検める度、交差する度――「SK∞ エスケーエイト」9話レビュー&感想

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©ボンズ・内海紘子/Project SK∞
過去と現在が交差する「SK∞ エスケーエイト」。9話冒頭、チェリーは自分達とのビーフを愛抱夢が断る理由を推測し確かめようとする。今回の話の交点もまた、"確認"にこそある。
 
 

SK∞ エスケーエイト #09「あの時、俺たちは特別だった」

 

ジョーのパワースケートに苦戦し、追い込まれるランガ。そこで感じる心の変化に戸惑っていく。そして始まった愛抱夢vsCherry blossom戦。Cherry blossomは愛抱夢に対して、ある確信を持っていた。二人の過去が明らかになる。
 
 
 

1.もう1人の確認者

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©ボンズ・内海紘子/Project SK∞
Cherry blossom「確かめさせてもらうぞ、お前の心を!」
 
トーナメントで愛抱夢と激突したチェリーは、彼にラフプレーまで仕掛けるほど接近してその心根を確かめようとした。ビーフを受けなかったのは自分達を傷つけたくないからではないか、本当の彼はまだ死んでいないのではないかと確認を試みたのだ。結果彼は愛抱夢にスケートボードで殴打され敗退となったが、"確認"の結果打ちのめされた人間はもう1人いる。隠れてトーナメントを覗きに来た歴だ。
 
スケートボードに乗ることから半ば離れてしまった歴は、自分と同じく非才で競技者から降りた先達の姿を見たこともあって再びSへとやってきた。「どんな形でも関わり続けたかった」「すごい選手の応援ができるのは幸せなこと」……ランナーからシューズメーカー勤務に転身した先達はそう言った。歴も実際、心折れたランガを叱咤し応援せずにはいられなかった。
しかしレースの後に歴の心にあったのは、祝福でも喜びでもなく悔しさだった。応援などでは満足できない、ランガと並んで滑りたい思いだけだった。歴はランガと共にありたいが叶わぬ自分を"確認"したのだ。
 

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©ボンズ・内海紘子/Project SK∞
歴「俺、やっぱり応援なんて嫌だ。俺はお前と並んで滑りたい!」
 
確認とは既知を検める(あらためる)行為であり、それは∞の交点を再び通過するのに等しい。そしてこれまでも描かれたように、∞の交差は繰り返す度に強くなる。自分とランガの間の隔たりを"確認"した歴は前々回以上にショックを受け、今度はSに入るステッカーすら返却してしまったのだった。
 
 

2.才がなければ並んで滑れないのか

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©ボンズ・内海紘子/Project SK∞
歴はランガと並んで滑れない自分を痛感している。自分の非才に打ちのめされ、望みは叶わぬと諦めている。しかし、並んで滑るのに必要なのは才なのだろうか。
 
今回はジョーとチェリーの二人のレースがそれぞれ描かれるが、正反対に見える彼らはどちらも共に「誰も比肩できない才の持ち主」だ。
歴がジョーを「パワーだけなら最強のスケーター」と評したように、ジョーのパワーブレイクやミサイルスタイルは余人には真似できない。チェリーのラブ・ハッグ対策にしても、AIアシスタント通りに動ける正確さを持つ者は他にいない。つまり並んで滑れるかが才だけで決まるなら、ジョーもチェリーも誰も並ばせず負けなかったはずなのだ。しかし結果を見れば分かるように、誰も比肩できない才の持ち主であるはずの二人は共に敗れて終わった。
 

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©ボンズ・内海紘子/Project SK∞
ジョーは自分ほどの脚力を持たぬランガにしかし、自分のパワーを利用され並ばれ、そして負けた。
チェリーは自分ほどの正確さを持たぬ愛抱夢にしかし、それ故に驚きが無くつまらないと評され、並ぶことを拒絶され負けた。
 
歴は自分が非才だから並んで滑れないと思っている。けれどジョーは相手より才あっても並ばれたし、チェリーは相手より才あっても並べなかったのだ。才は、並んで滑るための必要条件ではない。
 

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©ボンズ・内海紘子/Project SK∞
ジョー「今の愛抱夢は一人ぼっちで滑ってる。あいつはすごいスケーターだけど、でも幸せじゃないんだろうな。だからあんなスケートになる」
ジョー「でもな、俺達は一人ぼっちじゃない。そうだろ、薫」

 

ジョーとチェリーは共に負け、チェリーに至っては重傷だが、それでも二人は酒を酌み交わす。自分達は一人ぼっちでないと"確認"する。一人ぼっちでない彼らはそう、並んで滑っている。
答えはここにあったし、それは歴や愛抱夢にもあったものだ。見失おうとも迷おうとも、歴達もきっと再び交差する時を迎えるだろう。遠く離れた分だけ、繰り返しの分だけ、∞の交点はより強く輝くだろう。
この9話は、それを確認して幕を閉じたのだった。
 
 

感想

というわけでエスケーエイトの9話レビューでした。前回は更新をお休みしてしまってすみません。レビューレベルに思考が働かず困惑していたのですが、勘違いして花粉症の薬(ノスポール鼻炎錠FX)を倍量飲んでたことが分かりまして。最近の花粉症薬は副作用が出にくくなってるそうですが、倍量では頭も鈍るに決まってる。飲むのやめてみて4,5日でだいぶ調子が戻った気がしますが、もう少し様子見。
 
歴がボード作りに収まってしまうと前回劇中のTVで見た話そのままなので、そうならなかったのは安心でありそうならないように作ってあったなと納得でもあり。次回は総集編を挟むようですが、続きを楽しみに待ちたいと思います。