けもの道もまた道――「のんのんびより のんすとっぷ」5話レビュー&感想

f:id:yhaniwa:20210212173718j:plain

©2021 あっと・KADOKAWA刊/旭丘分校管理組合三期
山道、あぜ道、道にあふれる「のんのんびより のんすとっぷ」。5話でこのみはけもの道を見つけて喜ぶが、その奥にいたのはあかねで野うさぎなどではなかった。けもの道はけものだけのものとは限らない。今回は劇中の様々なけもの道を見ていきたいと思う。
 
 

のんのんびより のんすとっぷ 第5話「ものすごいものを作った」

越谷小鞠は、夏休みの自由研究で妹の夏海からロボットに仮装させられて困った様子。
それを電話で聞いた一条蛍も、留守番をしている今日中に作りたい物がありました。それは、『おしゃべりロボ』と『歩行ロボット工作キット』。
父親から借りたパソコンでしゃべる内容を入力し、その2つのロボットを動物にまたがったこまぐるみの中に入れます。広いリビングに移動して、スイッチをオンにすると…。

 

 
 

1.けもの道を再定義しよう

f:id:yhaniwa:20210212173734j:plain

©2021 あっと・KADOKAWA刊/旭丘分校管理組合三期
人は普通けもの道を通らない。整備されていない道を通るのは危険だし安全な道はいくらでもあるのだから、そんなところは通らないのが常識や分別というものだ。逆に言えば、常識や分別を持たない者がすることやることは「けもの道を通っている」と例えることもできるだろう。幼いれんちょんがする手と逆立ちのけんけんぱは、けんけんぱとしては邪道ならぬけもの道である。
このように人とけものの境を考えた時、今回はとてもあやふやなものが登場している。そう、蛍が作ったメカこまぐるみだ。姿は人を模していて声も出すが、犬に乗っているし中身は機械。野生動物と間違えられもすれば、妖怪かとすら勘違いされる。その存在は今回、徹底的に未分化である。
 

f:id:yhaniwa:20210212173755j:plain

©2021 あっと・KADOKAWA刊/旭丘分校管理組合三期
未分化であるが故に、メカこまぐるみの歩みはメチャクチャだ。壁を認識して方向を変える機能はあるが十分ではないし、外と内の区別もつかない。数々の誤解からも言えるようにその存在自体も十分な分化はされず、鷹にエサと間違えられそうになったりすらする。メカこまぐるみの前に、人の通る道とけもの道の区別はない。
 
 

2.通らない道は通れない道ではない

f:id:yhaniwa:20210212173813j:plain

©2021 あっと・KADOKAWA刊/旭丘分校管理組合三期
しかしそもそも、人の道とけもの道はそれほど明確に分かれたものだろうか。例えばあかねは、吹奏楽の練習に行く日を間違えていた恥ずかしさ(常識と分別あるゆえの恥ずかしさ)でこのみから隠れていたが、その結果彼女は無駄に逃げ回り疲れ果てる羽目になった。人の道を通っているはずなのに、いつの間にかけもの道に足を踏み入れてしまっていたのだ。
 
メカこまぐるみを作った蛍にしてもその分化の怪しさは同様で、大好きな小鞠のぬいぐるみにロボを仕込む彼女の行為は人に言えない=けもの道であるはずなのに、あかねの記憶や小鞠の解釈はそれ以上にあやふや・メチャクチャだ。「ぬいぐるみにオオサンショウウオの幽霊が取り付いた」などという結論、誰が予想できたろう? けれどそのけもの道っぷりにも関わらず、事態は丸く収まってしまう。常識や分別とは別の道にも関わらず、ゴールにたどりついてしまったのだ。
 

f:id:yhaniwa:20210212173830j:plain

©2021 あっと・KADOKAWA刊/旭丘分校管理組合三期
れんちょんのけんけんぱは常識的なけんけんぱとは違うけれど、けして邪道ではないしそこにはそこなりの面白さがあった。
わたし達は常識や分別で選択肢を安定させる。けれど"けもの道"として除外してしまうような選択肢だって、案外ちゃんと通れる道なのだ。
 
 

感想

というわけでのんのんびよりの3期5話レビューでした。月~木の他作品レビューが嘘のようにスイスイ書けた……毎回こうだと楽なんですが。小鞠の結論があまりにアホかわいくて笑ってしまいました。メカこまぐるみに限らず小鞠自身が未分化よね。というか、子供がか。れんちょんも「けん」「けん」「ぱー!」かわいかったなあ。
様々な障害に目もくれずのっしのっしとメカこまぐるみが進んでいく姿にも奇妙な迫力があって面白かったです。次回も楽しみ。