コードギアスを奪還せよ――「コードギアス 奪還のロゼ」第1幕レビュー&感想

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発表から4年、いよいよ公開の始まった「コードギアス 奪還のロゼ」。本作が本当に奪還しようとしているものは、いったいなんだろうか?

 

 

コードギアス 奪還のロゼ」第1幕

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コードギアスを奪還せよ

2006年に第一作が放映されて以降、ロボットアニメにガンダム等に続く名を刻んだ「コードギアス」シリーズ。「復活のルルーシュ」以来5年ぶりの新作アニメとなる「奪還のロゼ」の第1幕がこの度劇場で公開されたのだが――正直に言えば、映画館で最初に感じたのは強い既視感であった。舞台はネオ・ブリタニア帝国に占拠された北海道、イレブンと呼ばれ虐げられる中で活動を続ける日本人レジスタンス、チェスの駒になぞらえたナイトオブラウンズならぬ「アインベルク」なる特別な敵……更には知略タイプの主人公・ロゼと彼と対になる強力なパイロット・アッシュが登場となれば、これはもうどこからどう見ても「コードギアス」以外の何物でもあるまい。そしてだからこそ私は「もういいよ、そういうのは」と辟易すらしたのだが、映画館を出てしばらくすると頭に浮かんだのは別の見方であった。『本作は「似てしまっている」のではなく、「意図的に過剰に似せている」のではないか?』と。

 

本作の構成は奇妙である。劇場公開作品にも関わらずその内実は完全に分割された30分アニメ3話分であり、しかも各話の終わりは毎回が次回への興味をそそるクリフハンガー的な引きを迎えるようになっている。これは配信が主流の時代に見やすさと関心の継続を狙ったものでもあろうが、そもそもが原点である「反逆のルルーシュ」もまた人気を博した理由の一つはクリフハンガー的な引きによるところが大きかったはずだ。過度なほどの類似性も踏まえればすなわち、本作は商業的要請だけではなくわざわざ「反逆のルルーシュ」に寄せるように「奪還のロゼ」を作っている。それは伝説的作品の重みに耐えられず窮屈な作りを強いられる続編の不自由さとは似て非なるものだ。

 

振り返ってみれば、「コードギアス」シリーズは確かに大ヒットを記録したが制約の大きい作品でもあった。それは作品の魅力がルルーシュという強烈なキャラクターに密接に結びついており、コードギアスルルーシュという呪縛に縛られてしまったところが大きい。外伝的映像作品「亡国のアキト」は展開に寄与する部分が少なくともルルーシュの存在に目配りしないわけにはいかなかったし、最終的には彼を退場させるためにTVシリーズを作り変えた総集編や新作劇場版「復活のルルーシュ」が作られたほどだ。続編を作るに当たっての制約は「ガンダム」や「マクロス」の比ではないほど大きかったと言えるだろう。それは本作の舞台設定を見ても分かる。

 

本作の敵勢力はネオ・ブリタニア帝国などと謳っているが、その実態は全世界を制覇せんとする巨大国家ではなく北海道を占拠した勢力に過ぎない。前作で活躍した黒の騎士団の介入が「シトゥンペの壁」と呼ばれる強力な防壁によって防がれている設定だからこそ、彼らは「反逆のルルーシュ」で見られたような傍若無人な振る舞いをすることが許されている。メタ的に見ればこれは、レジスタンスや主人公のロゼが前作のような抵抗や活躍を許される理由でもあろう。制約あればこそ本作は、「反逆のルルーシュ」に近いシチュエーション作りに成功している。そしてたかだか日本の一地域が舞台に過ぎないそれは、極めてちっぽけな――「孤独」な世界に過ぎない。

 

本作の根幹をなす設定である王の力・ギアスは、持つ者を孤独にするという。本作の主人公であるロゼももちろんギアスの力を持ちそれに苦しめられる存在だが、視点を変えればギアスを持っているのはコードギアス」シリーズそのものだ・・・・・・・・・・・・・・・・・。反逆のルルーシュのあまりの成功はシリーズになまじな別作品のありかたを許さず(もちろん漫画で様々なスピンオフはつくられているのだが)、その存在を孤独にしてきた。そしてルルーシュに縛られれば縛られるほど魅力を損なっていくのもまた同シリーズが受けた呪いでもあり、それは大切なものを遠ざけるというギアスのもう一つの呪いにも重なって見える。意図したわけではないだろうが、シリーズが置かれた状況は体現者であるルルーシュと全く重なってしまっている。その状況を覆さなければ、シリーズはかつての輝きを取り戻すことはできない。

 

「奪還のロゼ」は確かに「反逆のルルーシュ」に似ている。似過ぎるほどに似ている。しかし一方で、似ているものはそれ故に差異もまた際立つものだ。ロゼとその兄アッシュはスペックとしては「反逆のルルーシュ」のルルーシュとスザクに似ているがそのままではなく、そこに通う愛憎は私達に初めて見る驚きや続きへの関心を誘う。おそらく、「これは反逆のルルーシュの○○ポジションだな」といった予断は今後大きく裏切られていくことだろう。だが、そういった驚きこそは「反逆のルルーシュ」が放映時に視聴者に見せた本来の人気の理由ではなかっただろうか。

 

コードギアス 奪還のロゼ」が取り戻そうとするもの。それは劇中の日本でありロゼ達が取り戻そうとする人物であり、しかしそれだけではない。敢えて「反逆のルルーシュ」にその内容を寄せる本作は、崖とすれすれの道をたどることで「コードギアス」そのものを奪還せんとしているのである。

 

感想

以上、奪還のロゼの第1幕レビューでした。1話ごとのレビューを書いている私ですから、映画館で2話目が始まった時ははっきり言って頭を抱えました。これは記事を上げるのは無理なんじゃないかなとすら思ったのですが、視点を変えてみたらこんな文章が書けた次第です。これはこれで今後書くことに苦労しそうな気もしますが。さてさて、第2幕ではどんなことが起きるんでしょうね。

 

 

 

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