一周回って裏返し――「のんのんびより のんすとっぷ」2話レビュー&感想

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©2021 あっと・KADOKAWA刊/旭丘分校管理組合三期

距離感の扱いが光る日常系アニメ「のんのんびより のんすとっぷ」。2話冒頭、畑作りを手伝うれんちょんは一穂の想像以上に喜んだり怒ったりする姿を見せる。一穂が目測を誤った結果と言えるが、今回はその目測の誤りを起点に三幕に分けて読んでみたい。
 
 

のんのんびより のんすとっぷ 第2話「蛍が大人っぽかった?」

 
日曜日、宮内れんげに「野菜の苗を植えるので、手伝って欲しい」と声をかけたのは姉の一穂。
れんげはやる気満々で分校の皆も誘います。一穂がれんげをからかって「ピーマンの苗を植える」と嘘をつくと、ピーマンが嫌いなれんげは逃げ出そうとします。
越谷夏海と越谷小鞠も、ピーマンは苦いので実は苦手だと打ち明けますが、一条蛍は大丈夫とのこと。
皆、「蛍は大人だなぁ」と納得するのですが…。

 (公式サイトあらすじより)

 
 

1.一幕目:正しくなければいけないか

畑作りやピーマンの苗の嘘へのれんちょんの反応が一穂の想像を超えていたように、人は正確に物事を測れない。楽しかったり恐ろしかったりすればれんちょんと小鞠は土掘りで人にかかる恐れも見落とすし、慌てていなかった夏海も自分の発言がビニールハウス作りの提案になってしまうことに気付かなかった。基本的に目測は不正確なものであり、だから思わぬドジやヘマが生まれる。
 

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©2021 あっと・KADOKAWA刊/旭丘分校管理組合三期
しかし目測が不正確なことは、不幸ばかりを生むものだろうか? れんちょんがトマトの苗をまるで人間であるように不正確に捉えた(測った)ことは結果的に、よりトマトを育てやすいビニールハウス作りに繋がった。何かを生んだり育てる極意が、対象をまるで人間のように捉えることにあることは珍しくない。不正確な目測は時に、正確な目測よりも良い結果を生む場合もあるものだ。
 
 

2.二幕目:人は正しくなれるものか

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©2021 あっと・KADOKAWA刊/旭丘分校管理組合三期
人の目測は不正確で当てにならない。では物差しで測れば正確になるのか? あかねが越谷家を訪れる二幕目では、そんな疑問に答える出来事も描かれる。
 
このみの高校の後輩・あかねは今回、越谷姉妹と蛍を紹介されるが、あかねは小学生の蛍を年上と勘違いしてしまう。実年齢を知っているから私達には笑い話だが、彼女の勘違いに落ち度があるかと言われれば全く無い。なにせ蛍はあかねの先輩のこのみより背が高く、落ち着いてもいる。越谷姉妹と並べて同じ物差しで測ったなら、蛍を年上と判断するのは全く自然なことだ。
また、卓が砂糖を置いていってくれたのを幽霊の仕業と勘違いしたことについても、卓の存在を知らないあかねは「ここにいない誰かが砂糖を置いていった」ことまではしっかり確認している(測っている)。他の家族の存在に思い至らなかったのも、卓の影の薄さを知らなければ無理からぬことであろう。
 
人の目測は不正確で当てにならない。では物差しで測れば正確になるのか?と言えば、そうとは限らない。物差しを使っても目盛りを読み間違えれば測り間違えるように、道具や基準が正確でもそれを使うのが人である限り正確にはならない。
 
 

3.三幕目:正しくなれたら幸せなのか

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©2021 あっと・KADOKAWA刊/旭丘分校管理組合三期
道具や基準が正確でも、それを使うのが人である限り正確にはならない。では、仮に正確に測り正解できたら必ず幸せになれるものだろうか? 三幕目で描かれるのは一幕目の反対側、正確さの追求のたどり着く先だ。
 
あかねが測り間違えたように、蛍は物差しからいささかズレた存在である。小学生なのに成人並みの身長があり、子供の嫌いなピーマンも大丈夫。けれどどんなに大人びて見えても彼女は小学5年生だ。両親に駄々をこねて甘える様子は、年齢からすればごく自然な姿だろう。
そんな彼女の姿をたまたま目にしたこのみは、蛍を年齢通り――つまり「正確に」扱おうとするが、そこにはおかしさが漂う。おかしいからおかしいのではない、正しいからおかしいのだ。正解だからおかしいのだ。
 
こうしたおかしさは、2人の様子を見た小鞠まで蛍を年齢通り扱い膝枕させてあげようとしたことで爆発する。蛍は自分の扱いがあんまりに子供扱いが過ぎるから逃げたのではない。部屋に人形を大量に作るほど小鞠が好きな彼女にとって膝枕は幸せ過ぎるから、正解過ぎるからこそ駄目なのである。
 
 

4.まとめとおさらい

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かくて3つの幕が降りた後、蛍はあんな姿は皆に見せられないと再決心するものの今度は、ペットのペチを可愛がるはしゃいだ様子をこのみに目撃される。このラストはまるで、今回の話のおさらいのようだ。
 
一幕目分:蛍のペットのペチはエサとしては不正確な草を食べるが、そんな様子も蛍には愛おしい→不正確な目測も幸せを呼ぶことがある
二幕目分;このみは恥ずかしがって帰った蛍に謝ろうとするが、彼女が逃げたのが小鞠好きによるものとは知らない→基準は正確だが、事態を正確には把握できていない
三幕目分:蛍はペチに感じたかわいさと幸せを正確に表現したが、だからこそそれを人に見られるのは恥ずかしい→正解過ぎるから一周回って駄目
 
 
人の目測は自分で思う以上に不正確だし、不正確だから生まれる幸せもある。そして時に、度の過ぎた正確さは一周回って不正解なのだ。
 
 

感想

というわけでのんのんびより3期2話のレビューでした。当初は「人の目測は自分で思う以上に不正確だし、正解は時に不正解」の二段で書くつもりだったのですが、書く前に夕食食べながら音声だけ聞き直してたらだいぶ分量のある四段に。何かこう、かえって本作向けのレビューから離れてしまった気がしないでもない。いや、オチがオチなのもあって今回はひたすら楽しかったんですよ。蛍の赤面に合わせて電車が出る場面とか腹抱えて笑ったんですよ。なのにどうしてこうなった。
 

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©2021 あっと・KADOKAWA刊/旭丘分校管理組合三期

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しかしこのみの容姿に何か変な懐かしさがあると思ったらアレだ、引退した艦これの嫁艦・時雨ちゃんと髪型が一部被ってるんだ。それはかわいく見えても仕方ない。念の為言っておくと、本作で一番かわいい娘と言われれば僕はなっつんを挙げるので誤解なきようお願いします。