目まぐるしき交わり――「小林さんちのメイドラゴンS」7話レビュー&感想

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クール教信者双葉社/ドラゴン生活向上委員会
人と竜が混ざり合う「小林さんちのメイドラゴンS」。7話はファフニールとルコアという珍しい組み合わせで始まり、しかしルコアの冗談を真に受けたファフニールは早々に立ち去ってしまう。誰かと誰かが一緒にいられる時は、貴重なものだ。
 
 

小林さんちのメイドラゴンS 第7話「一般常識(みんなずれてます)」

夜闇が支配する路地裏に、怪しい人物が2人。不穏な空気を醸し、何やら密談を交わしている。「なんだい?こんなところに呼び出して」――2本角の痴女が言う。「お前の力を貸せ」――執事服の陰鬱男が返す。最凶最悪のタッグが今、動き出す――。
 
 

1.噛み合うのは一瞬だけ

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アバンから続く今回最初の話はファフニールの同人誌作りであり、彼は前回の同人誌即売会での雪辱を果たそうとしていた。以前作ったものは文章オンリーなので売れなかったという分析(滝谷の助言)から、漫画仕立てにしようという彼の発想は正しい。が、実行の段になるとそれはおねショタの恋愛を期待させてショタがお姉さんを呪うという斜め上の展開にすっ飛んでしまう。ニーズに合っていたのは一瞬だけで、そこから先は噛み合わなくなってしまった。
 

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小林さん「しご……仕事ーっ!?」
トール「休日ですよ」

 

噛み合うのは一瞬や一部だけで、その前後は分かれているのが普通。こうした展開は、この7話全体に見られるものだ。小林さんが寝坊して大丈夫なのは休日だけだし、今回カンナや才川と行動を共にする子供達は壁新聞を作るために集まっているはずなのにちょっとしたことで脇道に逸れてしまう。人とドラゴンもまた一人ひとりも結局は別の存在であるから、全てが同じであるなどということはありえない。
 
 

2.一瞬や一部の交わりだから

全てが同じであるなどありえない。しかし、全部同じでなければ用をなさないのかと言えばそれもまた違う。
 

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ファフニール「次は腕を不規則に回転させ、へし折りながら空を飛べ!」
 
今回は間接的な描写が多い。絵のモデルとしてルコアがファフニールに頼まれる無茶振りは分解されたフィギュアや桃で代替され、エルマの「退屈(たいくつ)」という言葉に至っては同音のたい焼きと靴で画面がダジャレに走る始末。
これらはどれも全部が同じではない。しかしこうしたものは、全部同じであったら逆に意味がない。違っているからこそ、同じ部分が笑いとして成立している。
 

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ファフニール「お前にしかこんな器用な真似は頼めん」
ルコア「嫌な信頼のされ方!」

 

絵のモデルを頼まれたルコアが無茶振りに困惑しつつも応えるのは、変な形ではあるが確かに信頼されているから。
本来寝ているはずの深夜に小林さんがトールと顔を合わせたのは、たまたまその日は寝過ぎていたから。
才川がしばしば前言を撤回するような行動を取るのは、それが全ては大好きなカンナに関連しているから。
違っているからこそ、これらの合う部分はいっそう際立つ。
 

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妖精「ありがとうございます、この御恩は一生忘れません」
 
眠りひとつとっても人間とドラゴンの生態は違うし、同じ子供の中ですらその性質は一人ひとり異なる。そうした異なるものが合わさる時は花火のように短く、目まぐるしく過ぎ去っていく。けれどそれは一つ一つがかけがえがなくて、振り返った時に愛おしい気持ちにすらなるものだ。カンナと偶然出会った妖精は元の世界に戻してもらえるまでのわずかな時間を一生忘れないと言うが、忘れないのはきっと彼だけではない。
 

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物語は最後、今日もてんでバラバラなカンナ達の班5人がそれでも一緒に過ごす様子を描いて幕を閉じる。あっという間に過ぎていく日々はしかし、間違いなく子供達の土台となることだろう。全然異なる者達が一緒にいられた時間は、別々になっても消えることはない。
滝谷は言った。何かを自分で作ってみると、それが自分にとってすごい財宝に見えると言った。
目まぐるしく過ぎるその時間こそは、何にも代えられぬ財宝なのである。
 
 

感想

というわけでメイドラゴン2期7話レビューでした。毎度ながら今回も共通点を探すのに一苦労。「自分を曲げる」とか「偽物⇔本物」なども考えましたがしっくり来ず、アバンを念頭に一番多くのシーンと整合性が取れたのがこれでした。カンナのクラスメートは前回も顔出ししていて、個性がすんなり飲み込めるのが良かったなと思います。
 

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中央の眼鏡っ娘は将来美人さんになる。いや現時点で既に群を抜いてかわいらしい。
 
 
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