問い直す正当性――「戦闘員、派遣します!」7話レビュー&感想

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©2021 暁なつめ, カカオ・ランタン/KADOKAWA/「戦闘員、派遣します!」製作委員会
後半戦へ突入する「戦闘員、派遣します!」。7話ではアリスがこの異星の魔法を疑う様子が描かれる。今まで一緒に戦っておいて今更――なぜ今更問い直すのだろうか?
 
 

戦闘員、派遣します! 第7話「ペテン師系婚活女子」

転送機は設置したものの、六号の悪行ポイントは
マイナスの状態で地球には戻れない。
増援の怪人トラ男を迎え、六号とアリスは任務を続行。
現地の生物を調査すべく、愛剣のローンに追われる
スノウを案内人に雇って森へ向かう。

公式サイトあらすじより)

 
 

1.問い直すという行為

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©2021 暁なつめ, カカオ・ランタン/KADOKAWA/「戦闘員、派遣します!」製作委員会
六号「アリスから聞いたぞ!転送成功率が5割を切るガラクタなんかで送ってくれやがって!」 
 
「問い直す」という行為は重要だ。以前と変わっていることもあるし、問い直すのをやめた結果、見落とされていた問題に足をすくわれることは珍しくない。上手く行ったから、決まったことだから、過ぎたことだからでは済まされない。転送装置の成功率が5割を切っていたのは問い直しで見えたものだし、ヒーローの反攻作戦はキサラギの世界征服を問い直す危機にあたる。
 

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©2021 暁なつめ, カカオ・ランタン/KADOKAWA/「戦闘員、派遣します!」製作委員会
六号「オ、オーク!? 知的生命体は流石に無理だって!」
 
目の前の肉が知的生命体の肉と知って六号が食欲を失ったように、当たり前になっているものを問い直すのは無意味な行為ではない。ならば、地球では実在しない魔法や呪いをアリスが問い直すのも当然だし必要な行動ではあるだろう。なにせこの異星はキサラギの侵略対象であり、六号とアリスの任務はそのための調査にこそあるのだから。……ただ、それを行うアリスの態度にはいささか問題がある。
 
 

2.アリスの頑なさを問い直せ

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©2021 暁なつめ, カカオ・ランタン/KADOKAWA/「戦闘員、派遣します!」製作委員会
六号(思えば俺は、この星のことをまだ何も知らない。こいつだって、実は優しい生き物なのかも……)
 
先に述べたように、問い直す行為にはきちんと意味がある。巨大で恐ろしく見える怪物と友達になれもするし、食肉は生命を奪った結果得られるものだと再認識する機会にもなる。ただ、あくまで公正さを念頭に置かねば問い直しとは言えない。最初から決めつけてしまえば、思い込みを激しくするだけの有害な結果にすら繋がる恐れがある。そういう意味で、アリスの呪いへの疑念は問い直しとしては失格だ。
 

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©2021 暁なつめ, カカオ・ランタン/KADOKAWA/「戦闘員、派遣します!」製作委員会
アリス「随分と安っぽいホログラム使ってんな」
 
魔法陣の輝きはシートの仕込み、現れた悪魔はホログラムと断じ、挙句の果てには遠隔操作の端末でない証拠を求めすらする。アリスは呪いが嘘だという前提を維持するために理屈を組み立てているに等しく、その態度は問い直しからは程遠いものだ。しかしそれは、単にアリスが偏狭な思考の持ち主だからだろうか? おそらくそうではない。次の段では、彼女の態度をこそ問い直して・・・・・みよう。
 
 

3.アリスは本当は何を問い直しているのか

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©2021 暁なつめ, カカオ・ランタン/KADOKAWA/「戦闘員、派遣します!」製作委員会
アリス「アンドロイドに心臓はねーよ」
 
今回の呪いの検証では、アリスはしばしば自分が何物か強調する。科学の結晶、心臓なきアンドロイド、永遠に歳を取らない存在……そう、アリスは六号をサポートするために作られたアンドロイドだ。美少女型ではあっても、本来は少女ですらない機械だ。これは本来問い直すまでもない、分かりきった事実である。しかし六号は前回、彼女のことをなんと呼んだろう?
 

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©2021 暁なつめ, カカオ・ランタン/KADOKAWA/「戦闘員、派遣します!」製作委員会 「戦闘員、派遣します!」6話より
六号「よーし、任せろ相棒!手始めに俺の部隊の連中を全員剥いてくる!」
 
「相棒」……六号はアリスをそう呼んだのだ。サポート型アンドロイドではなく、相棒と呼んだのだ。
人は普通、ただの機械を相棒とは呼ばない。ただの道具を相棒とは呼ばない。すなわちアリスを相棒と呼ぶことは、サポート型アンドロイドとして規定された彼女の自意識を揺るがすことに他ならない。アリスは今、自分はいったい何物なのか問い直す・・・・必要に襲われていると言える。
ならば今回、科学の使徒たる己を強調して呪いの力を否定する彼女の態度も浅慮だけによるものとは限らない。ぐらついた自己を保とうと、防衛反応として科学を第一に据えていると考えるのもけして空虚な想像とは言えないのではないか。
 

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©2021 暁なつめ, カカオ・ランタン/KADOKAWA/「戦闘員、派遣します!」製作委員会
トラ男「語尾ににゃんを付けるとモテるって聞いたにゃん!」
 
人が己を再構築するのは、現状の自分を問い直した時だ。キサラギから増援として送られたトラ男は、己の語尾や容姿を問い直しよりモテる自分へと再構築しようとしている。そして、変わりつつあるのは彼だけではない。
 

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©2021 暁なつめ, カカオ・ランタン/KADOKAWA/「戦闘員、派遣します!」製作委員会
アリス「なお、悪魔と呼称される存在は大したことがないと判明した……にゃん」
 
語尾に「にゃん」などと付けたアリスを、アスタロト達は書き間違いと考えて疑いもしない。そんなアリスは今まで存在しなかったわけだが、しかし現実に彼女はそんな試みを行っている。己の正当性を、問い直している。
物語の終わる時、アリスはどんな自分を再構築しているのか。改めて僕は、今後の彼女が楽しみでならない。
 
 

感想

というわけで戦闘員7話のレビューでした。初見時はアリスの態度に「うーん?」となったのですが、問い直していく内にいっそう彼女がかわいらしく思える仮説にたどり着きました。やはりアリスさんこそ本作至高のヒロイン。
OPに出ていた謎生物(もけもけ)や謎モンスター(トラ男)の正体も分かったし、これからの話も賑やかそう。期待してます。
 
 

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