床と夢――「オッドタクシー」6話レビュー&感想

f:id:yhaniwa:20210513024440j:plain

(C)P.I.C.S./小戸川交通パートナーズ
縁と切れ目が錯綜する「オッドタクシー」。6話は意外な結びつきの開示や誕生、あるいは逆に切断や消失が描かれる。敵対は対立から、共闘は共感から生まれる――とは限らない。
 
 

オッドタクシー 第6話「なんでやねんが聞きたいよ」

小戸川は今日も色々な客を乗せる。新宿のキャバクラに連れて行かれたりもする。
公式サイトあらすじより)
 

1.同じ思いでなくても、同じ思いでも

f:id:yhaniwa:20210513024457j:plain

(C)P.I.C.S./小戸川交通パートナーズ
今回小戸川は今井を再びタクシーに乗せるが、自分を神とばかりに崇める今井に小戸川は困惑する。小戸川にしてみれば崇められる覚えはないのだが、彼が適当に言った数字で宝くじ10億円を当てた今井にすれば確かに小戸川は大恩人に違いない。この時二人の間には埋めがたい違いがあるわけだが、それは彼らの関係を険悪にしたりはしない。今井は何をすれば小戸川に恩返しできるか模索し続けるし、小戸川も今井の好意を無下にはできない。結果、それは強盗から小戸川を逃がす形で実を結ぶこととなった。
 

f:id:yhaniwa:20210513024510j:plain

(C)P.I.C.S./小戸川交通パートナーズ
これと対称的なのは小戸川と白川の関係で、ドブと繋がりがあり剛力の病院から薬を盗んでいた彼女に小戸川は好意を表せない。白川が今は本当のことしか言っていないと訴えても、小戸川は二度に渡ってもう自分と関わらないよう答えてそれを拒む。実を結ぶことだけは無いよう、拒み続ける。
 
同じ思いでないから一緒にいられないわけではなく、同じ思いだから一緒にいられるわけでもない。ドブに借金漬けにされ暴力を振るわれながらも彼の弱さに依存してしまう白川のありようからも分かるように、人と人の関係はそう単純なものではない。
 
 

2.同じ床の条件

同じ思いであるかどうかは、一緒にいられるかどうかに実はあまり関係がない。それをもっとも分かりやすく教えてくれるのは、後半明らかになるミステリーキッスの二階堂ルイとホモサピエンスの馬場の交際関係だ。
 

f:id:yhaniwa:20210513024523j:plain

(C)P.I.C.S./小戸川交通パートナーズ
ルイ「頑張らなくていいって。わたし自分の強過ぎる向上心の対極にいる馬場さんが好きなんだ」
 
売れるためなら人も殺しそうとすら言われるルイと、相方の柴垣に毎度けなされるほど欲のない馬場。向上心という点では対照的な二人だが、ルイはだからこそ馬場が好きなのだと言う。彼が自分も売れたいと言えばむしろ不満を訴えすらする。この時、向上心の違いは恋の障害どころか支援にすらなっている。
 

f:id:yhaniwa:20210513024538j:plain

(C)P.I.C.S./小戸川交通パートナーズ
また、小戸川とドブはこれまで散々対立してきたが、ドブの拳銃で小戸川を狙うハロウィン男へ対抗すべく共闘することになる。小戸川は条件として白川の借金帳消しを追加させるが、彼女の存在はこれまではむしろ二人の対立を煽ってきたものだ。しかしここではむしろ、彼女を巡る対立する思いは共闘を堅固にする手助けとなっている。
ルイと馬場、小戸川とドブの場合、思いは同じではなくむしろ対極的であったり対立するからこそ惹かれたり手を組む関係が成立している。一方で、お笑いのM1グランプリへの思いを等しくする馬場と柴垣はスケジュールが合わずネタ合わせすらできない。
 
 

f:id:yhaniwa:20210513024551j:plain

(C)P.I.C.S./小戸川交通パートナーズ
重要なのは、思いが同じであるか対照的であるかどうかではない。二人の思いに"接点"があるかどうかだ。繋げる術や機会さえあれば、対照的な向上心や敵味方の間柄すら強固な繋がりに転化し得る。けれど繋げる術や機会がなければ、互いが互いを思っていても透明な壁に遮られてしまう。
意思があれば乗り越えられる壁――そんな容易なものではないだろう。少なくとも小戸川達は、私達はそこまで超人ではない。では、果たして。
 
 

感想

というわけでオッドタクシーの6話レビューでした。こちらも遅くなりましてすみません。遅れはどうにか取り戻しましたし忙しいのもとりあえず山越しましたが、フルダイブ6話のレビューを木曜の内に書けるかしらん。
 
「同じ思いでないと一緒にいられるが、同じ思いだと一緒にいられない」を結論に書くかと思ったのですが、違和感をならして"接点"を終わりに持ってくる形になりました。ガラスの無効に馬場を見る柴垣の姿がホント切なくてもう。そして小戸川とドブの共闘にも不覚にもワクワクしてしまったり。ドブの小物っぽさに同情し、樺沢の暴走に引いちゃうあたり視聴しててコントロールされてる自分を感じてしまいます。
 
次回予告を見てると柿花が大変そうですが、折返しを迎えて物語はどこへ向かうのか。楽しみなのは間違いありません。
 
 

<いいねやコメント等、反応いただけるととても嬉しいです>