"小林次元"は死なない――「ルパン三世 PART6」0話レビュー&感想

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©モンキー・パンチ/TMS・NTV
怪盗の新たな歴史を刻む「ルパン三世 PART6」。0話は小林清志最後の次元大介となる単独エピソード。半世紀に渡る時代の変化に"小林次元"が出した答えとはなんだろうか?
 
 

ルパン三世 PART6 第0話「EPISODE 0 ―時代―」

「とうとう俺も潮時かもしれねぇな」
――監獄の中で、次元大介はめずらしく人生について考えていた。
味気ないドローンによる追跡や、機能性だけを追求した玩具みたいな銃、現代の最先端技術にあぐらをかいた警官たち……
ロマンの欠片もない、つまらない時代――そう嘆く次元は、泥棒稼業から足を洗い、ルパンたちと別れる決心をする。

公式サイトあらすじより)

 

1.次元の悩みは正しいのか

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©モンキー・パンチ/TMS・NTV
警官「AIドローンはお前達の動きを予測して動く。拳銃の弾丸など当たらんさ」
ルパン「なかなか賢いじゃないの」

 

「EPISODE 0 ―時代―」の副題の通り、この0話は時代の変化を大きく感じさせる内容だ。ルパン達を追跡するAIドローンは難なく次元の射撃をかわし、彼らを捕縛する警官が構えるのは玩具のような*1プラスチックの拳銃。第1シリーズが放映された1971年にこんな光景を想像していた人はいないだろう。
大量の警官からコミカルに、小気味よくルパン達が逃げたあの頃はもう終わってしまった。次元はそれが嫌で泥棒稼業をやめようと考える。「変わる」時代にウンザリして「変わらない」道を選ぶわけだが――それは本当に「変わらない」選択だろうか?
 
 

2.不変を選んだはずなのに

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©モンキー・パンチ/TMS・NTV
次元「くっ、こんな銃撃つ気にもなれねえ」
 
言うまでもないが、次元大介はルパンの第一の相棒で射撃の名人だ。ルパンの無謀な行動に呆れながらも行動を共にし、得意の射撃でバッタバッタと敵を撃ち倒す。それが視聴者が抱く「変わらない」次元大介像はそういうものだろう。しかし、今回の次元はそういう定石にのっとらない。先に書いたようにAIドローンに彼の射撃は歯が立たず、脱獄時はプラスチックの拳銃への嫌悪感から射撃すらしない。アジトの打ち上げでの陽気さにもどこか別れの翳が漂い私達は素直に楽しめない。今回の次元はいつもと同じようで、いつもとは違う。
 

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©モンキー・パンチ/TMS・NTV
次元「こいつは上等な酒だ。不味いはずがねえのに……」
 
そう、変わる時代を嘆いているが、本当に変わっているのは今回の次元の方だ。不変への拘泥というトリモチに絡め取られた姿に往年の格好良さはなく、それはもう単なる老いぼれでしかない。そういう変化の象徴として、次元は美味いはずの酒を味わえなくなっている自分に気がつくのである。
 
 

3.変化に必要だったのは

不変に拘泥した結果、逆に変化してしまう。こうした滑稽なほど哀れな逆転は世界にあふれている。「清濁併せ呑む」と不変を謳って堕落するのも、逆にリニューアルしたはずのシリーズ作品が初めての人間には古色蒼然として見えることも珍しくない。この落とし穴に陥らないためには何が必要なのか? 次元を引き止めないのかと責める五ェ門へのルパンの返しから私達は、それに対する0話の答えを知ることができる。
 

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©モンキー・パンチ/TMS・NTV
ルパン「時代が変わりゃ自分も変わる、俺はそうやってきた。けど次元大介って男だけは、そんな俺を黙って受け入れてくれた。アイツだけは変わらずにいてくれた。だから俺は俺でいられたのかもしれねぇ」
 
半世紀の日々の中、ルパン三世は確かに変化してきた。山田康雄逝去に伴う栗田貫一への声優交代はもちろん、TVシリーズPART5では新たなレギュラーを設けるようなこともしている*2。それが変化と言えない不変に留まるものであったらシリーズの歴史は潰えていたはずだが、2012年の「LUPIN the Third -峰不二子という女-」を皮切りに時代に合わせて変化してきたからこそ新たなTVシリーズはコンスタントに発表され続けている。そしてこの変化を支えてきたものこそは、ただ一人これまでレギュラー続投を続けてきた小林清志を始めとした不変の部分であった。
 
 

4."小林次元"は死なない

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©モンキー・パンチ/TMS・NTV
不二子「そんなに酔っ払って囮が務まるかしら」
次元「俺を誰だと思ってる?酔い醒ましにちょうどいい」

 

変化とは難しいものだ。全く何も変わらなければ時代に取り残されていくし、かといって時代に振り回されて変わり過ぎれば本質を見失ってしまう。次元にとって変えてはいけない本質とはルパンの相棒であること、玩具のような(デザインの)拳銃は扱わないことだった。
逆に言えば、そうした要諦を保つ限りあらゆる変化はものの数ではない。「変わるくらいで変わったりはしない」のだ。瓶に入っていようがスプレーに入っていようがアルコールが警察のトリモチ状の新素材を無効化できるように。AIドローンに対抗できる跳弾も、結局は次元の銃の腕あっての技であるように。
 
ルパンの相棒である限り、射撃の名人である限り次元大介は変わらない。たとえ次週より始まるPART6で小林清志から大塚明夫へ声優が変わろうと、だ。
 

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©モンキー・パンチ/TMS・NTV
「声優が変わろうと、小林清志が築き上げてきた次元大介というキャラクターは寸毫も変わりはしない」……それこそは"小林次元"が最後にたどりついた答えだったのだ。
 
 

感想

というわけでルパン三世の6期0話レビューでした。こうして書いてみると「0話」の響きはやはり興奮を誘うものがありますね。そういう子供っぽさはやはり、中年になっても変わらず残っているものらしい。
 
当初ルパンの「お前はクラシックだよ、次元」をしばらく「お前はプラスチックだよ、次元」と聞き間違えていたこともあり構想が定まらず悩んだのですが、繰り返しの視聴でそこに気付いてからはすんなりとレビューが書けました。PART5は新境地への挑戦がなされたシリーズだったと聞いていますので、そこからの連続性もある0話だったのだと思います。
昔の次元の声と比べると老いは隠しようもありませんが、それでもやはり勇退は寂しいものですね。小林清志さん、次元大介役本当にお疲れさまでした。かっこ良かったです。
 
 

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*1:おそらく意図的なデザインであろう

*2:などと書いてますがTVシリーズはPART3をちょろっと見ただけですごめんなさい