姉妹は夜空の隣星――「白い砂のアクアトープ」14話レビュー&感想

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©projectティンガーラ
本当の幕開けを迎える「白い砂のアクアトープ」14話。前回はすっかり自信を喪失してしまっていたくくるだったが、風花もティンガーラに就職したのを契機に展望が開けてくる。ここまで変化をもたらす風花は、くくるにとってどんな存在なのだろう?
 
 

白い砂のアクアトープ 第14話「ペンギンチェイサー」

仕事が上手くいかず落ち込むくくるに声をかけたのは、沖縄に帰ってきた風花だった。翌日、諏訪からバックヤードツアーの準備を任されたくくるは、1週間後の開催に向けて知夢や同僚の島袋薫たち飼育員に協力をお願いして回る。一方、くくると同じく「アクアリウム・ティンガーラ」に就職した風花は、「がまがま水族館」での経験からペンギンの飼育を担当することに。そこでチーフの知夢からテストを出される。
 

1.くくるは遭難している

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くくる「飼育以外の仕事なんて考えてもみなかった」
 
再会した風花にくくるは、自分にとって営業は全く未知の仕事なのだとこぼす。彼女は自分をあくまで飼育員と認識していたのだから、五里霧中といった気持ちになるのは無理もない。
がまがまでのやり方も前回否定された彼女は、言ってみれば海上で遭難したようなものだ。自分がどこにいるのか分からなければ、人は自分が前に進んでいるかどうかすら自信を持てなくなってしまう。がまがま水族館を失い、就職で祖父母とも離れて暮らし、飼育員でもなくなった「営業部企画広報担当 海咲野くくる」は、己の座標を見失っている。
 
 

2.座標の目印

己の座標を知らねば人はどこにも進めず、くくるはそれを見つけ出せずにいる。しかし、座標とは一人で見つけるものだろうか?
 

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薫「雅藍洞部長が引き受けろって言うからね。僕が嫌とも言えない」
 
魚類飼育チーフの島袋薫は当初バックヤードツアーへの自部門の参加に否定的だったが、飼育部長の雅藍洞に引き受けるよう言われれば逆らいはせず受け入れる。彼女は雅藍洞の座標によって自分の座標も定めたのであり、座標とは良くも悪くも他者の影響を大きく受けるものなのだ。くくるにとってのそれが誰か……は言うまでもないだろう。彼女の「お隣さん」として再び姿を現した風花である。
 
 

3.姉妹は夜空の隣星

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風花「知識も経験も全然だから、何かできることをって思って」
 
飛行機の欠航で2日遅れの配属が象徴するように出遅れている風花は、自分の座標決定に果敢な姿勢を見せる。知識も経験も乏しいからと潜水士の資格を取得し、配属先のケープペンギンチームのチーフ・南風原知夢の出したペンギンの個体認識のテストにもなんとか合格。知夢からすれば失敗例のがまがま水族館でしかも1ヶ月バイトしただけのなんともふわふわした印象だった風花は、見事飼育チームの仲間としての座標を獲得した。
 

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くくる「ううん、わたしもちゃんとやんなきゃ!」

 
風花のこうした姿勢は落ち込んでいたくくるへの励ましにもなり、くくるは再び水族館での仕事への気力を取り戻す。「お隣さん」の風花が頑張っているのに腐っていては、今度は自分の方が置いていかれてしまう。くくるは風花を目印に、その隣を自分の座標と定めたからこそ再び歩き出せた。風花のおかえりなさい会の後、彼女への感心を口にしたくくるが前へ歩き出し、また風花が追い抜けばそれを追いかけくくるも走り出す場面はなんとも象徴的だ。
 
自分だけの不動の座標を持つ人間など滅多にいない*1。人はむしろ、他人を目印にしてこそ自分の座標を決められるものなのだろう。知夢が風花や同僚のマリナを認めればこそバックヤードツアーへのペンギンチーム参加を認めたように。それを見学した幼い姉弟が、ペンギンの姉弟を見て自分達の関係も再認識したように。そして、これはくくるの目印となった風花もまた同様だった。
 

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くくる「わたしがここに来たのは、くくるがいるからだよ」
 
バックヤードツアーのプレ実施を終えたくくるは風花がいると頑張れると感謝を述べるが、風花は自分が戻ってきたのはくくるがいるからだと返す。考えてみれば「お隣さん」なのはくくるにとっての風花も、風花にとってのくくるも同じこと。アイドルとしての夢潰えた風花に、新たに座標を定めさせてくれたのはくくるだった。
 

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©projectティンガーラ
見渡す限り広がる海の上では、あっという間に自分の座標は失われてしまう。しかし空に輝く星々を見れば、人はそれを取り戻すことができる。自分がどこにいるのか、どこに行けばいいのか理解できる。くくると風花は、互いが互いに場所を教え合う夜空の隣星となりぼしなのだ。
 
 

感想

というわけで白い砂のアクアトープ14話のレビューでした。スケジュールの関係で劇場版マクロスΔのレビューが先になり、こちらが遅れてしまってすみません。初見時は前回の課題をそのまま解決したような印象があってあまり面白みを感じなかったのですが、アバンの「お隣さんだね」に着目した結果このレビューが出来上がりました。前回のレビューで宿題だった風花の役割についても答えが出せて一安心。愛が重い……
 

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ところでなんでこのお客さんは指出しグローブしてるんだろう。描いた方が楽という気もしないのだが一体???
 
 

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*1:あるいはくくるを振り回す副館長の諏訪の例からすれば、持ってはいけない?