境界線上のアモウ――「境界戦機」2話レビュー&感想

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©2021 SUNRISE BEYOND INC.
新世界へ踏み出す「境界戦機」。2話ではテロリストとして追われるアモウの逃走劇が描かれる。けして精悍とは言い難いアモウの姿にはしかし、彼が失ってはいけないものがある。
 
 

境界戦機 第2話「船出」

オセアニア連合軍の襲撃を振り切ったアモウは、ガイ・ケンブとともに逃亡の日々を送っていた。慣れない毎日にアモウの疲労は溜まっていく。空腹に耐えかねたある日、アモウは山の中で小さな畑を見つけて……。
 
 

1.境界線上のアモウ

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アモウ「そして俺は指名手配……テロリストじゃないのに」
 
友人達を助けるため、ガイと共にケンブに乗りオセアニア軍のアメインと刃を交えたアモウ。そんなことをしでかした以上、当然だが彼の立場は危うい。指名手配されているから公共の場には顔も出せず、食料もこれまでのように買うことはできない。アモウが畑のトマトの盗み食いもやむを得ないとまで考えるように、一般的な倫理や生活圏の中ではアウトローは生きてはいけないのだ。
 

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ケンブを隠してアモウが一人通る隘路はすなわち、一般人の倫理観とアウトローの倫理観の"境界線"である。弱さと強さの境界線として捉えても、必ずしも間違いではないだろう。
 

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アモウ「ごめんなさい、すみません!お腹が空いててほんの出来心で、謝ります、だから警察は!見逃してください、お願いします!」
 
ただ、アモウは少なくとも今のところ特別な才能や強靭な精神力を持った人間ではない。その精神はあくまでその辺りにいる気弱な少年のものでしかなく、故に彼はアウトロー側へ踏み出しきれない。畑の主である老人・ゲンに認められれば平謝りし、畑仕事を手伝えと言われれば素直に従う。良くも悪くも煮え切らない彼はしかし、それ故ゲンから信頼を得ることになる。
 
 

2.中途半端ゆえに

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ゲン「手伝え!そうすれば見なかったことにしてやる」
 
アモウが出会った老人・ゲンは優しい人間だ。アモウを警察に突き出すこともなく、畑仕事を手伝わせた後は家に招き妻に手料理を振る舞わせ、彼が追われていると知れば使っていない船をくれてやるとまで言う。強面とのギャップもあり、その親切さは度が過ぎて――つまり境界線を破っているようにすら思える。
 

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ゲン「こんなご時世だ、いい奴もいれば悪い奴もいる。だがよ、自分の信用した人間まで疑いだしたら終いだ。」
 
しかしゲンに言わせれば、それは気の迷いなどではなかった。彼には彼なりの人の見極め方があり、あくまでそれに従って行動していたに過ぎなかった。境界線を越えているようでその実、ゲンは正確にその際を走っていたのだ。
 
人間一人ひとりが抱えている倫理や信条の境界線は、社会一般のそれといつも一致するとは限らない。ゲンの知人であるトクジが彼を信用するが故に警察官の職務に背いてアモウを見逃すのも、こうした例の一つと言える。役割や責務にただ従えば境界線を破らずに済むわけではなく、時にはむしろ逆らってこそ道を誤らずに済む場合もある。
 

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アモウ「ここにいると、あの人達に迷惑かけるから」
 
ゲンの姿勢に胸打たれたからこそ、アモウは彼の家からこっそりと抜け出す。その非礼に、また許可されているとは言え事実上ゲンの船を盗んでしまったことに胸を痛めながらも、ゲン達夫婦に迷惑をかけまいと別れを告げる。心根まではアウトローになりきれないこの中途半端さこそは、アモウがアモウであるために破ってはいけない境界線なのだろう。
 

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ガシン「残り6機。6秒で終わらせる」
 
前回のレビューでも書いたように、境界線は消したり破ったりするものではない。それをしてしまった時、人は自分でなくなってしまう。しかし同時に、境界線はその人間の限界を示すラインでもある。連携の取れたアジア軍がアモウに見せつけた力の差は、すなわち今のアモウの境界線=限界の提示だ。その包囲網を破った謎のアメインと少年がアモウにも空けるであろう風穴がどんなものか、まずは次回を待ちたい。
 
 

感想

というわけで境界戦機の2話レビューでした。人付き合いが苦手という設定のアモウですが、内向的なのとはまた違うのが感じられる話だったのではと思います。どう魅せていくかはまだ時間がかかりそうな感じですが。
予告を見るに次回はまたキャラが増えるようで、彼らがアモウとどんな関係になっていくのか気になるところです。
 
 

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