズ「ルパン三世が現れた。奴の姿を見てリリーは……!」
 
爆炎を背にしたルパンとホームズ、リリーの再会という派手な終わりをした前回だが、続く今回リリーは気を失ってしまう。別に爆発に弾き飛ばされただとか、落下物が頭にぶつかっただとかでそうなったわけではない。ただルパンの顔を見ただけで――近づいただけでリリーは強いショックを受けて気絶した。
「近づく」ことを甘く見てはいけない。「有名アイドルを間近で見たファンが失神した」といった話は多くの人が耳にした覚えがあるだろうし、リモートでの会議やライブ中継が直接の話し合いや会場に足を運ぶのと全く同じでないことは昨今多くの人が経験したところだ。
 

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©モンキー・パンチ/TMS・NTV
ホームズ「俺としたことが、奴の出現を予測できなかったなんて……」
 
リリーの気絶ほど甚だしくはなくとも、ホームズもルパンに会ったことで明らかに冷静さを失っていた。「近づく」ことにはある種の引力があり、それは目に見えない形で自分を、あるいは人を変えてしまうものなのだ。
 
 

2.見失う自分らしさ

近づくことで人は変わる。それは言い換えれば、距離を見誤れば人は容易く自分らしさを失うということでもある。
 

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©モンキー・パンチ/TMS・NTV
ルパンのアジトを突き止め単身乗り込んできたホームズに五ェ門、次元、不二子は果敢に挑むが、ホームズの能力は高く彼らはいつものような活躍を見せられない。五ェ門の居合は鏡の反射で封じられ、次元の射撃は背中に目がついてるとすら言われる勘の良さでかわされ、不二子に至ってはいつもと逆に自分の方が相手に誘惑される始末。今回の三人は全くもってらしくないが、それは迎撃によって彼らがホームズに近づき過ぎた故の結果と言える*1
 

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©モンキー・パンチ/TMS・NTV
誰かや何かに近づくことで人は自分を、あるいは相手を変えてしまう。次元達相手には一枚上手だったホームズも実は、この引力から逃れられてはいない。
彼は今回ルパンと戦うにあたって髪型を変え、パイプとステッキを持ち出し、話しかけてくる街の人に目もくれない。前回見せた周囲と気さくに会話する姿とは大違いだが、これこそが(相棒を失った)本来の彼の姿なのだろう。ホームズをそういう好人物にしていたのは誰か?……考えるまでもない、リリーだ。リリーと近づくことでホームズは、ルパンから腑抜けとすら呼ばれる10年のブランクを重ねていたのである。
 
 

3.らしくあるための距離

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良きにつけ悪しきにつけ、近づくことで人は変わる。ならば「らしさ」を保つためには距離こそが必要だ。ホームズがアジトに乗り込んでくる前に一時撤退の方針を打ち出したルパンは次元かららしくないと言われたが、ホームズの手並みを見ればむしろその判断こそルパンらしかったのは明らかであろう。
 

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ルパンとホームズの対決は魅力的だが、あまりにも優秀なホームズの存在は同時に「ルパン三世」を縛る枷だ。現に次元達は今回全くいいところなしで、たまにならいいが毎回こんな様子を見せられてはたまったものではない。ルパン一味の格を落とさず、彼らを彼ららしく自在に動かすためにはホームズとの一定の距離が必要になる*2
 

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©モンキー・パンチ/TMS・NTV
角を突き合わせるような至近距離ではなく、遠くとも時折覗けるような離れていない距離。しばらくはこれを保つことによってこそ、ルパンとホームズは互いを損なうことなく事件の真相にたどり着けるのである。
 
 

感想

というわけでルパン三世TVシリーズ6期の2話レビューでした。「謎こそミステリーの宝」の前回もそうですが、書いてることがちょっと抽象的かしらん。もう少し具象に落とし込んでレビューを書けると僕自身の理解度も上がるのだけど。
 
アジトの探索や次元達を相手にした立ち回りの巧みさなど、ホームズの強者ぶりが魅力的に描かれた回だったと思います。大塚明夫の次元も聞いてみるとスルッと慣れたし。
次回からはいよいよオムニバスエピソードに突入!いきなり辻真先さんということで期待が高まりますね。
 
 

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*1:地の利の計算や目眩ましに不二子のキャッチなど、戦い方が距離を踏まえたものである点にもホームズの巧みさは見て取ることができる

*2:これはホームズが今までルパン達と相対しなかった=距離を置いていた説明が今回されることからも言える