成長の在り処――「のんのんびより のんすとっぷ」4話レビュー&感想

 

f:id:yhaniwa:20210206022205j:plain

©2021 あっと・KADOKAWA刊/旭丘分校管理組合三期
まだ見ぬ懐かしき景色、「のんのんびより のんすとっぷ」。4話、れんげは自分で育てたトマトの美味しさに感動する。彼女が感じているのはその味だけでなく成長の喜び。今回はそれをわたし達視聴者にも味わわせてくれるお話だ。
 
 

のんのんびより のんすとっぷ 第4話「トマトを届けるサンタになった」

 
春に植えたトマトがたくさん実り、収穫の季節がやってきました。
自分で作ったトマトを食べた宮内れんげは、あまりの美味しさに感動し、皆へ配りに行く事にしました。
真夏のサンタクロースになってトマトを配り歩くれんげは、最後に駄菓子屋へ向かう途中、泣いている見知らぬ女の子に出会います。近付いて話を聞いてみると、どうやら迷子のようです。
泣き止まない女の子に困ったれんげは…。

 

 
 
 

1.子供には見える繋がりの糸

f:id:yhaniwa:20210206022222j:plain

©2021 あっと・KADOKAWA刊/旭丘分校管理組合三期
美味しさに感激しトマトを配りに行くれんちょんは、自らを真夏のサンタクロースと称する。もちろんそこに「いや違うでしょ」とツッコむことは可能だ。サンタは一般的に冬のものだし、れんちょんはサンタ衣装に身を包んだりするわけでもない。ただトマトの赤色や皆に配るといった要素には確かにサンタっぽさがあって、れんちょんの発想はまったくのデタラメというわけでもない。
いかにも子供らしい発想は一致度を機械的に判定すれば落第ものだろうが、全く一致しないわけでもないのである。
 
 

2.大人の発想と子供の発想は綱引き

f:id:yhaniwa:20210206022251j:plain

©2021 あっと・KADOKAWA刊/旭丘分校管理組合三期
トマト配りをサンタと結びつけたように、子供の発想は定まっていない認知や知識を想像で補うもの。ならば大人の発想はその逆、しっかりした手順を踏みぴったり合わせることだろう。サンタのマネをするのであれば季節を鑑み、衣装を用意するように。
しかし今回、その発想は必ずしも上手く行かない。いい例が駄菓子屋の楓で、彼女は手錠には鍵があるという大人の発想あればこそ玩具の手錠の外し方を思いつかず、ドタバタ劇を演じる羽目になってしまった。楓は大人であるが故に、手順に囚われてしまったのだ。
 
このように大人の発想は着実なものだが、それだけが正解とは限らない。そしてもちろん、子供の発想だけが正解とも限らない。しおりが迷子になったのは道のり(手順)をしっかり踏んでいないからだし、れんちょんは解除の仕方を考えもせずに楓におもちゃの手錠をかけた結果困らせてしまった。楓と逆にこちらは、子供であるが故に手順から全く外れてしまったと言える。
 
大人の発想に寄り過ぎれば発想は自由を失うが、子供の発想に寄り過ぎれば思考は不安定になってしまう。大人と子供の線引が明快でないのは、両者の発想が綱引きの関係にあることも無縁ではないのだろう。では、人の成長とはどこにあるのだろう?
 
 

3.成長の在り処

大人と子供に明確な線引は無い。そしてどちらがいいとも一概には言えない。しかし今回のラストからも明らかなように、れんちょんは確かに成長している。それはけして大人の発想だけになることでも、子供の発想に留まることでもない。
 
例えば迷子になっていたしおりを助けるのに、れんちょんは大人の発想と子供の発想の両方を駆使している。つくねとトマトという丸み以外全く共通点の無いものを繋げるのは子供の発想だし、家が分からなければ駐在所に連れて行くというのは筋道だった大人の発想。また後日遊んでいる最中に寝てしまったしおりを小さな体でおんぶしようとするのは子供の発想だが、自分もしおりより年上なのだという認識は大人の発想だ。
 

f:id:yhaniwa:20210206022308j:plain

©2021 あっと・KADOKAWA刊/旭丘分校管理組合三期
れんちょんはまだ幼い。手錠の一件では子供の発想が前面に出て楓をピンチに陥らせてしまったし、自分に付き合ってごっこ遊びしてくれたひかげを「その歳で肩車で喜ぶなんて」と大人の発想で我に返らせてしまったりもする。まだまだ不安定だ。
けれど自分より年下のしおりの前では彼女は「お姉ちゃん」として振る舞えるし、振る舞える自分であろうとする。この時彼女の中では、大人の発想と子供の発想の綱引きが起きている。その綱引きの中にきっと、彼女の未来がある。
 
人の成長(今回のれんちょんの場合は「お姉ちゃん」への成長)はきっと、大人の発想と子供の発想の両方を使いこなせるようになっていくことにあるのだろう。
 
 

感想

というわけでのんのんびより3期4話のレビューでした。大遅刻すみません。いや難解だった。「アバンにその回のテーマが宿る」というのは僕の持論ですが、今回それを探すのは本当に難しかった。太陽の恵みとえぐみを繋げてしまうちぐはぐさについてでどうかな、と書き始めるまでに1.5日かかったし、その後「子供の発想」を賛美する感じになりかけるもむしろ「大人の発想」との綱引きでは無いかと考え直し。そしてそうやって見ると、一穂がれんちょんにトマトを食べるにあたってちゃんと水洗いするよう言う所が「大人の発想」になってくるな……などと。ずいぶん時間がかかってしまいました。れんちょん、大きくなっていくなあ。
レビュー書きには苦労しましたが、笑えてかわいく泣けもすると素敵なお話だったと思います。楓にくすぐり地獄されてるなっつんが見たい。