「戦闘員、派遣します!」最終回12話、巨大ロボの前にグリムやロゼは頼れずまた頼ってはいけない。最後の鍵となるのは、仲間ではなく相棒だ。
戦闘員、派遣します! 第12話(最終回)「強い相棒と賢い相棒」
ラッセルが蘇らせた古代兵器は、ロボットのような巨大な人型の兵器だった。ハイネへのゲスな言動の数々に激怒したラッセルは、巨大ロボットを操って六号に襲い掛かる。絶体絶命の危機に陥る中、六号はアリスに策を求める。
(公式サイトあらすじより)
1.ラストバトルは二人舞台
六号「何にポイント使うのか知らんが後は任せるぜ、賢い相棒」アリス「頭と性格は不安しかねえが……戦闘に関してだけは信頼してるよ、強い相棒」
ラッセルとのラストバトルは事実上、六号とアリスの二人舞台だ。六号が時間を稼ぐ間にアリスが巨大多脚型戦闘車両「デストロイヤー」を組み立て、ラッセルの巨大ロボを討つ。いつも通りアリスは口を開けば毒を吐くし六号もツッコむが、共に根底にあるのは互いへの深い信頼であることが互いを「相棒」と呼ぶ姿から伝わってくる。
3話レビューでも書いたように、六号にとってアリスとの関係は他の女性メンバーとは一線を画すものだ。恋愛が話題に上がるアスタロトやスノウとは当人の性格や六号のアプローチの下手くそさもあって進展しないし、結婚願望の強いグリムもそれ故に六号とは漫才にしかならない。素直で良い子のロゼとは9話で一線を越えかけたが、待っていたのは食われかねない恐ろしい有様だった。
勇者であるはずのティリスの兄が勇者たり得なかったように、本作では正当な資格を持って見える者はむしろ不適格の烙印を押される運命にある。そして同時に、不適格に見える者が逆に正当な有資格者となるのも悪の組織のヒラ戦闘員の六号が主人公を務めていることから明らかだ。なら、本作のヒロインになるには誰よりもヒロインらしくなく振る舞えばいい。
アリス「待たせたな、相棒。後は自分に任せとけ」
容姿や言動と言った部分でのアリスのヒロインらしくなさは既に明らかだが、ラッセル戦でのアリスのヒロインらしくなさは別格だ。なにせ彼女が担うのは相手の巨大ロボを打ち倒すための真打ち兵器の召喚と操縦、そして現れるのは六号がボロボロのピンチに陥った時に颯爽と――デストロイヤーの禍々しい姿を差し引いても、これはむしろ主人公の仕事だ。まったくもってヒロイン(≠女主人公)らしくない。そう、アリスは六号の主人公としての体面 を破壊してしまったのである。そしてこれまでがそうであるように、本作において体面の破壊は一周回って体面の守護だ。
六号「アリスーーー! やっちまえ!」
改造手術を受けた戦闘員である六号は確かに強い。制限解除とRバッソを使えば魔王軍四天王の一人・ガダルカンドをバラバラにできたほどだ。だが、巨大ロボット相手に勝ってしまうのはさすがに度が過ぎている。文明レベルがどうこうという話ではない。巨大ロボットに勝てるような人間はもはや「特撮的悪の組織のヒラ戦闘員」ではない。
あくまでヒラ戦闘員だから六号に許されるのは時間稼ぎまでで、撃破は他の者に任せなければならない。それも六号がいらない子にならないで済むような、あくまで外的で一時的な強さ――その解決策こそが、アリスにデストロイヤーを操縦させヒロイックに活躍させるというものだった。
人も物語もねじくれた本作で、六号のヒロインを務めるのは並大抵のことではない。時には彼から主人公性を取り上げることすら必要で、それは一般的古典的なヒロイン像とは大きく異なった姿になる。「相棒」とは、その困難を成し遂げる者にこそ与えられる立場なのである。
2.もっとも遠く、もっとも近く
アリス「お前がじじいになって動けなくなったらくたばるまで自分が面倒見てやるよ、相棒?」
「相棒」は特別な関係だ。仲間はいくらでも増やせるが、相棒は一人しかいない。親密さという点では恋愛関係に近く、しかし恋愛関係となればもう相棒とは呼べない。恋愛にもっとも近く、もっとも遠い関係。親友や幼馴染もこれらに比較的近く、その関係の強固さ故に恋愛が成立しにくいのは周知の通り。
しかし繰り返すが、本作は有資格者と不適格者が反転する作品だ。ならば相棒は本作のヒロインにとってもっとも得難い、そしてもっとも有利なポジションへと変化する。実際、前半のバトルでの「相棒」呼ばわりから見える信頼は「ダーリン」「ハニー」に匹敵する(実際にそんな言い方をする二人は見たくないが)。
六号「もうお前で妥協するよ」アリス「ふん、お前で妥協とか言ってくれるじゃねえかクソ野郎。自分がアンドロイドで良かったな、普通の女ならぶっ殺されるところだぞ」
戦いが終わり、3日間寝ていた六号とアリスのやりとりは事実上、カップルのイチャつきである。妥協でもなんでも六号はアリスを選ぶし、アリスは六号が年を取って動けなくなっても添い遂げるつもりでいる。寝ていた六号の3日間の下半身の世話はある意味セックスよりも先の段階の甲斐甲斐しさで、もはや彼の世話はアリス以外には務まらない。
ただ、アンドロイドだからと言ってアリスの体が六号好みの高身長ナイスバディになったり、T○N○Aを内蔵して擬似的に生殖可能になってしまってはいけない。アリスはあくまでヒロインらしくないからこそ本作のヒロインたり得ている。資格を得てしまったら、彼女だって途端に不適格者に転落してしまう。
トラ男「男なのは知ってるにゃん!むしろ男の娘は大歓迎だにゃん!ラッセルにゃんはかわいい顔してるから、きっとスカートがよく似合うにゃん」
六号はこれからもこの星で暴れるだろう。残念なキャラばかりかもしれないが、彼の周囲にハーレムと呼べる状況も発生するかもしれない。けれど、彼の相棒は一人だけ。彼の隣に立つのは一人だけ。
キサラギ=アリスこそ六号にとって最良無敵の相棒、ベストヒロインなのである。
感想
というわけで戦闘員の最終回12話レビューでした。アリスさんかわいいかわいいである程度書いたんですが微妙にしっくり来ず、モヤモヤしてる内にデストロイヤー関連の描写が「体面の破壊」に繋げられることに気付きました。
「特撮的悪の組織のヒラ戦闘員が主人公」というメタ性が視聴を決めた理由の一つでしたが、いざ視聴を始めてみるとアリスさんがかわいくてかわいくてですね。人気投票でもぶっちぎりの1位でしたが当然の結果だと思います。安いツンデレでは見られない、隠れた好意への愛おしさを感じました。
一方で主人公の六号については、初期の「小物だけどカッコいいやつ」というイメージが中盤で「手のかかるヒーロー」に変わり、アリスはほとんど母のように彼の世話を焼いているので、続きがアニメで見られるなら彼の方がアリスを助ける話も見たいなあ、と思います。今回みたいに体も張ってるけど、それでもまだ恩は返せてないと思う。
賑やかで楽しい作品でした。スタッフの皆様、お疲れさまでした。
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相棒の条件――「戦闘員、派遣します!」12話レビュー&感想https://t.co/u0Maq0fnbB#sentoin#戦闘員派遣します#戦闘員布教します#アニメとおどろう
— 闇鍋はにわ (@livewire891) June 21, 2021