霧中の境界――「境界戦機」10話レビュー&感想

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©2021 SUNRISE BEYOND INC.
霧深い世界へ。「境界戦機」10話ではアモウ達は西東北のレジスタンスを助けるべく遠征する。今回彼らが越えるのは、支配圏の境界線だけではない。
 
 

境界戦機 第10話「遠征」

 

 

1.霧の中で消えるもの

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シオン「寒……っ」
 
10話でアモウ達が向かった先は霧の多い場所とされ、劇中でもたびたび霧によって視界が遮られる。見えないとは識別ができないということであり、つまり境界線があやふやになっているということだ。これはけして直接的な視界に留まらない。
 

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ジェルマン「東北にいるわたくし共の取引先でしてね。レジスタンス組織なのですがユーラシア軍に攻められ壊滅の危機に瀕している」
 
例えば今回の救援対象の組織・アラハバキを助けることを求めたのはアモウや八咫烏代表の宇堂ではない。八咫烏に資材や情報を提供するブレンゾン社のジェルマンが同じ取引先だからと頼んだものだが、これではどちらが仲間か境界線は分かったものではない。
 

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ダリア「指揮官室をこのように変えて……」
アレクセイ「クリエイティブなアイディアを生み出すには環境も重要なのだよ」

 

また立ちふさがるロシア貴族の末裔にしてユーラシア軍の少佐を務めるアレクセイにしても、指揮官室と私室が一緒くたになっていたり副官のダリアが幼なじみでもあったりと境界線が曖昧なところがある。ロボットアニメではおなじみの展開だが、指揮官が直接前線に赴くのもこうした境界線の曖昧さの一例だろう。
 

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シオン「鉄塚くん、ずっと様子が変だよね」
アモウ「末永さんと何かあったみたいだけど……きっと、その内話してくれるよ」

 

本部の移動の合間を縫っての救援作戦、私財を投じて人海戦術を仕掛ける指揮官……10話では様々な境界線があやふやになっており、主要キャラの一人であるガシンも同様だ。前回兄貴分との決別を経験した彼は落ち込んでいて、作戦会議と感傷にふける時間の境界線すら曖昧になっている。今回は多くのものが霧に包まれた、極めて不確かな状況に置かれているのだ。
 
 

2.霧中の境界

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アモウ「なあガイ、これ利用できないかな?」
ガイ「ああ、俺もそう考えていたところだ」

 

霧は全てを包みこみ、境界線を怪しくしてしまう。しかしそれは危機と同時にチャンスももたらすものだ。霧の中でなら、人は時にふだん越えられない境界線の向こうにも行ける。
 

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アレクセイ「私が……孤立させられた?」
 
圧倒的な物量で攻めてくるユーラシア軍に対し、アモウ達は情報の偽装で裏をかく。無人機を有人機に見せかけたり、信号を改ざんして敵に位置を誤認させたり……これらは敵に境界線を見誤らせる作戦であり、つまり霧の中の戦いになる。それに対して優秀なパイロットであるアレクセイが数の上では劣勢でも3人相手に圧倒したり、脚部の破損した彼の機体を仕留めないことでむしろ撤退がスムーズに進んだりするのも霧のなせる技と言えるだろう。
 

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ガシン(戦いでも人を救うことができる。これが俺の……やり方だ)

 

作戦を終え、無事逃げ延びたアラハバキのメンバーから握手を求められたガシンは、今回の自分の行動もまた境界線を越える行動の一つだったことを知る。「戦うこと」「人を救うこと」……ユウセイとの決別で分かれてしまったと考えていたこの二つの行動を、ガシンの戦いは繋げてみせていた。
人は時に、相反して見える二つのものを隔てる壁に苦しむが必ずしもそれは越えられないものではない。霧の中で境界線を越えることこそ、今回アモウ達が果たした"遠征"だったのだ。
 
 

感想

というわけで境界戦機の10話レビューでした。うーん、アレクセイが濃いというか浪川大輔らしいというか。次回も出番があるようだけど今後どういう関わり方をするんだろう。
 

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とりあえず予告のミスズの笑顔を楽しみに次回を待ちたいと思います。
 
 

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