敵役になるために――「戦闘員、派遣します!」11話レビュー&感想

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©2021 暁なつめ, カカオ・ランタン/KADOKAWA/「戦闘員、派遣します!」製作委員会
いくつもの体面を破壊してきた「戦闘員、派遣します!」。11話も当然その例から漏れないが、今回の体面の破壊者はハイネ達魔王軍の方だ。
 
 

戦闘員、派遣します! 第11話「悪の幹部の泣かせ方」

トリス王国と魔族が同盟し、両軍はグレイス王国へ侵攻を開始する。
緊急事態の中、魔族が手に入れようとしている古代兵器を横取りすべく、
トリス王国内の遺跡に向かった六号たち。
ゲスな作戦で簡単に遺跡最奥部にたどり着くのだが……。

公式サイトあらすじより)

 

1.六号の抱える論理的弱点

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©2021 暁なつめ, カカオ・ランタン/KADOKAWA/「戦闘員、派遣します!」製作委員会
六号「これだけのお膳立てがされてるのに、夜襲なんてショボい作戦で済ませられるかよ」
 
体面を破壊することで体面を保つ。これまでの話、六号はそのようにして「悪の組織のヒラ戦闘員の主人公」という難題をクリアし続けてきた。今回の古代遺跡探索を巡る作戦でも作戦でもその手際は健在で、スノウ程度の考える卑怯な作戦は彼の足元にも及ばない。夜襲程度が卑怯と思う人間からすれば、魔王軍に遺跡探索の露払いをさせて最奥の古代兵器だけいただく作戦にドン引きするのは当然の反応だろう。一般的な主人公の体面は確かに破壊されているが、「悪の組織のヒラ戦闘員の主人公」としての六号の体面は見事に保たれている。
 
ただ、この小悪党ぶりでトップを走ることで主人公の体面を保つ行動には一つの弱点がある。相手が善人の場合、小悪党的な振る舞いはむしろそちらの主人公性を高めてしまいかねないのだ。
 
 

2.主役の体面

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©2021 暁なつめ, カカオ・ランタン/KADOKAWA/「戦闘員、派遣します!」製作委員会

ラッセル「いいさ、今に見てなよ。ハイネがピンチの時は僕が守ってあげるからね!」

 
善人相手の場合、小悪党的な振る舞いはむしろそちらの主人公性を高めてしまいかねない。今回六号がぶつかるのはそういう問題だ。六号達に尾行されているとも知らずハイネとラッセルは遺跡を探索していくが、そこでは幼いラッセルを気遣う優しいハイネと生意気さを装いながらハイネを慕うラッセルの良好な関係が描かれる。二人の親密さ懸命さは、小悪党ぶりの足りないロゼやスノウがいたたまれなさを感じてしまうほどだ。つまりこの時、ハイネとラッセルは敵役の体面・・・・・を破壊している。描写の種類から言っても、この時の彼らには主人公性すら漂っている*1
 
 

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©2021 暁なつめ, カカオ・ランタン/KADOKAWA/「戦闘員、派遣します!」製作委員会
敵役の体面が破壊されれば主人公性が現れる。不意打ちで死にかけ姉と慕う女性を人質に取られ、高まるラッセルの主人公性は一つの頂点にたどり着く。彼が目覚めさせた古代兵器とは巨大ゴーレム――子供が操り、専用の発進ゲートを持つ白い巨人であった。すなわちこれは「主役ロボット」なのである。番組が違えば、ラッセルは砂の王に唯一対抗できる力の持ち主(=勇者)として魔族の希望となっていたことだろう。
だが、この番組は典型的ロボットアニメではない。そしてティリスの兄である勇者が顔も見せずに行方不明になったように、主人公らしい存在が主人公になれる物語でもない。
 

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©2021 暁なつめ, カカオ・ランタン/KADOKAWA/「戦闘員、派遣します!」製作委員会
ラッセル「お前ら全員、虫けらのように踏み潰してやる!」
 
繰り返しになるが本作は「体面を破壊することで体面を保つ」物語である。だからラッセルの手に入れた主人公的な力も「敵役の体面を破壊することで敵役の体面を保つ」ためにこそ機能する。事実、初登場時からおちょくられ今回は不意打ちで殺されかけすらしたラッセルはいまや、六号を踏み潰せるほどの力を手に入れているのだ。敵役としてこれほど相応しい相手もないだろう。そして敵役が勝手に敵役らしさを得てくれたなら、六号はただそれに立ち向かうだけで主人公性を獲得できるわけでもある*2
 
さて、この最後の戦いに六号は果たしてどんな姿を見せてくれるのか。あるいは案外、このロボットとの戦いはあっさり終わってしまうのか。いずれにせよ、六号の主人公性が丁寧にお膳立てされるのは間違いなさそうだ。
 
 

感想

というわけで戦闘員の11話レビューでした。ラッセルの意外な活躍にビックリです。まあよくあるクソガキ幹部のロールは初登場の時点で六号に封じられてたし、納得の役回りという気もする。今回の一件がきっかけでハイネの胸を意識するようになってしまうラッセルと、子供だと思っていた彼に不意にときめいてしまって困惑するハイネの純愛おねショタラブコメください。
 

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©2021 暁なつめ, カカオ・ランタン/KADOKAWA/「戦闘員、派遣します!」製作委員会
あと椅子の上に立って六号やトラ男との身長差の埋めるアリスさん is cute.いやもはや何やっててもかわいい。
 
 

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*1:怪物退治の唯一の希望の子供というシチュエーション、実に主人公的

*2:アリスさん「自分達は悪の組織だ。奴らを利用して美味しいところを横取りだ!」