正反対が混ざり合う「ラブライブ!スーパースター!!」。2期4話では米女メイと四季若菜の二人がスクールアイドル部に入部するまでが描かれる。今回は二人の対象的な色に着目してみたい。
ラブライブ!スーパースター!! 2期 第4話「科学室のふたり」
1年生の若菜四季は、スクールアイドルが大好きなのになかなかスクールアイドル部に入ろうとしない同級生、米女メイを見かねていた。そしてついに、ある作戦に出る。自らスクールアイドル部に体験入部し、その様子をメイに見せつけたのだ。屋上でLiella!と一緒に練習する四季に混乱したメイは、焦って彼女たちのいる屋上へ向かうと、怒って帰ってしまう。四季はメイの事情をLiella!に話すことになり──。
(公式サイトあらすじより)
1.赤の中の青、青の中の赤
四季「聞こえづらかった?」メイ「そうじゃねえよ、いつの間にこんなもの仕掛けてきたんだよ」
今回の主役である米女メイと四季若菜は、ひと目見て赤と青の対として意識しやすいキャラだ。メイのように赤い髪のキャラクターはこれまでの作品にも登場しているが、青みがかった黒等ではなく明るい青色で設定されたのは四季が初めて。同じ中学出身で1話から二人で話す場面が多く見られることもあり、私達はこの赤と青が一緒にあるのが自然なのだとこれまでの話で認識するようになっている。そして、これは実はメイと四季個々人についても同様だ。
メイと四季にとって赤と青はそれぞれパーソナルカラーのようなものだが、必ずしもそれ一色に染まっているわけではない。メイの瞳の色は青色だし、対して四季の瞳は赤系統の色が設定されている。もしこれが逆で、髪も瞳も赤か青一色になっていたら二人のデザインは途端に無個性なものになっていたことだろう。背負う色は赤や青一色だとしても、対照的な色が一緒にあるからメイと四季は本作の主要キャラクターとしての個性と美を持ち得ている。
本作は副題を画面に埋め込む手法を採っているが、この4話でのそれは2色を織り交ぜることで背景と同化しない工夫がなされている。メイと四季は赤と青の対照的な色を背負っていると同時に、互いの正反対の色が自分も相手も引き立てることを運命的に刻まれているのだ。ならば二人のスクールアイドル部加入が難航するこの4話自体もまた、色に着目することでいっそう鮮やかさを増して見えてくる。
2.単色の限界
メイ「かわいいとかじゃない、ライブ見ている自分の顔は世界で一番見られたくない顔って万国共通で決まってんだ!」
これまでの話で描かれてきたように、米女メイはスクールアイドルが大好きな少女だ。主人公であるかのん達のLiella!に対しても当然大ファンで、前回のライブを見た際は号泣までしていたことが明かされている。しかし一方で彼女は自分がスクールアイドルに向いているとは思えなかったため入部まで踏み込めず、故に四季の科学愛好会の部室からかのん達の練習風景を眺めるばかりの生活を送っていた。そんなメイを見かねた四季は自らがスクールアイドル部に体験入部することでメイを刺激してやろうとしたが――興味深いのはここでも画面がしばしば赤と青に分かれている点だ。
Liella!の練習場所は屋上であり、レンガなども用いた外壁や床面は基本的に暖色だ。メイが練習風景を扉の隙間から除いたり転んでかのん達の前に姿を現した時も当然背景はそれに従っており、メイは基本的に赤の世界にいる。
しかし一方、向かい側の建物はレンガではなくコンクリートやタイル(ガラス?)を用いて作られている。日差しの方向もあってそれらは白ではなく青色で、この体験入部を巡る出来事では四季はもっぱらこのコンクリートやタイルを背にしている。彼女はメイと対照的に青の世界におり、そして彼女達の赤と青は分け隔てられている。
体験入部の際のこうした赤と青の入れ替わりは目まぐるしいほどで、そしてそれ故落ち着きがない。先述したように、メイと四季のキャラクター性や美しさは背負ったものと反対の色のアクセントあればこそ成り立っているのだからこれは不完全な状態だ。なら四季の策略に乗って青色に染まるだけではメイはスクールアイドル部に入れないし、四季にしても一人で完璧ではなく、自分がメイに大切に思われていることには鈍感だったりする。背負う色一色だけでは、二人はどちらも踏み出すことができない。
3.赤と青の化学反応
赤と青が共になければ、メイと四季は前へ踏み出せない。しかしそもそもで言えば二人は背負った色のように正反対の性格で、彼女達が仲良くすること自体がブレイクスルーなしではできなかったことだ。なら当然、今回メイと四季が踏み出すためのヒントも過去にある。
メイと四季が初めて会ったのは中学の時。四季はクラスでも他人と話そうとせず、メイに誘われてもすげなく断ってしまった。他の人と同様、四季は誰とも縁を持たない、はずだった。
メイ「案外、わたしもお前みたいに一人のほうが好きなのかもな」
しかしある時、教室へ戻ってきたメイと鉢合わせしたことで彼女と四季の関係は始まった。グループで仲良くするしないに嫌気が差して、自分も四季同様に一人でいる方が好きなのかも……と笑ったメイは、それから毎日四季と一緒に過ごすようになった。その始まりの時は夕方――空が落日の色に次第に染まっていく時間だった。そう、夕方とは赤と青が触れ合う時間なのである。
かのん「四季ちゃんも一緒だと思う」
スクールアイドル部に入るか入らないか、今後も一緒にいるかいないか。すれ違ってしまった二人の様子を見たかのんは、メイにアドバイスする。正反対に思える二人が実はそっくりなこと。メイが四季を大好きなように四季もまたメイを大好きなこと。そしてそんなそっくりの二人ならきっと、四季の体験入部はメイのためだけではないこと。彼女達の境を取り払うようなその助言がなされたのは、当然ながら赤と青の接する夕方であった。
四季「顔、真っ赤」メイ「うるせえなあ!」
かつてメイは四季にスクールアイドル好きを指摘され、顔を真っ赤にしたがそれで部に入ろうとはしなかった。なぜか? それは「赤を背負った」メイが「真っ赤」になっても、赤を重ねるだけで新たな色彩にはならないからだ。彼女がスクールアイドル絡みで赤面するのはいつものことで、だからそこに事態を打破する力はない。そうではなくて、「真っ赤」にすべきは「青を背負った」少女の方だ。
メイ「顔、真っ赤だぞ?」
実は自分もスクールアイドルに興味を持っていることをメイに指摘された四季の顔は「真っ赤」だった。口数少なく感情表現に乏しい、「青」そのものだった彼女の頬に灯るその「赤」にはある意味で世界を変える力がある。ずっと素直になれなかったメイと四季が一歩を踏み出すための、スクールアイドルになるための赤と青のコントラスト――そしてそれを引き出したのは、感情の起伏が激しく「赤」そのものだったメイの穏やかな、素直な「青」の言葉であった。
メイ「四季が近くにいてくれたら、頑張れそうな気がするんだ」
メイと四季は強烈な赤と青を背負っていて、しかしその色一つでは前に進めない。けれど瞳に宿すような対照的な色と一緒になら、二人は自分のためとか他人のためとかいった束縛を突き抜けて全てのために歌えるだろう。今回だって彼女達のやりとりがきっかけで、スクールアイドル部の一員である千砂都は自分が部長を務めてみる勇気を持てたのだから。
どれだけ強烈な色も、それ一つでは全ての壁を突破することはできない。触れ合って混ざったりコントラストになって、初めて色彩が生まれてくる。
この4話の副題は「科学室のふたり」だ。そしてメイと四季の二人のやりとりとは、一つの色ではできないことを可能にしていく「赤と青の化学反応」なのである。
感想
というわけでスパスタ2期4話レビューでした。感動的だけどいざレビューにしようとすると何書いていいのかさっぱり分からんな、と困りながら視聴を繰り返している内にこんな方向性に固まりました。「夜の青」とか「四季は四季で自分のことが分かってないのが明かされる夕方」とかも掘り進められそうな気もします。強固な関係性を見せてくれた二人がこれからかのん達とどういう関係を育んでいくのかも楽しみです。
さて、次回は最後の一人である鬼塚夏美の加入回になるんでしょうか。出番はあるがまだまだ掴めないこの子、どんな風に描かれるのかな。
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— 闇鍋はにわ (@livewire891) August 8, 2022
背景や赤面など、メイと四季の象徴する「色」を中心に書いてみました。#lovelive #Liella #ラブライブスーパースター#スパスタ#アニメとおどろう