"同様"の限界――「ワンダーエッグ・プライオリティ」3話レビュー&感想

f:id:yhaniwa:20210127235627j:plain

©WEP PROJECT
大切な誰かを取り戻すため少女達が戦う「ワンダーエッグ・プライオリティ」。新たに現れた少女・川井リカはアイと同様にワンダーキラーを倒し、アイとは違い蘇らせたい相手の彫像に蹴りを入れる。同様だからこそ違う、これは3話の始まりから終わりまで続く要素だ。
 
 
 

ワンダーエッグ・プライオリティ 第3話「裸のナイフ」

 
いつものように地下の庭園でエッグを買い、帰路につこうとしたアイの前に突如現れた少女・川井リカ。
アイたちと同じくエッグの世界で戦うリカだが、初対面のアイにお金を貸してほしいと頼んできたり、勝手に家まで押しかけてきたりと、いきなりアイを振り回す。
誰にでも調子よく振る舞うリカに、ねいるは不信感をにじませるが、リカはアイの家に泊まるとまで言い始め……

 (公式サイトあらすじより)

 
 
 

1.川井リカの物語はねいると対照的

f:id:yhaniwa:20210127235647j:plain

©WEP PROJECT
初対面の相手に借金を頼み、あとをつけて家を探り、呼ばれてもいないのに友達として訪れ宿泊する。最初はそっけなかったねいると対照的にリカは馴れ馴れしく、今回はそれが不協和音を呼ぶ。ジュニアアイドルという経歴も含め、3話の前半でアイが感じるのはリカが自分達と違う存在であることだ。しかし一方で、これほど"違う"ことが気になるのはリカがアイ達と"同じ"場所に立っているからでもある。もし街で見かけただけであったりすれば、アイはリカを気に留めることもなかったろう。単に「違う世界に生きている人間」でしかなかったはずである。
 
リカが自分達と同じ立場にいるからこそ、アイは違いが気になり苛立つ。どうしてそんなに図々しいのか。どうしてそんなに計算高いのか。大切な人を生き返らせる戦いに、どうしてこんな人を財布ちゃん呼ばわりするような人間がいるのか。
リカが頻繁にアイと行動を共にし、立ち位置が"同期"しているからこそ――つまり同様であるからこそ違いは際立つ。そしてそもそもリカ自身、この態度がアイ達に受け入れられるものとは思っていないだろう。図々しい態度は他者を利用するためだけでなく、他者と心を許し合う関係になるのを防ぐ防壁としても機能している。リカは他者と同様の位置に立つことで、逆に自分と他者の間に線を引いている。
ねいるが当初アイとは"違う"ことをまっこうから主張していた2話とこの3話は、お話そのものも対照的な作りになっていると言えるだろう。
 
 

2."同様"の力と限界

f:id:yhaniwa:20210127235914j:plain

©WEP PROJECT
2話でねいるは"違う"ことを主張したが、アイが最終的に知ったのはねいるも自分と"同じ"であること、同様であることだった。前半が対照的だったこの3話も、後半アイとリカの関係の結び直しはやはりそれを鍵に行われる。同期によって同時にエッグの世界へ入り込んだアイとリカは、同じ場所で戦うが故の普段と違う問題に手を焼きもするが次第に手を取り合っていく。アイはリカの軽薄さの下の真情を問い、本当の意味での"同期"を求めていく。リカが生き返らせたい相手・ちえみを財布呼ばわりするのはけしてどうでもいい相手と思っているからではなかったし、彼女がちえみに向ける愛憎は確かにアイにも覚えのあるものだった。
 
全然違って見えた相手はしかし、やはり自分と同様の存在だった。それがアイとリカを共闘させ同期させるが――3話はそこから敵を倒してハッピーエンド、とならない。ワンダーキラー・阿佐ヶ谷マダムのサチコの攻撃は、同じように立っていたアイとリカの両方ではなくリカだけに当たりその体を固めてしまう。同期したはずなのに、待っていたのは異なる運命だった。
 
ここで思い出すべきは、前半でも描かれた「同様であるからこそ違いが際立つ」ことであろう。今回の防衛対象・みこ&まことワンダーキラー・サチコにしてからがそうで、両者はどちらも自殺した歌手のゆうゆのファンだ。それが度を越したものであることも変わらない。"同様"だ。そして同様である分だけ、両者は「熱狂的なファン」「一線越えた妄想ちゃん」として著しく差別化される。死後の立場や後者がワンダーキラーになったことによる姿の違いは、生前の彼女達が同様だった分だけ大きく見える違いが視覚化されたものなのである。
アイとリカもまた、その違いを見逃さなかった。「チヤホヤされるのは今の内だよ」と、自分と将来のお前達は同様だと罵るサチコに、2人は「いや、おばさんみたいには」「ならないならない」と違いを最大化した。あなた同様におばさんにはなるが、あなたのようにはならないと違いを際立たせたのだ。それは正解だけれども、その分だけ2人もまた、本来は些末な違いを最大化され異なる運命をたどる。激怒したサチコの攻撃の射線がほんの少しリカよりだったというだけで、同じように、同様に立っていたのにリカだけはそれをかわせなかった。同様であっても、同じ結果にはならなかったのだ。
 

f:id:yhaniwa:20210127235824j:plain

©WEP PROJECT
同様であるからこそ、違いは際立つ。前回友達の条件として示された"対等"が示せるのは、両者が"同様"であることまで。どれだけ似ていようと、それは"同一"ではないのだ。
 
 

今週のメモ

 
・一皮むけばヌメヌメよ、みーんな
・対等は同一ではない
・"大人の男"に媚びる女は怖い
 

感想

というわけでワンエグの3話レビューでした。ねいるが入院したままでもターゲットや相方が違ってもお話は続く。テーマは連結しているのを意識させられる回でした。これに更にもう1人加えて4人の物語を1クールで解決できるのか、と言えばできるのでしょうが、どんなハンドルさばきを見せてくれるのかとても気になります。花びらがアカ&裏アカの唇になるの、よく思いつくな。
 

f:id:yhaniwa:20210128000855j:plain

©WEP PROJECT

f:id:yhaniwa:20210128000843j:plain

©WEP PROJECT
あとねいるが遠目にアイを見つけてニッコリするの、本当にホッとする。友達……