2学期の始まりと共に幕を開ける「ラブライブ!サンシャイン!!」2期1話、千歌は盛大に寝坊し遅刻してしまうが、最後には皆で「LoveLive」の陣を組む。時計の進み方は一様ではなく、しかしそれは時計の針が合わないことを意味しない。
ラブライブ!サンシャイン!! 2期 1話「ネクストステップ」
拡大する差異
地区予選の行われた夏休みから2学期までに流れたのはほんのわずかな時間だが、そのわずかな時間でも人や物事の間にはズレや変化が生じている。ストレッチや筋トレの効果差であったり、バスの運行時間であったり、哺乳瓶を離すまでの年齢であったり……冒頭で遅刻する千歌のズレは特に顕著で、1期ラストで輝きの緒を見つけた彼女の視界は時に海に飛び込みそうなほど、それを止めてもらっても逆さまに海を見るほどにズレは大きくなっている。
差異は力なり
千歌と同様にもう一つ大きなズレとして現れるのが、浦の星女学院の統廃合の問題だ。千歌達の努力で確かに入学希望者の数は増えたしこれからも増えそうだが、しかしその数ヶ月の成果は2年前から模索されていた統廃合との時間差を埋めるには至らない。ズレや時間差は良くも悪くも力の源泉なのであり、当然、海を逆さに見るほどズレを大きくした千歌はその力で統廃合の判断を待ってもらおうとするわけだが――これまで与えられていた猶予こそ鞠莉が必死で生んでいた「時間差」だったと知ればそれ以上の無理はできない。「待ってほしい」を重ねるだけの行為は、鞠莉がこれまで皆に伝えず(差異として)重ねていた労苦に対する侮辱になってしまう。
差異の方向性
前に向けてのズレを機能できない時、人が目にするのは当然逆方向――過去との時間差だ。もし本戦に出場できていれば未来は変わっていたのではないかと考えたり、せっかく作ってもらった千羽鶴がむしろ心を痛めるものになってしまったり、張り切っていた分だけ学校説明会のポスターを剥がすのが辛かったり。かつて抱いた希望と今が違う時、時間と望みの二重のズレはいっそう人を苦しめる。
けれど人は時に、過去にすら新しい何かを見出すことがある。かつて自分がかけたのと同じ言葉を今度はかけられるように。かつてのステージを思い出すように。ほんの数日前に見た夢の新たな姿を見るように。旧き姿と新しき姿のズレに、出会うことがある。
千歌は涙ぐみながら、奇跡を起こすまで泣かないと誓う。涙を流すのは今ではなく、その時間差をこそ力に変えると誓う。同時にそれは、海を逆さに見るような千歌のズレを皆と共有し正位置に戻す行動だ。跳んで逆さになるような力も一回転させれば同じ上方向になるし、遅刻なく揃った皆の前で朝日は昇る。30分かけて全ては正位置に揃い、千歌達の物語は再び始まったのである。統廃合の決定と実施の"時間差"にあがく物語の行方は果たして。
感想
というわけでサンシャイン2期1話のレビューでした。「時間差」を基点に差異やズレといった要素へ拡張して書いてみた感じですが、2期全体の指針として据えるにはまだ足りなそう。思い返してみると無印2期1話もどう据えるか悩んだっけ……とりあえず「一回転して向きは直ったが皆より高い位置にいる」千歌のありようは注意して見た方が良さそうな。
さて、難題という意味ではμ’s以上の難題に直面している千歌達は奇跡を起こせるのか。そしてそれはどのようになるのか。後半戦、スタートです。