心からの里帰り――「のんのんびより のんすとっぷ」3話レビュー&感想

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©2021 あっと・KADOKAWA刊/旭丘分校管理組合三期
見る者の実体験とは違う、しかしどこか自分にもあった過去を呼び覚ます「のんのんびより のんすとっぷ」。3話の主役となるのはれんちょんの姉ひかげと夏海。家を出て東京の学校に通っているひかげが姿を現すのは、当然ながら里帰りの時。今回はたっぷり30分、里帰りのお話だ。
 
 

のんのんびより のんすとっぷ 第3話「昔からこうだった」

 
夏、居間で越谷夏海がくつろいでいるとチャイムが鳴りました。
玄関を開けると、そこにいたのは宮内ひかげ。夏休みになって東京から帰ってきたようです。
「さっきまで新幹線に乗っていたから、体を動かして遊びたい」というひかげに、夏海はノリノリでボール遊びを提案します。ひかげがいない間に考案した「必殺確殺シュート」を披露すると言って、夏海は勢いよくボールを投げたのですが…。

 (公式サイトあらすじより)

 
 

1.里帰りに必要なもの

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©2021 あっと・KADOKAWA刊/旭丘分校管理組合三期
里帰りとはもちろん生まれ故郷に戻ることだが、言葉の定義としての里帰りと実感としての里帰りは同じではない。開発などで面影の全くなくなった場所では必然的に里帰りの感覚は薄まるし、一方で本作は視聴者に幼かった頃の自分を思い出させる――つまり里帰りしたような気持ちにさせるところが魅力の一つとなっている。実感としての里帰りとは、心が過去に戻るから成立するものなのである。
 
心が過去に戻ることが里帰りなら、ひかげがまず夏海に会いに行ったのは当然であり必然だ。夏海とかつてのように遊ぶことが今回ひかげにとって「実感としての里帰り」のスイッチであり、だから彼女は3つも4つも幼くなったようにはしゃいだり壊した盆栽の後始末に頭を悩ませたりする。ひかげに誘われた瞬間に元気になったり賢くなったかと思えばアホな案に戻る夏海にしてもまた、ひかげとの再会によって故郷にいながら里帰りしている。そういう2人だからこそ、昔と違って素直に謝るつもりだったのに結局昔に帰ったように盆栽を隠して叱られてしまうのだろう。
 
 

2.里帰りに始まり、里帰りに終わる

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©2021 あっと・KADOKAWA刊/旭丘分校管理組合三期
盆栽の一件をきっかけに喧嘩してしまうひかげと夏海だが、スッキリしない気持ちで入った寝床で自分達は昔から喧嘩ばかりだったことを思い出す。記憶の里帰りの中で、思い出す。今も昔も夏海は子供で、ひかげは年上だけど子供っぽくて、けれどやっぱり年上で。喧嘩ばかりだったのと同じ回数だけ、仲直りもまた繰り返してきた。
 
自分も夏海も昔のままではない。背丈はもう夏海の方が上だし、暑ければ外で遊ぶのもためらってしまう。けれどそれでもやっぱり2人は2人で、心の中に「秘密基地」は残っている。そこにあった2人の関係性は、残っている。だから夏海は秘密基地へと誘う。仲直りという名の"里帰り"をしようと誘うのだ。
里帰りから始まったこの3話は、より奥深くへの里帰りを示して幕を閉じるのである。
 
 

感想

というわけでのんのんびより3期3話のレビューでした。なっつんは今も幼少時も変わらずかわいいですが、秘密基地に行こうと照れ臭そうに甘える場面はいつにも増してかわいかった。なんというかやっぱり夏海は「妹」のかわいさがある子だよなと思います。ひかげがなんだかんだ本気で構えるからこその慕いようでもあるんだろうなと。その点で行くと、次回はれんちょんが年上の立場になるのがどんな物語を生むのか楽しみです。