ときめきは異世界の扉――「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」1話レビュー&感想

f:id:yhaniwa:20201004142153j:plain

©プロジェクトラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会
友人の上原歩夢と共にお台場をブラブラ歩き回る日々を続けていた高咲侑は偶然、優木せつ菜というスクールアイドルのライブを目にする。彼女の歌に侑は圧倒されてしまうわけだが、印象的なのはそのパフォーマンスがライブ演出を通り越して侑を異世界に連れ込んでしまうことだろう。ときめきの興奮は、時に世界すら変えてしまう。
「生まれたときめき。あの日から世界は、変わり始めたんだ!」……世界が異なるものへと変わる、その瞬間によって「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」1話は始まるのだ。
 
 
 
 
 

ときめきは異世界の扉

ときめきが人を異世界に誘うものと定義するなら、侑がブラブラしていたショッピングモールやカフェの類は外とは違う空気を作り出すようデザインされていることが多く、まさしく人を異世界に誘うものだ。場の空気が人を高揚させ、そのときめきが来場者の世界観を変えてしまう。金額だけ見れば躊躇してしまうものにもつい財布の紐が緩んでしまうのは、ときめきによって人が異世界に入り込んでいるからに他ならない。服飾などの購入基準がときめきだった侑は特に、それを強く求めていたと言える。
 
そして異世界の扉がときめきで開くなら、本作の舞台となる虹ヶ咲学園が伝統のコミケ会場ビッグサイトを模しているのは必然だ。数多のブースは1つ1つが誰かにとってときめきの対象、つまり異世界たり得る力を持っている。虹ヶ咲学園の専攻や同好会の多様さはコミケ参加サークルの多様さと照応するものであり、部室棟は数え切れないほどの異世界と繋がっているのだ。
ならば目の前で同好会部室の名札を降ろされてしまった侑は、異世界への扉を閉ざされてしまっている。毎日ときめきを求めてブラブラし続けた――見ようによっては遠く長い旅の果てにたどり着いた異世界は、また遠くへ去ってしまった。
 
 

扉の所在

しかし異世界とは、遠くにあるものとは限らない。ショッピングモールは学園と同じお台場にあるものだし、侑を異世界に連れ込んだせつ菜は知らない他校ではなく同じ学園の生徒だった。部室棟だって初めて来たから驚いているけれど、実際はもう1年以上近くで過ごしてきたものだ。そして、せつ菜を初めて見た日の夜、侑は手元のスマホに映る異世界に没入していた。
 
だから侑を再び異世界に誘うものも、むしろ近くにある。ずっとずっと隣にいた上原歩夢は、侑と同じものを見ながらもファンではなく自分自身がスクールアイドルになりたいという夢を抱くようになっていた。2人が見ていたのは違う世界で、ならば歩夢の世界を侑が見ればそれは"異世界"になる。逆に言えば、見る者無しに異世界は成立しない。
 
歩夢がせつ菜と同じようにステージを変えてしまうのは、"異世界"にしてしまうのは、侑が彼女のパフォーマンスに"ときめき"を感じた証明なのだ。
 
スクールアイドルには世界を変える力があるが、それは現実を変える大きな力だけとは限らない。全てはまず、スクールアイドルを見たファンの心の世界の変化から始まるのである。
 
 

感想

というわけで虹ヶ咲の1話レビューでした。なんだかんだで無印とサンシャインの見せ方に慣れている自分がいるらしく、良い意味でこれまでと違う戸惑いを感じています。侑と歩夢の関係を描くことで「今までの作品みたいで、かつ今までの作品とちょっと違う」のが示されていた1話だったのではないかなと。
部室の扉は異世界への扉であると同時にスクールアイドルの心の扉であり、その扉を叩くことで見えてくる世界がある。再び名札が戻った時、その先にはどんな異世界が広がっているのでしょうね。
 
ところでこの生徒会長、スクールアイドルしないのがもったいない逸材眼鏡っ娘ですね。きっとすごく人気が出るぞ(棒)