日常系の外側へ――「おちこぼれフルーツタルト」1話レビュー&感想

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©浜弓場 双・芳文社/おちこぼれフルーツタルト製作委員会
アイドル目指して岡山から上京してきた桜衣乃は高校一年生。しかし所属するラットプロの寮、ネズミ荘は閉鎖寸前で、衣乃は売れない元子役やミュージシャン、モデルと一緒にアイドルユニットを組むことになり……?
 
ハナヤマタ」でよさこいに情熱を燃やす少女達を描いた浜弓場双原作のアニメ、「おちこぼれフルーツタルト」1話は8分近くをアバンに割いている。もちろん、これはだらだら作ってしまったというわけではあるまい。
ちょっと面食らうのほどの時間を過ぎてフルーツタルトという主人公・衣乃達のユニット名が紹介されるが、ここで重要なのはTV番組「おちこぼれフルーツタルト」を作ると伝えていることだろう。アバンを引っ張ったのはおそらく、作品名と同じ番組を作る宣言まで描く必要があったから。そう、彼女達のTV番組とはこの作品そのもの・・・・・・・・のことなのである。
 
 
 

 おちこぼれフルーツタルト 1話「いってきますヒガコ!」

 

 

 

1.日常系からもこぼれ落ちているもの

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©浜弓場 双・芳文社/おちこぼれフルーツタルト製作委員会
マネージャーの穂歩によれば、劇中で作るTV番組「おちこぼれフルーツタルト」とは「おちこぼれアイドルの日々の努力を記録するって内容」だと言う。アニメジャンルとして変換するなら、この番組内容はいわゆる日常系作品に分類されると言っていいだろう。
しかし日常系作品は日常を描いたものであるが、全ての日常を描いているわけではない。私達が見るのはその中のごく一部、(アクション作品等と比べれば劇的ではなくとも)重要な部分に過ぎない。見方を変えれば日常系作品とは実際のところ、登場人物の周囲で四六時中カメラを回しておいて必要なものだけ「編集した日常」を映しているとも言える。
 
 

2.カメラが映す作品の外側

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©浜弓場 双・芳文社/おちこぼれフルーツタルト製作委員会
日常系アニメをそう捉えた時、穂歩が衣乃達のなんでもないやりとりにまでカメラを回している――彼女が作る番組そのものよりも長い時間撮影している描写は、本作が30分アニメであることは特別な意味を持ってくる。劇中では「おちこぼれフルーツタルト」は5分番組となっていて、劇中世界の人間はこの30分を5分しか見ることができない。ならば私達が見ているのはつまり、先に書いた日常系の作りをした時には除去されるものを含んだ「編集前の日常」ということになる。象徴的なのはBパートが初回放送(第1話)を見守る衣乃達、Cパートはその初回に対する視聴者の反応がどうだったかといった描写で終わることで、これらはまさしく番組の外側にあるものだ。劇中世界の人間には見られないはずの場面だ。なのに私達は、それを見ることができる。
 
番組作りにおいて、本来は編集され除去される余剰部分。しかし本作において、私達は擬似的に例外的にそれを見ることができる。編集される前の衣乃達の日常を、劇中世界の人間よりは見ることが許されている。かつて派手な作品が取りこぼすものを拾って日常系は作品性を確立したが、日常系すら取りこぼすものの中にも新しい何かが生まれる可能性は誰にも否定できない。
アイドルやおちこぼれといった要素はけして珍しくはない。しかしこのアニメはその設定によって、「日常系アニメの外側」という稀有なものを私達に見せているのだ。
 
 

3.感想

というわけでおちこぼれフルーツタルトの1話レビューでした。なぜこんなメタなレビューになっているんだ……? この先もこの路線で見ていくことになるのか自分でも想像がつかず、正直言って困惑しております。いや4人ともかわいいけど! マネージャーの穂歩さんもおっぱい眼鏡っ娘で強いけど! おっぱいは視聴率で強いっていうかTwitter実況で強そうねとかツッコミ入れたいけど!
これは今期のダークホースなのか、僕の気の迷いなのか果たして。次週が楽しみというよりドキドキしてきました。