世界一大好きなライバル――「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」7話レビュー&感想

同好会の3年生、いつも眠たそうな近江彼方が主役となる「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」7話では、彼女の妹・遥が登場する。都内でも有名な東雲学院スクールアイドル部でセンターまで務めながら礼儀正しい彼女を侑は天使とまで呼ぶが、それはけして遥の気立ての優しさだけが理由ではない。眼前にあまりにも高い壁があるから、おごりたかぶるなど考え付きもしないのだ。
 
 
 

1.遥にとっての彼方とは

これまで同好会ではいつものんびりした様子を見せていた彼方だったが、今回明らかになるのはそんなイメージとは正反対の頑張りぶりだ。家計を助けるため週5日のバイトをこなし、忙しい母に代わって家事をこなし、更に奨学金を受けて勉学にも励む。遥にとっては彼方こそが超人的存在であり、スクールアイドルのセンター1つではとても敵わない。遥にとって彼方の家事を手伝おうとするのは負担軽減を願ってであると同時に、尊敬する姉に少しでも近づく手立てなのである。
 
 

2.大切に思う≠大切にする

姉を助け姉に近づきたい遥の願いはしかし、彼方になかなか届かない。手伝いはいいよいいよと断り、無理を重ねていることを指摘しても認めようとしない。
彼方は確かに遥を大切に思っている。だが、大切に思っているだけ大切にできるわけではない。姉を助け姉に近づきたい妹の思いを酌まないことは、妹を大切にしているとは言えない。スクールアイドルを辞めて姉の応援をする遥の決断は賢明なものとは言えないけれど、それは彼方自身の過ちの裏返しを受けているに過ぎない。
 
 

3.彼方が大切にすべき自分とは

同好会の皆と話す中で、彼方は自分と妹の関係を捉え直す。自分と妹は似た者同士だった。妹を守ることが姉の役割だと思っていたけれど、妹だって姉を守りたい。自分が世界一大好きな妹は、自分を世界一大好きでいてくれた。その愛しい思いは一方通行ではなく、肩を並べるものだった。互いが互いを大切に思っている点で、彼方と遥は既にライバルだったのだ。それが分かれば、するべきことは見えてくる。
 
遥が最後と決めていた舞台を先取りして、彼方は見事なライブを披露してみせる。それはある種の挑発だ。自分はこんなに素敵なことができる、あなたはそこで止まってしまっていいのかという、挑発だ。彼方がこれまでしてこなかったその行為はすなわち、彼女が遥を認めた証に他ならない。認めることで、彼方自身もまた前に進むことができる。
大切に思うことと大切にすることはイコールではない。けれど、自分の大切なものを大切にすることで人は、自分自身もまた大切にすることができるのだ。
 
 

感想

というわけでアニガサキの7話レビューでした。「自分を大切にする」が本作のテーマと見立てて僕は視聴を続けているわけですが、この7話のそれが何なのかがなかなか掴めず普段より更に時間を要することに。最後の一文が浮かんで、ようやく姉妹のライバル関係という視点を消化できた感じです。人気スクールアイドルグループとして東雲学院が登場したことで、従来のシリーズ作品と本作もまたライバル関係として見えてくるのもとても良かった。
 
さて、次回は桜坂しずく回。一昔、いや二昔前なら恋愛SLGのパッケージヒロインを務めてそうなイメージを抱いているのですが(偏見か?)、彼女にはどんな物語が待っているのでしょう。